撫でて育つもの

画像1 香炉や茶筒・・・。手のひらにのるくらいの小さい金属のもの。ひんやりとしている表面を撫でるといい色に育つという。色が変化していく面白さ。小さい香炉は一番出番があるものだ。茶筒は開化堂のものを使っていて、使うたびに手で撫でることを実践して20年近く経つが、いい具合に鈍い色になった。まだらになってしまっても、それがいい味になっているように思えて、一層愛しくなる。
画像2 経年劣化ではなくて、育っているのだ。ピカピカでない方がいい。知り合いの彫金作家は、わざと金属を腐食させるが、表情が増して実に魅力的になる。雨に打たれたり、暑い日に灼かれたり、そんな繰り返しで魅力を増すものがある。人間も、元気なのに少しの憂いを纏っていたり、日々奮闘している人の中に何かを探すと、ご本人が気づいていないような魅力的なものがみえてくる。ご本人が弱点と思われているようなところが、私には素敵に感じられたりする。やさしく撫でてみたらいいのにな。

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