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丸腰で病院に駆け込んではいけない

もし喉が痛くなったら、あなたはどうしますか?
病院に行きますか?
ハチミツでも舐めて、もう一日様子見しますか?

じぁ痛いのが胃だったら?
とりあえずキャベジンを飲んで様子見ですか?

もちろん人によっては頭が少し痛いだけでも医者にかかる人はいるだろう。でも多くの人は、とりあえず薬箱を開けて、いつ開けたかわからないイソジンのニオイを嗅いでみたり、消費期限の印字が薄れたイマイチ何に効くのかも分かっていない薬を飲んだりして改善を図るだろう。そして3日経っても改善しなければ重たい腰を上げて病院へ行く。

単純に仕事が休めないとか、お金を払って診てもらうまでもないとか、色々な理由があるだろう。ただすぐに病院に行かない根本の理由は「医者も正解を持っていないことが多いから」ではないか。

「2日前から喉が痛くて」と言うと口を開けさせられて「風邪でしょうねぇ〜」「とりあえず抗生物質出すのでちゃんと飲みきってくださいね」等と言われて処方薬をドッサリもらって帰ってくる。2日も飲んだらすっかり良くなって、やっぱり病院なんか行かなくてもよかったのではと思いつつ、残った薬は次は病院に行かなくて済むように、と薬箱へ押し込む。

もちろん日々勉強を怠らず、きちんとヒアリングしてあらゆる可能性を考えた上で「風邪でしょうね」という医者もいる。だが思いの外、その肩書きにあぐらをかいて不勉強な医者も多いのだ。医学は日々進歩しているにも拘らず。

2年前、会社の同期かつ友人が会社を辞めて、社会人入試枠で医学部に進学した。その勇気と決断力についてだけでもたくさん語りたいことはあるのだが、彼女が入試の面接の最後に言われたという言葉が非常に印象的だった。「医者は病気についてのプロと思われがちだけれども、事実として患者の方がその病気については詳しいことはよくある。医者を志す上でそれは覚えておくように。」と言われたそうだ。

その面接の時は彼女も、そんなバカなと思ったようだ。でも実際にその試験に合格し、医学生として勉強し研修を受ける中で、いかにその言葉が事実であったかを思い知ったそうだ。

考えてみれば当然のことではある。いくら医者とはいえ、頭の中がAIなわけでもなく所詮1人の人間だ。専門にしている分野であれば別として、いくら看板を外科だ内科だと分けたところで、駆け込んでくる患者の訴えは千差万別だ。全てに対して即座に明確な答えを出せる方が無理な話だ。

私も育休明け、2年ぶりの会社の健康診断で「甲状腺が腫れているのですぐに病院に行くように」と言われて甲状腺の専門医に駆け込んだことがあった。専門医なんだから大丈夫だろう、と思って特に何も調べず診察を受けた。腫瘍があるのは間違いなく、それが良性か悪性か見極めるために血液検査が必要、と言われ喉元に太い針を刺された。喉に針を刺すなんて1mmも想定していなかったため、かなり衝撃的ではあったが「95%は良性なのでおそらく大丈夫でしょう」と言われて、いくらか安堵して帰路についた。

商店街の抽選でも参加賞のティッシュかラップしか当たったことのない人生だったので、当然95%に該当するものと思って結果を聞きに病院へ再訪した。診察室の扉を開けると、何も聞く前から結果が悪性だと判ってしまうほど暗い表情の先生が待っていた。

その日は結果が悪性腫瘍(=癌)であること、その特徴と今後摘出手術を受ける病院を決める必要があること等を聞いて帰った。甲状腺癌は癌の中でも最もと言っていいくらい穏やかな癌なので、余命何年とか直ちに摘出しないと死ぬような話ではなかった。それでも30年近く病気らしい病気もしたことがなかった私はそこそこにショックを受けていた。

脳内で最悪のパターンを想像するのに忙しい私に代わって、もともとリサーチ癖がありそのスキルも高い夫が甲状腺癌について調べてくれた。ここでは甲状腺癌について詳らかに書かないが、リサーチの結果として内視鏡手術(=喉に傷跡が残らない)で癌を摘出できる病院は都内に2カ所しかない(当時)ことが判明した。

3度目の病院は、一般の検索エンジンで調べられる限りの甲状腺癌についての情報を携えて行ったので、非常に話がスムーズに進み、より詳しいことを聞くことができた。もし何も調べずに行っていたら先生の簡素化した話を理解するのに精一杯で、喉に傷跡の残る手術を受けることになっていたに違いない。
※内視鏡手術にはデメリットもあるので、一概に内視鏡が良いわけではない。

ましてや今回は専門知識が豊富で日々勉強されている先生の病院に当たったから良かったものの(家から最寄りの甲状腺専門医で調べただけなので完全に運が良かった)、名ばかり専門医だったり最新の情報に疎い先生であったら全く違う結果に行き着いていた可能性もある。

間違っても「お医者様は神様!」などと思って何も調べもせずに会ったばかりの医者に全幅の信頼をおいてはいけない。名ばかりドクターでないか、知識豊富な医者だとしても専門から外れてはいないかを見破るためにも、患者側はある程度の知識を持って受診するべきだ。もしその医者が神様の如く専門知識が豊富で勤勉で善良であったとしても、患者側がそれなりに病気について調べてきていれば医者からの説明の解像度も変わってくるだろう。

最後に余談ではあるが、私が意識している医者の選び方を紹介する。

①選べるなら女医を選ぶ
これは以前、勝間和代さんのお話で聞いてなるほどと思ったことである。2018年頃に話題にもなったが、複数の大学の医学部入試で女子の合格が不利になるように採点が操作されていたことは記憶に古くないだろう。そしておそらくこの採点操作は何年も前から続いていると考えると、男性医師よりも女性医師の方がより難関を潜り抜けた優秀である可能性が高いと言える。

また生物学的に男性よりも女性の方がコミュニケーション能力が高いという点からも、女医を選んだ方がメリットは大きい。手術してもらう医師なら腕や実績で選ぶべきだが、こと診察を受ける段階では円滑なコミュニケーションが図れることに重きを置いた方が良い。

②医師家系を避ける
こちらは完全に私の経験にしか基づかないし、例外も多分にあることも承知の上である。それでも医師家系の医者は傲慢な態度を取る人が多い気がする(そうではない医師家系のみなさまごめんなさい)。

もちろん病院を予約するたびに「こちらの先生はご家族もお医者様ですか?」等と聞くことはしない。医師であることを誇りに思っている(=鼻にかけている)医者は得てして、HPに「代々続く医師家系」「医師一族の家庭に生まれ」等と書いてあることが多い。幼少期から医師になるための英才教育を受けてきました、というアピールならいざ知らず「うちはお医者様の血筋が流れているのよ!」という意味合いで書いてあるのだとしたら、診察時にもその姿勢が滲み出ることであろう。

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