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春|散文

文庫本のページが鞄の中で折れていた。

ヨガ教室で、無料配布のチョコレートをもらった。フラクトオリゴ糖、糖として吸収されない糖質でできたチョコレート。なんだかガムみたい。

母に会社を辞める予定だと伝えてみた。目を丸くして「そう」としか言わなかった。母はあまり本音を言わず、基本的にノンバーバルで感情を伝えてくる。どうせなら手先の器用さが遺伝してほしかった。

今読んでいる本の話がややこしくて、定期的に内容を思い出しておかないと理解が滑り抜けてしまいそう。早く読み終えてしまいたいが、構造ゆえそういうわけにもいかない。

春の匂いが運ばれてくる季節になってきた。学生時代、春は私にとって特別で、。一度きりしかないその年その年が唯一のものでかけがえのない季節だった。

今。社会人の春は灰色で暗く、新鮮味がないことに気づいた四年目。サイクルとしてただ巡ってくるだけの季節に、匂いだけが私の青さを思い出させる。


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