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放送大学マイルストーン('23)

はじめに

この記事は、放送大学の(主に情報コースを中心とする)学生さん向けに、私の履修済み科目の感想と主観的評価を共有して、履修計画の参考にしていただくことを目的に作成しました。下記の記事の通り、2019年-2020年の2年間で情報コースの科目を8割方履修したのでそれなりの網羅性があるかと思います。

(2023年2月追記)その後、選科履修生として履修した他コースの科目や大学院科目などを追加して112科目掲載しています。試験難易度については履修時期によって会場試験・在宅ペーパー試験・在宅Web試験が混在しているので参考程度でお願いします。

タイトルは私が現役生の時に通っていた大学の似たような評価システムから拝借しました。

以下の科目は基本的にナンバリングが低い順に並べています。閉講済みの科目も混じっていますが、記録と後継科目の参考のために残しておきます。あくまで全て(上記の記事にある通り、文系出身のSIer勤務エンジニアという立場からの)主観的な評価であることをご理解ください。各項目10段階で評価しています。

基盤科目

110 情報学へのとびら(’16)
Introduction to Informatics ('16)

内容充実度:7 内容難易度:3 試験難易度:6
とびらの数:たくさん

シラバスに「見取り図」とある通り、情報コース(ひいては情報学)の全体像を示してくれるオムニバス講義です。情報コースの方は最初に履修することを推奨します。自分が情報学のどのあたりに関心があり、どのあたりにないのか、そして教授陣の語り口との相性も確認できます(重要)。自分でこれだけのとびらを開けるのは大変なので、先生方と一緒に開けてみしょう。科目の性質上試験は広範囲から出題されるので意外に難しいです。

110 初歩からの数学(’18)
Introduction to Mathematics ('18)

内容充実度:4 内容難易度:3 試験難易度:4
「数学と和解せよ」

おおよそ中高の数学に相当する範囲を丁寧に学ぶ科目です。範囲としての難易度は高くありませんが、随所に「数学的な考え方」についてのコメントが挟まれるので、これまで数学は単に計算して問題を解くだけだと思っていたような方には新しい発見があると思います。微分積分の初歩まで含まれているので、本当に数学から離れ切っていると後半多少つらいかもしれません。試験は基本的に過去問と似たようなパタンの出題なので、しっかり勉強すれば問題ないです。

110 演習初歩からの数学(’20)
Exercise in Introduction to Mathematics('20)

内容充実度:3 内容難易度:2 試験難易度:3
さんすうドリル

初歩からの数学の演習科目です。数学は演習が必須なので合わせて履修して手を動かしまくるのが理解の近道ではないかと思います。隈部先生のやさしさのおかげで小テストもやり直しがきくので、まさしく数学初心者の方にピッタリの科目だと思います。

110 自然科学はじめの一歩(’15) 
Introduction to Natural Sciences ('15)

内容充実度:7 内容難易度:4 試験難易度:5
(やたら広範囲な)はじめの一歩

自然と環境コースの導入科目です。「自然科学とは?」から始まり、地学・生物・化学・物理・数学の教授によるオムニバス講義で、高校以来理科から離れていた方には刺激になります。個人的には第14回の自然科学小史が面白くておすすめです。試験は自然科学の考え方を問うもので、計算させるようなものではありません。

110 運動と健康(’18)
Exercise and Health Sciences ('18)

内容充実度:6 内容難易度:8 試験難易度:7
理論と実践の両輪が大事

コロナで運動不足が極まったのと、ヒューマンインタフェース系の仕事をやるにあたって人間の運動生理学的な内容に関心を持ったので取りました。フワフワした科目名ですが中身はがっつり運動生理学なので結構難しいです。運動能力の遺伝/環境比率の話が面白かったです。後半はトレーニング論的な部分もあります。残念ながら理論を知ったからと言って運動するようになるわけではないと気づきました。。

情報コース 導入科目

210 日常生活のデジタルメディア(’18)
Digital Media in Everyday Life ('18)

内容充実度:3 内容難易度:2 試験難易度:2
現代人テスト

各種デジタルメディアの特性を議論します。普段からデジタルメディアをある程度使っている方からすると既知の内容が多いかと思います。第5回で取り上げられるソーシャルメディアの自己開示理論/自己呈示理論のあたりは面白かったです。試験もある程度常識的に解けるレベルです。

220 計算の科学と手引き(’19)
Introduction to Computer Science ('19)

内容充実度:6 内容難易度:6 試験難易度:6
謎の低平均点

英語の科目名のほうがわかりやすい科目その1。二進法から始まりアルゴリズムや論理演算の初歩を学びます。このあたりに馴染みがないと次から次へと新しい概念が出てくることになるので苦しいかもしれません。アルゴリズムや論理学を扱う個別の科目があるので、そのための足掛かりとなる科目です。試験はなぜか平均点が50点とかなのですが、内容を理解していれば普通に解ける内容です。過去問やっておきましょう。

220 情報ネットワーク(’18)
Information Network ('18)

内容充実度:7 内容難易度:7 レポート難易度:6
めざせTCP/IPマスター

スライドと一緒にビデオ講義が行われる形のオンライン科目です。主にTCP/IPを重点的に学びます。内容的にはIPAのネットワークスペシャリスト試験の試験範囲を相当程度カバーするイメージです。レポートがそれなりに重いですが、指定に従ってきちんと書けば高評価を頂けます。

220 社会統計学入門(’18)
Introduction to Social Statistics ('18) 

内容充実度:7 内容難易度:7 試験難易度:7

スタンダードな社会統計学の科目です。記述統計から回帰分析までで、統計学の入門にはよいと思います。ただ情報コースでコンピュータ上で統計を扱うことを考えた場合、数理統計寄りの統計学('19)のほうがよい気がします。統計検定2級の範囲を一部カバーします。

220 生活環境情報の表現-GIS入門(’20)
Expression of Living Environment Information (Introduction to GIS)('20)

内容充実度:7 内容難易度:6 レポート難易度:7
凝りすぎ注意

QGISという地理情報システムを使って地理空間情報の分析をするオンライン科目です。測地座標系の話から始まり、ベクタデータ・ラスタデータの扱い方や簡単な空間解析手法について学びます。各回でそれなりに手を動かす必要があり、QGISの操作方法に慣れるところから始めると思ったより大変でした(加えて扱うデータによってはQGISが重くなるので、パソコンの性能次第ではつらいかもしれません)。最終レポートは自分でテーマと対象エリアと手法を決めて分析するもので、凝ると大変ですがそこまで高度なことをしなくても評定はもらえます。生活における地理空間情報の活用(’16)や現代人文地理学(’18)と一緒に履修すると良さそうです。

220 Rで学ぶ確率統計(’21)
Introduction to Statistics Using R ('21)

内容充実度:8 内容難易度:8 レポート難易度:6
RStudioがうまく動かない人多数

Rの基本操作から始まり記述統計・確率分布・統計的仮設検定を一通り講義+実装します。内容的にはそこそこ高度ですが、評価は小テスト8割レポート2割で、小テストのやり直しがきくのとレポートが基本的な記述統計に関する出題なので真面目にやれば単位を落とすことはないです。中盤で二項分布から始まる基本的な確率分布の使いどころを取り上げますが、やや駆け足なのもあり初学者にはハードル高めの内容です。あらかじめ身近な統計か社会統計学入門あたりで基本的な考え方を理解しておくのが吉だと思います。RStudioのちょっとしたプログラミングもあるのでその辺にアレルギーがないことも求められます。

220 表計算プログラミングの基礎(’21)-業務効率化をめざして-
Introduction to VBA Programming for Productivity ('21)

内容充実度:7 内容難易度:6 レポート難易度:7
めざせエクセルマスター

VBAの授業です。おそらく情報コースの授業で一番実務に直結する科目です。基本文法から始まりセルの操作やグラフの作成、フォームの利用などベーシックなところは一通り取り上げられているので、簡単なマクロであればこの授業だけで書けるようになると思います。C言語やJavaと違って開発環境の用意が必要ない(Excelは必須)のも初心者にはうれしいところです。成績は小テスト6割レポート4割で、レポートではマクロを作成し、エラーハンドリングやアルゴリズムを工夫すると高得点が狙えます。事務系の方にもおすすめです。

230 情報理論とデジタル表現(’19)
Information Theory and Digital Representation ('19)

内容充実度:8 内容難易度:7 試験難易度:7
ここから始まる情報科学

情報量やエントロピーといった概念と、様々なデータの符号化を学びます。学びが多くおすすめできる科目だと思いました。マルチメディア系の科目を履修する前にここはカバーしておいたほうが良いところだと思います。特に自分は卒業研究で機械学習を扱ったので、ここで基本的な情報理論を勉強できたことは良かったです。試験はそれなりに計算が求められるので、それなりの難易度です(情報量が少ない文章)。

情報コース 専門科目

310 情報セキュリティと情報倫理(’18)
Cyber Security and Ethics ('18)

内容充実度:4 内容難易度:3 試験難易度:4
現代人テストその2

主眼は技術的な話ではなく倫理的な話です。理解しておいたほうがいい内容なのは間違いないですが、通常情報技術を使って生活している方にとってはある程度既知の内容が多いかと思います。

310 アルゴリズムとプログラミング(’20)
Algorithms and Programming ('20)

内容充実度:5 内容難易度:4 試験難易度:5
実装しだすと大変

科目名の通りアルゴリズムについて学びます。科目内で扱われる言語はC言語です。ループや配列操作、ソーティングといった内容なので、基本情報技術者試験程度の理解があればそれほど難しくないかと思います。ただしC言語のソースコードをきっちり追おうとするとそれなりに大変です。試験はC言語が完璧に分かっていなくても疑似コード的な捉え方ができれば解けるように設計されているようです。

310 デジタル情報の処理と認識(’18)
Introduction to Multimedia ('18)

内容充実度:7 内容難易度:7 試験難易度:3
教科書がこの中で一番薄い

英語の科目名のほうがわかりやすい科目その2。文字、音声、画像、映像をコンピュータで扱う仕組みを学びます。自然言語処理・CGと画像認識の基礎・映像コンテンツの制作技術(映像コンテンツ~はコンピュータの内部処理をほとんど扱わないので前後関係にはない気もしますが)につながる科目で、マルチメディア情報処理の概観が掴めるのでお勧めです。試験は内容に比べて簡単です。

310 情報社会のユニバーサルデザイン(’19)
Universal Design in the Information Society ('19)

内容充実度:7 内容難易度:5 試験難易度:7
Be inclusive.

アクセシビリティーやインクルーシブデザインの観点から、人にやさしい情報デザインとは何か?を学びます。世の中にあふれる(例えば駅や公共機関の)情報をどのように提供するのが妥当か?と考えられるようになれる良い科目です。昨今流行しているデザイン思考の一側面としても知っておいて損はないと思います。試験は部分的に法律の細かい知識が問われるので注意が必要です。

310 コンピュータとソフトウェア(’18)
How Computer Hardware and Software Work ('18)

内容充実度:7 内容難易度:7 試験難易度:7
情報コース中ボス的ポジション

まずこれも英語の科目名のほうが正確で(放送大学あるあるなのか?)、ハードウェア的な側面も多少含まれています。コンピュータの諸要素について、その仕組みと意味を学びます。コンピュータと人間の接点(ユーザーインタフェース特化)、コンピュータの動作と管理(OS特化)、データベース、コンピュータ通信概論などに接続する中盤の重要な科目といえます。ここを押さえておくことでこれらの科目がスムーズに頭に入ると思います。試験はスタンダードにきちんと勉強してきたかどうかが問われます。

310 映像コンテンツの制作技術(’20)
Creative Technologies for Digital Contents ('20)

内容充実度:3 内容難易度:3 試験難易度:2
目指せYouTuber

コンピュータの内部的な処理というよりはカメラの仕組みや撮影技法、プロダクションといった側面に焦点が当てられています。映画を見る目が少し変わるかもしれません。試験は非常に基本的なことしか問われません。

310 博物館情報・メディア論(’18)
Museum Information and Media ('18)

内容充実度:5 内容難易度:5 試験難易度:5
おサルと魚の映像で癒されよう。

学芸員資格向けのオムニバス科目ですが、デジタルアーカイブやコミュニケーション学の要素もあり、情報コースの方にも刺さる方はいるのではないかと思います。後半では様々なタイプのミュージアムが紹介され、数式とプログラミングで傷んだ頭を癒す効果があります(?)。自分はミュージアムめぐりが趣味なこともあり結構楽しく聞いていました。

310 C言語基礎演習(’20)
Basic Practice in C ('20)

内容充実度:4 内容難易度:4 レポート難易度:4
C言語の真髄は遠い

C言語の基礎科目ですが、C言語の基礎というよりプログラミングの基礎的な意味合いが強く、よく言われるポインタがどうとかアドレスがどうとかメモリがどうとかいった領域にはほぼ踏み込みません。なんらかプログラミング経験のある方にとっては平易な内容だと思います。逆に全くプログラミングの経験がない方にとっては入り口として良いかもしれません。最終レポートは要件に合うプログラムを作成するものです。

310 記号論理学(’14)
Symbolic Logic ('14)

内容充実度:6 内容難易度:8 試験難易度:8
人を選ぶ度:10

主に論理記号の使い方、タブローによる命題の妥当性のチェックについて扱う科目です。ややマニアックな内容なので人を選びそうです(自分は仕事のお客さんがなぜか論理記号に習熟しており要件調整が劇的に楽になるという奇跡が起きたのですが、ものすごくレアケースだと思います)。日常使う日本語がいかに論理的あいまいさにまみれているかがよく理解できます。講師が全員集合する最終回がおじさん座談会みたいになってて面白いです(失礼)。

310 感性工学入門(’16)
Sensibility Engineering ('16)

内容充実度:7 内容難易度:5 レポート難易度:2
インタビューの内容を本にしてほしい度:10

デザイン・心理学・アートなどの複合領域である感性工学を学びます。成績は小テスト8割レポート2割ですが、レポートを提出するためにディスカッションボードに3回以上投稿する必要があります。ユーザインターフェースやユーザエクスペリエンスとの関わりが深いので、コンピュータと人間の接点(’18)と一緒に履修するとよいと思います。成績評価には関係ありませんが各回のテーマごとに長尺のインタビュー映像がついており、アーティストや心理学者といったゲストの視点から感性を考えることができます。感性という視点から世界を切る、といった趣なので、「色と形を探求する」「音を追求する」のような総合科目に近い印象です。

310 Javaプログラミングの基礎(’16)
Introduction to Java Programming ('16)

内容充実度:6 内容難易度:6 レポート難易度:5
オブジェクト指向はさわりだけ

GUIや文字列処理、ファイル入出力などを含む、C言語基礎演習より微妙に高度な内容を扱います。Javaといえばのオブジェクト指向は最終回にちょろっと出てくるだけです。レポートはルールベースの対話プログラムを作成しますが、予め基本的な処理は作成済みのものに追記する形なので(凝りすぎなければ)難易度は高くありません。私は仕事でJavaを使っていましたがGUI部分は初見の内容が多く参考になりました(JavaでUI作ることはそうないとは思いますが)。これに限らずですが同じ学期に別のプログラミング系科目を重複履修するとぐちゃぐちゃになるので初心者にはおすすめしません。

310 情報デザイン(’21)
Information Design ('21)

内容充実度:8 内容難易度:5 試験難易度:5
2021年度オシャレ科目大賞

2021年度新規開設科目で、情報アーキテクチャ(システムアーキテクチャではなく情報自体の構造化の方)のデザインに焦点を当てた科目です。大きく3分割されており、最初の「基礎」で定義と歴史的展開を抑え、「各論」でグラフィックデザイン・UXデザイン・インタラクションデザインといった領域を扱い、「展開」でより実践的なトピックを扱うという、これ自体よくできたデザインの科目になっています。デザイナーは言わずもがな、ちょっとした情報の見え方が変わるので面白い科目だと思います。おすすめです。放送授業の映像もモダンでいい感じです。

320 自然言語処理(’19)
Natural Language Processing ('19)

内容充実度:9 内容難易度:8 試験難易度:7
おすすめ科目ナンバーワン

情報コースおすすめ科目ナンバーワンです。印刷教材は自然言語処理の体系的なテキストとして放送大学外でも一定の評価を得ている書籍です。文字コードからニューラルネットワーク、機械翻訳の仕組みまで、歴史をなぞりながら学べます。私は最終的に卒業研究を自然言語処理で執筆したのですが、この科目をしっかり勉強したおかげで頭が整理できた状態で臨めました。ぜひ履修していただきたいです。

320 コンピュータと人間の接点(’18)
Human-Computer Interaction ('18)

内容充実度:8 内容難易度:6 試験難易度:7
おすすめ科目ナンバーツー

ユーザインターフェースを扱います。おすすめできます。人間の生理的・認知的な特性から始まり、デザイン思考に準拠したシステム開発のプロセスや、VR・AR等の先進的なインターフェースについても扱います。後半、東大情報学環でユーザインタフェースを研究している暦本研の研究成果が紹介されますが、発想が斬新でユーザインタフェースの概念を良い意味で壊してきます。試験は比較的難しい印象でした(個々のシステムについて問われる部分があるため)。

320 データの分析と知識発見(’20)
Introduction to Data Analysis ('20) 

内容充実度:7 内容難易度:7 試験難易度:7
またの名をR言語入門

R言語によるデータ分析を扱います。Rの基本から多次元尺度法や主成分分析、アソシエーション分析などがスコープです。線形代数や基礎的な統計学を理解していないとだんだん置いてけぼりになる感じがします。先行して入門線型代数や統計学を履修したほうがいいと思います。ただ試験は持ち込みOKなので暗記する必要はありません。

320 コンピュータの動作と管理(’17)
Computer Operation and Management ('17)

内容充実度:7 内容難易度:7 試験難易度:7
オペレーティングシステム論

放送大学の科目で最もハードウェア寄りの内容です。主にOSを扱います。個人的には普段の仕事(アプリケーションエンジニア)では隠蔽されていてほぼ触れることがない場所なので、大いに勉強になりました。レジスタやプロセッサの動作に加え、組み込み系のリアルタイムOSも出てきます。

320 データ構造とプログラミング(’18)
Data Structures and Programming ('18)

内容充実度:6 内容難易度:5 試験難易度:5

「アルゴリズムとプログラミング」と1/3くらい重複しています。スタックやキュー、バイナリサーチツリーといったデータ構造とそのC言語による実装方法を学びます。例によってC言語のコードを完璧に理解しようとするとなかなか大変ですが、試験はそこまで理解していなくても比較的容易に解けるようになっています。「アルゴリズムとプログラミング」と同時かその後に履修するとよいかと思います。

320 CGと画像合成の基礎(’16)
Fundamentals of Computer Graphics and Image Synthesis ('16)

内容充実度:7 内容難易度:6 試験難易度:6
なぜラジオにした??

シラバスに「CGの作成および描画、画像合成の処理に関する基本原理を理解すること」とある通り、単なる編集技術ではなくその背後にある数学的な部分も問われます。結構難易度は高い印象でした。可能であれば入門線型代数や初歩からの数学を履修してからのほうが良いかもしれません。画像処理を扱う科目をなぜラジオ科目にしてしまったのか理解に苦しみます。

320 ユーザ調査法(’20)
User Survey and Research Methods ('20)

内容充実度:8 内容難易度:7 試験難易度:6
おすすめ科目ナンバースリー

昨今流行りのデザイン思考を意識した科目で、情報機器のユーザ調査の方法論を学びます。特に企画や設計といった情報システム開発の上流工程に関わる方にはお勧めできる科目です。生理心理学的な方法やアイトラッキングは普段使うことはないので面白かったです。自分はここから派生して心理学的な科目も履修するようになりました。

320 Webのしくみと応用(’19)
Technology and Application of the Web ('19)

内容充実度:7 内容難易度:6 試験難易度:6
IT部門の方はぜひ

Webサービスに関わる技術をまとめて取り上げた科目です。HTMLとHTTPを中心に、認証技術やセキュリティ、仮想化なども取り上げられます。Webシステム開発経験があれば既知の内容が多いですが、後半ではやや発展的にセマンティックWebやレスポンシブWebデザインなども議論するので、ある程度Webのしくみを理解されている方でも新しい発見があるかもしれません。

320 データベース(’17)
Introduction to Databases ('17)

内容充実度:7 内容難易度:6 試験難易度:6
DBSP対策にどうぞ

読んで字のごとくデータベースです。おおよそIPAのデータベーススペシャリストの出題範囲をカバーしています。関係代数の演算をきっちり扱うあたり、大学の講義ならではだなと思いました。リレーショナルデータベースが大半ですが、発展技術としてグラフデータベースや分散データベースも少し取り上げられます。

320 通信概論(’14)
Introduction to Telecommunications ('14)

内容充実度:8 内容難易度:8 試験難易度:8
通信(物理)

通信路の理論や信号の表現方法、変調などについて学びます。情報ネットワークに比べて低レイヤ(物理寄り)の内容です。性質上それなりに高度な数式の出現が避けられないので、最低でも三角関数程度は理解したうえでないと厳しいと思います(欲を言えば入門微分積分でフーリエ変換を勉強してからのほうがいい)。試験は持ち込み可でも70点台なので難易度はお察しです。数式まみれなのでラジオ科目なのがとてもつらかったです。

320 コンピュータ通信概論(’20)
Introduction to Computer Telecommunication('20)

内容充実度:8 内容難易度:8 試験難易度:8
続・通信(物理)

通信概論(’14)の後継科目で、内容と前提として数学が必要になる点も共通です。改定で5GとIoTについて詳しく扱うようになりました。無線通信や海底ケーブル通信の仕組みを扱うので刺さる人には刺さると思います(自分は刺さりました)。私は改定前の通信概論('14)を履修済みでしたが、理解が追い付かなかったのでこちらを再履修しました。試験はかなり細かいことを問われます。持ち込み可でも結構悩むレベルです。これでラジオ科目じゃなければ・・・

320 身近なネットワークサービス(’20)
Networking Services in Our Life ('20)

内容充実度:6 内容難易度:6 試験難易度:6
プロトコル名が並びすぎてちょっとつらい

情報ネットワーク(’18)と重複するプロトコルスタックの議論に加え、上位レイヤの各種プロトコルとその応用について主に扱い、APIを利用したネットワークサービスのアーキテクチャなどにも少し触れる内容です。かなりきっちりした内容で、すべて理解すればネットワークエンジニア並みの知識が身につきそうな一方で、個別のプロトコルに関する説明の羅列のようになってしまっている部分が散見され、なかなか全体感を掴むのが難しい構成でもあります(内容の性質上仕方ない部分もあるかと思いますが)。

320 メディア論(’18)
Media Studies ('18)

内容充実度:7 内容難易度:6 試験難易度:7

「パースペクティブとしてのメディア論」をキーワードに、メディアを時間軸で追いかける前半部分と空間軸で俯瞰する(主に東アジアと観光の視点ですが)後半部分に分かれます。メディアという捉えどころのない概念をどうすればつかみ取れるかという点に関心が持てれば面白いと思います。技術社会論的な議論もあり、エンジニア職の方にも学びのある内容です。

320 数理最適化法演習(’20)
Exercises in Mathematical Optimization ('20)

内容充実度:5 内容難易度:7 レポート難易度:6

問題解決の数理(’21)の演習科目ですが、内容的には前半1/3くらいのカバーで、線型最適化問題としてExcelソルバーで解ける範囲のみです。問題解決の数理(’21)は後半の状態空間モデルやら待ち行列理論やらが本丸な感もあり、先にこちらの演習科目を履修して準備運動してから問題解決の数理(’21)を履修する順番の方が頭に入りやすいと思います。演習の内容は何も考えないと画面の真似をしてExcelをポチポチするだけで終わってしまうので、何をやっているのかを理解する努力をすることが必要です。

320 統計学(’19)
Statistics ('19)

内容充実度:7 内容難易度:7 試験難易度:6

放送大学の統計系科目の中で一番数理統計学に近く、確率分布の占める割合が大きいです。「データの分析と知識発見」の前に履修するとよいのではないかと思います。統計検定2級の出題範囲とほぼ重複しているので、試験対策的にもお勧めです。試験は持ち込み可なので難しくないです。

320 経営情報学入門(’19)
Introduction to Management Information Systems Study ('19)

内容充実度:7 内容難易度:7 試験難易度:8

怪しげな科目名ですが、企業や組織における情報の扱い・扱われ方に主眼を置いた科目であり、企業勤めの方であれば関心が持てるのではないかと思います。私は第6回の組織的知識創造理論にハマってしまい、卒業研究にも登場させました。試験はかなりちゃんと作問されており、難易度は高めです。

320 解析入門(’18)
Introduction to Real and Complex Analysis ('18)

内容充実度:8 内容難易度:9 試験難易度:9
複素積分以降がしんどい

2変数関数と複素関数の微積分を扱います。内容が内容だけに難易度が高めでかなり苦しめられました。ただし過去問や通信指導の解説が非常に丁寧なため、問題が解けなくてどうしようもなくなるということはあまりありませんでした。複素関数は(初学者からすると)なかなかハードルが高く、それなりの覚悟が必要です。自分は卒業研究で機械学習を扱う関係上、この辺の扱いは避けられないと考え履修しました。

320 著作権法(’18)
Copyright Law ('18)

内容充実度:6 内容難易度:7 試験難易度:8

法律科目ゆえの細かさに苦しめられました。情報資産の知的財産的な扱いに関心があって履修しましたが、体系的に理解するぞ!という気持ちがないと厳しいかもしれません。

330 コンピュータビジョン(’22)-画像処理による情報抽出の技法-
Computer Vision ('22): Techniques of Information Extraction by Image Processing

内容充実度:8 内容難易度:9 試験難易度:5
ガチなやつ

画像処理の科目ですが、前半がカメラ幾何学・形状復元・自己位置推定等の幾何学的なアプローチ、後半が畳み込みニューラルネットワークを中心とする深層学習手法で毛色がだいぶ異なります。前提として線形代数と微分積分とプログラミングが要求されていることから察しが付く通り内容のレベルはだいぶ高く、その辺の工学部で扱う内容と遜色ないと思います(理解できなかった箇所の参考にしようといろいろググったら工学部の授業PDFがたくさんでてきました)。特にPythonと線形代数はある程度自由に操作できるようになっていないとついてけない可能性が高いです。小テストのやり直しがきくのと、提出する演習課題がある程度お膳立てされたものなので単位自体はどうにかなると思います。

330 問題解決の数理(’17) 
Mathematical Approaches to Problem Solving ('17)

内容充実度:8 内容難易度:8 試験難易度:8
数理最適化って言って

微妙に分かりづらい科目名ですが、数理最適化法です。シンプレックス法・ゲーム理論・状態空間モデル・組み合わせ最適化問題などを扱います。それなりの数学を使いますが、実際に問題を解く過程で微分積分をガンガン使ったりすることはないので、そこまで高難易度というわけではないです。また、担当の大西先生が追加の資料を自身のWebサイト上に用意してくれているので、その辺りも参考にできます。試験はパタン化されているのでしっかり対策すれば解答可能です。

330 数値の処理と数値解析(’14)
Numerical Computing and Analysis ('14)

内容充実度:7 内容難易度:10 試験難易度:9
情報コースのラスボス。なぜラジオにした???

ナンバリングで専門科目の頂点にいるだけあってゲキムズ科目です。覚悟が必要です。線型代数と微分積分も必須です。後半は微分方程式も出てきます。そもそもある数値計算をコンピュータで計算可能にするためにはこういう工夫をするとよい、という議論をする科目なので、前提となる数値計算(これが線型代数や微分積分)の意味が分かっていないと理解することは不可能です。自分はすべて理解できたとは言えない状態で単位認定試験を迎えることになってしまい悔いが残っています。ラジオ科目で数式が追い辛いのが難易度に拍車をかけています。

情報コース 総合科目

410 色と形を探究する(’17)
Exploring Colors and Forms ('17)

内容充実度:4 内容難易度:5 試験難易度:8
オムニバス科目の悪いところが出てる

「色と形」と他分野から検討するオムニバス形式の科目です。性質上興味が持てるパートとそうでないパートがはっきり分かれやすい科目かと思います(それ込みで多面的に見ることに意味がある科目だとは思いますが)。特に途中の比較文化論パート(グァテマラの織物)は事例紹介以上の目的をつかむことが難しいです。試験も重箱の隅をつつきまくってくるので無用に難易度が上がっています。

410 進化する情報社会(’15)
Evolving ICT and Sustainable Society ('15)

内容充実度:4 内容難易度:4 試験難易度:2

情報技術社会論といった趣で、経済成長やプラットフォーム、持続可能性といった側面から情報技術を論じる科目です。個人的には比較的既知の内容が多かったですが、この辺の議論を扱っている科目は意外と他にないので、関心があれば良いかもしれません。

410 多様なキャリアを考える(’15)
Considering the Diversified Career of Occupation and Life ('15)

内容充実度:4 内容難易度:2 試験難易度:2

広い意味でのキャリアやライフコースについて学びます。社会人歴が浅かったのでせっかくだから少し考えようかと思って履修しました。産業・組織心理学(’20)と多少重複する内容です。個人的には会社勤めしながら放送大学に入学する選択をした時点で割とキャリア意識高い系だと思っています。

420 技術マネジメントの法システム(’14)
Law Systems of Technology Management ('14)

内容充実度:4 内容難易度:5 試験難易度:5

労働法・情報法・環境法の三本柱で、エンジニアをやっていて関係しそうな法律はおおむね取り上げられています。逆に言うとかなり取り上げられている内容の幅が広いので、すべてを理解しようとすると相応に大変な科目かと思います。試験は持ち込み可で、じっくり解けばなんとかなるレベルでした。

420 AIシステムと人・社会との関係(’20)
Relationships between AI Systems and Human Society('20)

内容充実度:8 内容難易度:7 試験難易度:6
非技術者向けAI科目

AIの歴史と現状を、技術と社会の両面から理解しようという科目です。昨今バズワード化しているAIの本質は何か?という議論ができるようになるかもしれません。過去3回のAIブームの際に何ができて何ができなかったのか?という議論はそれなりに面白いです。進歩があまりにも早すぎる分野なので、閉講するころには陳腐化している予感がしなくもないですが、とっかかりとしては良い科目だと思います。G検定の対策にもなります。

情報コース 卒業研究

卒業研究(情報)
Individual Research(Informatics)

大変ですが、自分でテーマを決めて自分で完成させる卒業研究は達成感も格別です。全科履修生の方、ぜひ卒研書きましょう。AI(自然言語処理)で卒研書いて論文出すまでの軌跡を別途まとめています。

自然と環境コース科目

210 初歩からの物理(’16)
An Introduction to Physics ('16)

内容充実度:7 内容難易度:8 試験難易度:8
初歩で終わるとは言ってない

物理系の入門科目です。物理に忌避感を抱いている人に向けたリカレント教育的な立ち位置のようで、映像授業は割とホンワカした感じで進んでいきます。とはいえ45分×15回の講義で古典力学から熱力学、電磁気学、量子力学の初歩まで詰め込んだ内容なので割と目まぐるしく、自習は必須だと思います。試験は数式を問うタイプではなく概念の正しさを問うてくるタイプですが、微妙な聞き方をしてくることもありちゃんと理解していないと苦しいです。なぜか初歩からシリーズの中でこれだけ放送大学エキスパートの認定対象から外れており、後述の「物理の世界(’17)」からが本当の物理だ・・・!という意志を感じます。

210 初歩からの化学(’18)
Introduction to Chemistry ('18)

内容充実度:6 内容難易度:7 試験難易度:7
「大学化学の」初歩から

化学系の入門科目です。とはいえ原子軌道やら混成軌道やらから始まるので、高校化学のドーナツっぽい図しか知らない人(私など)にとっては結構ハードルが高い内容でした。初歩からの物理(’16)とセットで履修すると、同じ概念が微妙に違う捉え方で説明されているところがあり面白かったです。

210 初歩からの生物学(’18)
Introduction to Biology ('18)

内容充実度:5 内容難易度:3 試験難易度:3
ちゃんと初歩から始まって初歩で終わる

「放送大学の初歩から~シリーズは難しい」という通説があるようですが、生物学に限っては正しくイメージする通りの導入科目で、内容的に難しいところはありませんでした。(ワクチンで話題の)RNAの働きなど復習できたのはよかったです。生物学的には~という文言で全然生物学的に正しくないことを言っている人が世の中にたくさんいることが分かりました。

220 初歩からの宇宙の科学(’17)
Introduction to Astronomy ('17)

内容充実度:7 内容難易度:5 試験難易度:7
宇宙科学の初歩がどの辺までなのかわからない

子供のころ天体観測が好きだったのを思い出して履修してみました。個々の内容もさることながら、はるか彼方にある星たちについてどうすれば知ることができるのか?という様々な観測のアイデアが興味深かったです。宇宙科学を体系的に学ぶ機会というのはあまりないかと思いますが、日々夜空に見えるものに対する解像度が上がり、生涯学習として正しく人生が豊かになる感じがしてよかったです。夜空を見上げる機会が増えました。

220 物理の世界(’17)
The World of Physics ('17)

内容充実度:8 内容難易度:8 試験難易度:8
微分方程式が解けないと詰む

初歩からの物理(’16)と力と運動の物理(’19)、場と時間空間の物理(’20)、量子物理学(’21)をつなぐ中級科目です。扱う分野としては初歩からの物理(’16)と重複していますが、こちらは数式ベースでしっかり「物理学」するイメージです。物理なので当然と言えば当然ですが普通に微分積分(特に微分方程式)がガシガシ出てくるので、その辺の前知識なしにうっかり履修するとひどいことになる可能性が高いです。

220 生物環境の科学(’16)
Environmental Ecology ('16)

内容充実度:6 内容難易度:5 試験難易度:6

「環境」という切り口から生物を考える科目です。生態系やバイオーム、植景観生態学、人間による環境改変といったテーマを扱います。シンプルに環境と生物の関わりが分析されていて面白いのですが、私は人間社会のメタファーとして見ていました。会社組織や社会の中の人間の行動もその辺の生き物と大して変わらないな、という悟りを得ることができます(人によります)。

220 入門線型代数(’19)
Introduction to Linear Algebra ('19)

内容充実度:7 内容難易度:7 試験難易度:7
実質必修科目その①

ここまでに何回か出てきましたが、情報数理系の科目を履修するならこれは必須です。行列式から基底変換、固有値までを扱います。特に機械学習に触れる可能性があるのであれば確実に必須です。履修したほうがいいです。試験も過去問をきっちりやれば難しくありません。

220 入門微分積分(’16)
An Introduction to Calculus ('16)

内容充実度:7 内容難易度:8 試験難易度:9
実質必修科目その②

線型代数と同じく情報系をやるならこれも事実上必須です。こちらはかなりやりごたえがありますが、数理系の科目の理解度が天と地ほど違うので履修をお勧めします。極限からスタートして広義積分・級数まで扱います。導入科目のわりに試験が平然と殺しにかかってくるので油断すると普通に落単します。

220 演習微分積分(’19)
Problems and Exercises in Calculus ('19)

内容充実度:6 内容難易度:7 試験難易度:7
パワー!!

入門微分積分に対応する演習科目です。問題を解く→採点兼解説→問題を解く→・・・→小テストの流れをひたすらループするパワー系科目です。物量が多く、高校時代の夏休みの宿題をやってる気分になれます。最終レポートは理論を整理するものです。石崎先生の見た目から(勝手に)想像するよりだいぶ辛口採点です。

310 現代を生きるための化学(’18)
Chemistry for Living in Modern Society ('18)

内容充実度:6 内容難易度:7 試験難易度:8

初歩からの化学と並ぶ化学の基本科目ですが、こちらはやや社会目線で環境問題・資源・創薬といった目線での議論がなされ、とっつきやすい印象です。両方取ると理解が深まるのではないかと思います。全体としてそんなに難しい科目ではないのですがところどころ割と高度な内容があり(ポテンシャルエネルギー曲面とか結晶構造解析の原理とか・・・)、完璧に理解しようと思うと思ったより苦戦しそうです。試験はある程度ちゃんと理解していないと解けない作りです。

310 はじめての気象学(’21)
Introduction to Meteorology ('21)

内容充実度:7 内容難易度:8 試験難易度:7
結局物理と化学

某朝ドラの影響で履修しました。シラバスにもありますが理論的な説明が多めなので基本的な物理・化学の知識がないと苦しみそうです。時間・空間ともにスケールの大きな話で、仕事の苦しみを忘れられるデトックス効果があります(人によります)。「雨が降る」「風が吹く」といった身近な現象がどのような作用機序によって起こっているのかわかり、面白い科目だと思います(「冷たい雨」と「暖かい雨」があることを知っていますか?)。

320 線型代数学(’17)
Linear Algebra ('17)

内容充実度:7 内容難易度:9 試験難易度:8

「入門線型代数」の続きです。内積外積からスタートして三角化や標準形、二次形式を扱います。機械学習をちゃんとやるのであればやっておいたほうがいい範囲だと思います。試験は隈部先生のやさしさを感じられます。

320 微分方程式(’17)
Differential Equations ('17)

内容充実度:?? 内容難易度:10 試験難易度:10
数学系のラスボス

入門線形代数→解析入門と進んできた先に待ち構えています。「数値の処理と数値解析」でも少し出てくる微分方程式の解法を扱います。難しいです。覚悟をたくさん持ってきましょう。残念ながら私はすべてを理解することはできませんでした。

330 非ユークリッド幾何と時空(’15)
Non-Euclidean Geometry and Spacetime ('15)

内容充実度:?? 内容難易度:10 試験難易度:8
数学系の裏ボス

突然の非ユークリッド幾何学です。最近の機械学習には双曲空間上で動作するものがあり、少しでも非ユークリッド幾何の世界を理解しようと思って履修しました。内容的にはユークリッド幾何学から始まり、双曲三角法や球面三角法を経てミンコフスキー空間に至ります。難易度の割にテキストがかなり薄く、行間を読むのが大変でした(放送授業は丁寧です)。「世界を知った」だけで終わってしまった感覚があり、いつかリベンジしたいです。試験は講義内容と直接はあまり関係ない出題の時があるようです。

330 動物の科学(’15)
Zoological Science ('15)

内容充実度:6 内容難易度:7 試験難易度:7

動物を対象とした生物学を一通り扱います(そのまんまですが)。生理心理学や比較認知科学を履修している中で、高校時代に学んだ生物の内容がいつの間にか古くなっていることが結構あることに気づき履修しました。情報学で出てくる概念でもちょくちょく生物の生態を参考にしたようなアルゴリズムやアーキテクチャがあるので、復習できてよかったと思います。試験は330だけあって細かいことを聞かれますが、会場試験の時代とは違って在宅試験であれば全部暗記している必要はないのでどうにかなります。

420 暮らしに役立つバイオサイエンス(’21)
Living with Bioscience ('21)

内容充実度:5 内容難易度:5 試験難易度:7

バイオサイエンスと言っていますが微生物全振りで「生活微生物学」という感じの内容です。食品産業や微生物工業の観点から微生物の働きと活用について学びます。テキストが薄いのと試験平均点が高いので気を抜きがちですが、基本的な生物学と化学の知識がないと内容を理解するのは難しいと思います。醤油と味噌と日本酒に詳しくなれます。

心理と教育コース科目

220 心理学概論(’18)
Introduction to Psychology ('18)

内容充実度:5 内容難易度:4 試験難易度:4
ここからはじめる心理学

放送大学随一の人気科目です(心理コースの学生が多く、だいたいここから履修するため)。専門科目として開講されている心理学の各領域をオムニバス的にさらいます。個人的には既知の内容が多かったですが、心理学の対象領域の大枠を把握する分には有益な内容だと思います。試験は難しくないです。

320 交通心理学(’17)
Traffic Psychology ('17)

内容充実度:6 内容難易度:3 試験難易度:4
交通といいつつデザイン要素強め

交通心理学と銘打たれると何か心理学の特殊な領域のような感じがしてしまいますが、通底しているのは注意の理論や、リスクテイキング、エラー理論で、知覚心理学だったりデザイン論で扱われるようなテーマです。黄信号のジレンマや各セグメントのドライバーの認知特性など日常の交通安全に役立ちそうな内容も含まれています。試験は半分くらい常識で解ける内容です。

320 産業・組織心理学(’20)
Industrial and Organizational Psychology ('20)

内容充実度:7 内容難易度:5 試験難易度:6

主に組織文化やコミュニケーション、モチベーションなどについて学びます。上司・部下に受講してほしい科目ナンバーワン(私調べ)です。特にモチベーション理論やコンフリクトマネジメントは会社ですぐ役立つ内容で、受講してよかったです。中小企業診断士の出題範囲と一部被っているので、試験対策にもなりえそうです。

320 比較認知科学(’17)
Comparative Cognitive Science ('17)

内容充実度:7 内容難易度:8 試験難易度:9
動物から見る世界

単位認定試験の平均点が55点という心理と教育コースとは思えない数値を叩き出したことで有名な(私調べ)科目です。動物の認知と学習について学びます。認知や学習の方法を細分化した上で、どのような動物がどんな認知的な特性があるのかを知ることができます。「社会的知性」がキーワードの一つです。試験は55点も納得の辛口難易度でした。

320 心理統計法(’17)
Statistics for Psychology ('17)

内容充実度:8 内容難易度:8 試験難易度:6
という名のベイズ統計入門

半分タイトル詐欺みたいな感じですが実態としては頻度主義統計ではなくベイズ統計に全振りしたベイズ統計入門です。イデオロギー的なほどにベイズを推してくる豊田先生の言動は一見の価値ありです。15回終わったころにはベイズ統計信者になっているに違いありません。閉講が残念で仕方ありません。試験は40問分のマークシートを全部使うストロングスタイルで、いろんな意味で伝説的でした。

320 心理学研究法(’20)
Psychological Research Methods ('20)

内容充実度:6 内容難易度:6 試験難易度:5

実験法・観察法・面接法・検査法など心理学で使われる研究法を比較しつつ学ぶ科目です。主に「データをどう集めるか」が論点で、「集めたデータをどう処理するか」は心理統計法でカバーしています。ユーザ調査法と若干重複していますが、こちらは心理学ということもあり面接法や検査法に重きを置いている印象です。エビデンスレベルの強弱に関する議論もあったりと、必ずしも心理学ど真ん中の人でなくとも参考になる部分はありました。

320 錯覚の科学(’20)
The Science of Illusion ('20)

内容充実度:8 内容難易度:6 試験難易度:5
錯覚は目の錯覚だけじゃない

いわゆる「目の錯覚」だけでなく、認知的な錯覚も取り上げているのがポイントです。システムエンジニアとしてはUIUXデザインの文脈で非常に参考になる内容でした。情報コース科目ではありませんが、面白い科目なのでぜひ履修していただきたいです。試験は過去問から出がちなので対策すれば難しくありません。

320 知覚・認知心理学(’19)
Psychology of Perception and Cognition ('19)

内容充実度:8 内容難易度:8 試験難易度:8
UIUXデザインに効く科目

認知と感覚の仕組みを探る科目です。記憶や注意、意思決定の方策決定などが対象です。コンピュータによる情報処理を学ぶ情報コースの学生にとって、我々の身体が持つ情報処理機構の仕組みを理解しておくことは大いに意味があることだと思います。実際にディープラーニングや信号処理の仕組みには、この科目で扱うような人間の仕組みからのメタファーが多数取り入れられています。試験は細かいことを問われて難しめです。

320 生理心理学(’18)
Physiological Psychology ('18)

内容充実度:7 内容難易度:8 試験難易度:6

神経心理学や脳科学に近い科目です。情報コースと直接的には関係ないですが、コンピュータの情報処理の多くがこの科目で扱うような生体の機構と類似していることを考えると、余裕があれば履修してみると新しい発見があると思います。試験は記述式ですが持ち込み可です。

320 学習・言語心理学(’21)
Psychology of Learning and Language ('21)

内容充実度:7 内容難易度:7 試験難易度:8
文章が人選びそう

学習による行動変化、その特殊パタンとしての人間の言語習得について、学問上の位置づけの明確化と機序の理解を目指す科目です。敢えて「学問上の位置づけの明確化」と書いたのはここをかなり重視した構成になっているためで、前半1/3かけて心理学からの視点・言語学からの視点・生理学からの視点から対象を見つめなおすというやや特殊な構成になっています。個人的にはそれぞれの領域を少しずつかじったことがあったのでフムフムと読んでいけましたが、人によっては本題に入る前に脱落しそうです。

社会と産業コース科目

210 技術経営の考え方(’17)
Management of Technology and Innovation ('17)

内容充実度:6 内容難易度:6 試験難易度:6

専門知識の活用やイノベーションに関わる科目で、特に企業勤めのIT技術者にとってはあまり意識することのない経営的なものの見方を学べて良い機会だったと思います。会社や社会のイノベーションシステムがどのように動いているのかを知っているのと知らないのでは、技術者個人のものの考え方に大きな差が出てきます。試験は平均的な難易度でした。エンジニアの方には余裕があればおすすめです。

210 新しい時代の技術者倫理(’15)
Ethics for the Engineers of the 21st Century ('15)

内容充実度:5 内容難易度:4 試験難易度:5

東日本大震災以降の「新しい時代」を対象とし、技術者倫理について議論します。主張は全体通して「技術者たるもの哲学者たれ」というもので、密度が濃いわけではありませんが、倫理的判断基準について知っておくことは技術者にとって重要なことだと思います。試験は論述で、結構なボリュームです。

310 マーケティング論(’17)
Marketing ('17)

内容充実度:7 内容難易度:6 試験難易度:8

単位認定試験の平均点が53点台というなかなかな数字をマークした科目です。スタンダードなマーケティングの教科書といった趣で、マーケティングコンセプトから始まりセグメンテーションやポジショニング、価格戦略やブランド戦略について扱います。後半でサービスマーケティングやリレーションシップマーケティングが取り上げられているのがやや新しめな印象です。中小企業診断士の試験対策にも良さそうです。試験は厳密性が要求される内容で、難しいというより得点しづらい作問の仕方でした。

310 物質・材料工学と社会(’17)
Materials Science and Engineering in Our Society ('17)

内容充実度:8 内容難易度:7 試験難易度:7
こうじょうけんがく

社会と産業コースで一番産業っぽい科目です。鉄道やファッション、航空機といった現実の製品から「トップダウン」で各製品に関係する材料に迫るというアプローチをとっています。扱う内容自体は毎回違うので(セメント、炭素繊維、半導体・・・)しっかり理解しようとすると前知識か自習が必須だと思います。放送授業が工場見学っぽくて楽しめです。

310 住まいの環境デザイン(’18)
Environmental Design for Housing and Living ('18)

内容充実度:6 内容難易度:6 試験難易度:5

在宅ワークが1年以上続き、少しでも住環境を向上させようと思って履修しました。エコな暮らしの考え方がいろいろ学べます。除湿設備を整えたりカーテンを変えてみたり細かいところをカイゼン中です。光熱費を減らして授業料のモトを取りたいです。

310 地域と都市の防災(’16)
Comprehensive Disaster Management of Regions and Cities ('16)

内容充実度:7 内容難易度:6 試験難易度:7

自宅周辺がハザードマップで真っ赤っかだったことに衝撃を受けて履修しました。防災について、法律的な観点から技術的(免振技術など)な観点まで横断的に学ぶ科目です。江戸・東京という町は災害からの復興によって成立してきた、という議論が印象的でした。これを履修したからといってハザードマップが青くなるわけではないですが、心構えにはなりました。

320 都市・建築の環境とエネルギー(’14)
Cities, Buildings, Environment and Energy ('14)

内容充実度:6 内容難易度:5 試験難易度:5

主に熱環境やエネルギーの観点から都市について考える科目です。仕事でインフラ系のお客さんと会話する機会があり、ヒントになればと履修しました。これまでさほど意識することのなかった緑化や通風計画という観点から街並みを眺められるようになり、少しだけですが見方が変わった気がします。

330 環境の可視化(’15)-地球環境から生活環境まで-
Visualization of Environments ('15) : from Global Environments to Living Environments

内容充実度:6 内容難易度:6 試験難易度:6

リモートセンシングやシミュレーションを駆使して環境情報を可視化する方法について議論されます。環境センサーの情報処理として情報コースにいてもいい科目だと思います。対象も地盤・水流・熱環境と様々で、IoT時代(ベタですが)に効いてくる科目だと思います。試験は教科書の内容がそこそこ分かっていれば解けるレベルです。

生活と福祉コース科目

210 人体の構造と機能(’18)
Structure and Function of the Human Body ('18)

内容充実度:7 内容難易度:8 試験難易度:7

順天堂大学の先生によるガッツリ講義で、系統的に学ぶことが意識されています。おそらく看護師の方がメインターゲットの科目だと思いますが、私はヒューマンインタフェース系の仕事をやるにあたって一回人体についておさらいしておきたいなと思って履修しました。試験は持ち込み可なので温情があって助かります(持ち込み不可だとこういうモチベーションで履修するにはかなり厳しいと思います)。

220 生活における地理空間情報の活用(’16)
The Use of Geospatial Information in Daily Life ('16)

内容充実度:6 内容難易度:4 試験難易度:1

生活者=ユーザ目線での地理空間情報の利活用についての科目です。トレーサビリティや疾病の空間分布といった身近なテーマが取り上げられます。切り口が地理空間情報なので、意外な活用法も紹介されていて面白いです。試験は持ち込み可で簡単な部類です。

310 生活環境と情報認知(’15)
Cognitive Informatics on Human Living Environment ('15)

内容充実度:5 内容難易度:5 試験難易度:1

生活環境という切り口から、人間が情報をどのように認知し処理しているかを議論するオムニバス科目です。認知心理学に近い分野から環境情報の測定、医療情報の活用まで多岐にわたります。これも試験は持ち込み可で簡単な部類です。

320 ソーシャルシティ(’17)
Social City ('17)

内容充実度:6 内容難易度:5 試験難易度:4

わかりにくい科目名ですが、まちを対象に環境とコミュニケーションについて多角的に検討する科目です。マーケティングやソーシャルグラフから始まり、モバイルセンシングや熱環境のシミュレーションまで話が広がります。私はまちづくりそのものを仕事にしているわけではありませんが、扱っているシステムが実空間インタフェースに近いこと、デジタルツインやメタバースといった領域に片足を突っ込んでいることから履修し、なかなか示唆に富む科目だったと思います。純粋にまちづくりに関心がある方にもよさそうです。試験は選択式ですがそれなりに理解していれば問題なく解ける水準です。2023年度から後継科目のソーシャルシティ(’23)が始まるようです。

人間と文化コース科目

210 コミュニケーション学入門(’19)
Introductory Course on Communication ('19)

内容充実度:8 内容難易度:6 試験難易度:7
無茶ぶりしてくるお客さんに履修してもらいたい

コミュニケーションの基礎概念から始まり、言語/非言語コミュニケーションの特徴や、多文化共生、文化進化論あたりを扱います。前半では日々無数に繰り広げているコミュニケーションの裏にはこんな理論が提唱されているのか、という気づきの多い内容で、大学の入門科目としてもおすすめできます。一方で後半の多文化共生と外国人労働者関係の章は、大切な議論であることは理解できつつも科目名から想起する内容からは若干外れている感じがあり(なぜここに置いているのかは説明がありますが)、多少人を選びそうです。試験は択一式で、授業内で扱った理論を実際の具体例に適用してみるとどうなるか?という問いが多めです。個人的にはこの出題方式は理解が促進されて非常に良いと思います。特に在宅受験になってから、教科書と記述が一致してるかどうかの国語クイズみたいになってしまってる科目が多いので・・・

210 現代人文地理学(’18)
Contemporary Human Geography ('18)

内容充実度:7 内容難易度:6 試験難易度:7

「人間・環境」と「地理」の組み合わせからなる学問で、環境問題や災害、都市化といったテーマが中心的な論点です。GISを扱う回もあるので生活環境情報の表現-GIS入門(’20)あたりと相性が良いかと思います。私たちがこの世界で生活する以上地理との関わりは必須であることを思い出させてくれる科目です。個人的には「焼き畑は必ずしも環境に悪くない」という議論が印象的でした(子供のころからなんとなく環境破壊の代表的な絵面のような感じがしていたので)。

210 博物館概論(’19)
Introduction to Museum Practice ('19)

内容充実度:4 内容難易度:2 試験難易度:2

第一義的には学芸員養成課程の科目ですが、趣味がミュージアムめぐりなので履修してみました。博物館額の各分野を概観するオムニバス系の科目で、博物館が持ついろいろな側面を知ることができます。

210 新しい言語学(’18)-心理と社会から見る人間の学-
New Trends in Linguistics ('18): Humanics with Psychological and Sociological Perspectives

内容充実度:8 内容難易度:7 試験難易度:6
犬はゴーゴリと名付けよ

言語研究法(’19)とセット売り感のある科目で、言語研究法(’19)が古典的な言語学を扱うのと対照的にこちらでは認知言語学や社会言語学や語用論といった言語学の「新しい」領域を扱います。印刷教材の言葉を借りれば、「心理学的能力や社会的コミュニケーション能力の結実したもの」として言語を捉えるものです。個人的には命名論の「表示性」と「表現性」の対立が興味深く、世の中で物事が命名される時にどういった力学が働いているのか考えさせられました。試験は激アマではないですが、順当に勉強していれば問題ないレベルです。

210 日本語学入門(’20)
Introduction to Japanese Linguistics ('20)

内容充実度:7 内容難易度:7 試験難易度:7
「は」と「が」の違い説明できますか?

日本語の音韻・文法・歴史・方言について論じる科目です。義務教育の「国語」では扱わない(扱った方がいいんじゃないの?と思いましたが)、日本語を客観的な一言語として捉える視点を獲得できます。「は」と「が」の違いが説明できるようになります。敬語表現の変遷や方言の周圏分布など、現代日本で生きるにあたって有益な内容も多いと思います。自然言語処理との捉え方の違いが鮮明に見えてくるのでその辺りを専門にしている方にもお勧めできるかと思います。試験はしっかり理解できていないと苦しい問題も出ます。

310 言語研究法(’19)
Introduction to Linguistics ('19)

内容充実度:6 内容難易度:6 試験難易度:7

あまり研究法という感じはなく英語の科目名(言語学入門)の方が正確な気がしますが、新しい言語学(’18)に対する「旧」言語学を扱う科目です。オンライン科目ですが特に演習とかがあるわけではないので小テスト付きの放送授業という趣です。古典的な言語学の対象である音韻論や形態論、統語論、意味論などを扱います。こちらも自然言語処理erの方にもお勧めできると思います。小テストが一発勝負なので多少気を使うかもしれません。

310 博物館展示論(’16)
Museum and Exhibition Studies ('16)

内容充実度:5 内容難易度:2 試験難易度:2

リトルワールド、博物館明治村、国立科学博物館などを取り上げ、「資料を展示する」ことに関連する議論をしていきます。東京国立博物館や国立科学博物館などは子供のころからよく通っていたので、展示にこんな工夫がされていました、という説明が伏線回収的で楽しめました(そして博物館明治村など行ったことのなかったところはこの機会に行ってみました)。ほかの博物館系科目と比べても一番一般利用者に近い分野なので、普通に眺めているだけでも博物館が好きな人は面白いと思います。試験は簡単です。

310 博物館資料保存論(’19)
Preservation of Museum Collections ('19)

内容充実度:4 内容難易度:3 試験難易度:3

展示論から一転して、ほぼ一般利用者の目に触れることはない部分です。これはこれでバックヤードツアー的な趣があって面白いです。日本の温湿度がいかに博物館資料の保存に適していないかがよくわかり、職員の方に頭が下がるようになります(?)。

320 博物館教育論(’16)
Museum Education ('16)

内容充実度:3 内容難易度:2 試験難易度:3

博物館で行われる教育活動について取り上げる科目です。「博物館教育」と言っても博物館主催のセミナーのような公式のイベントだけでなく、個人的な学びや来館者同士のコミュニケーションもまた学びであるということが強調されます(単なる「教育」も似たような考え方があると思いますが)。ちょっと事例紹介してるだけっぽくなってしまってるのが構成として惜しい感じがしました。

320 博物館経営論(’19)
Museum Management ('19)

内容充実度:3 内容難易度:2 試験難易度:4

博物館経営という訪問者側がほぼ意識しないであろう内容について学ぶ科目です。完全な公共機関でも民間企業でもない博物館という組織が政策に翻弄されながら経営していることがよく分かります。プログラム評価や提携戦略のパートは会社で仕事していくうえでも参考になるところかと思いました。博物館は社会にどんな価値をもたらすのか?という議論は昨今の文化施設に対する風当たりに対する回答として一見の価値ありです。

320 西洋音楽史(’21)
History of Western Music ('21)

内容充実度:7 内容難易度:6 試験難易度:6

古代ギリシャから19世紀までの歴史的展開を追う構成です。我々が当たり前のように考えている「クラシック音楽」はどこに由来するのか?という問いが中心にあります。放送時間45分の制約で紹介される音源が限られているのでかなり理論面に寄っており、扱われた曲をちゃんと聞きたかったら自分で探さないと厳しいです(私はAmazon Music Unlimitedを契約して聞いてました。グレゴリオ聖歌とかマニアックなオペラとかも割とカバーしててAmazonすげー!となります。)。これを履修してから古楽に微ハマり中です。

320 舞台芸術の魅力(’17)
Charm of Performing Arts ('17)

内容充実度:7 内容難易度:7 試験難易度:8

西洋芸術の歴史と理論と同じ青山先生の舞台芸術(オペラ・バレエ・ダンス・演劇・歌舞伎など)に特化した授業です。そもそも舞台でパフォーマンスするとは何か?とか古典演劇が古典たる所以は何か?という根本的な話からスタートします。映像が豊富で普段あえて意図しないと見ないようなパフォーマンスを見る機会になるので良いと思いました。オペラ座の馬蹄形劇場は社交のためだったというのが印象的でした。試験はやはり在宅試験向けにチューニングしてきている感じがします(2021年度1学期は平均53.9点。。)。

330 西洋芸術の歴史と理論(’16)
History and Theory of Western Art ('16)

内容充実度:8 内容難易度:7 試験難易度:9

UIUXデザイナーという仕事柄、「芸術理論」というものに関心を持って履修しました。テレビ授業の本領発揮という感じでヨーロッパ各地の美術館や教会を巡りながら進んでいきます(お金あったんだなあ)。「芸術は芸術家の自己表現ではなく、世界表現である」というスタンスに立ち、時代時代の世界の捉え方を追いながら作品を解釈していきます。「ゴシック」「バロック」「ロココ」など、なんとなく聞いたことはあるけど何なのかよくわからなかった概念が整理されてすっきりした気持ちになれました。2021年から在宅試験向けに単位認定試験がチューニングされてありえないくらい難化してるので要注意です。

330 日本美術史の近代とその外部(’18)
Modernism of Japanese Art History and it's Exterior ('18)

内容充実度:8 内容難易度:7 試験難易度:?

単位認定試験が実質レポートな特殊科目です。「近代とその外部」というのが若干わかりづらいのですが、ざっくり日本美術とヨーロッパやアジア諸国(アフリカも少し出てきます)の美術の相互作用に焦点が当たっていると理解しました。芸術作品とその背後にある思想、さらに他の地域のそれらを有機的に結んでいく綺麗な構成で、美術や文化に関心のある方であれば面白いのではないかと思います。通信指導・単位認定試験ともにレポート課題の候補に明らかに無理ゲーと思われるトラップ課題がかなりあるので、手を動かし始める前に書けそうかどうかよく精査してから取り組むことをお勧めします。

410 音を追究する(’16)
Exploring Sound ('16)

内容充実度:7 内容難易度:6 試験難易度:6

「音」がテーマのオムニバス科目で、物理・心理・音楽・言語・社会の切り口から議論します。単位認定試験は同じオムニバス科目の「色と形」よりは重箱の隅つつく系の問題が少なく、解きやすい部類かと思います。コンサートホールの音響特性の話が興味深かったです。

大学院科目

2022年、ついに大学院科目にも手を出してしまいました。放送大学は沼。

情報学の技術(’18)
Technologies of Informatics ('18)

内容充実度:8 内容難易度:7 試験難易度:7
新人研修に使おう

猛烈にざっくりした科目名ですが、基本的にはソフトウェア技術者を対象に、一旦社会の視点に立ち返って情報技術の技術的な要素を掘り下げてみる、という趣旨の科目です(社会の視点からというには技術的な掘り下げが深すぎる気がしなくもないですが)。障害分析やシナリオによる要求獲得の技法、制限日本語による要求表現、技術者教育などを扱います。中盤のコンパイラの回だけは少々数学的な色合いが濃すぎますが、残りは新人研修に使ってもいいのでは?と思える(もはや部署で使おうかなと思ってる)水準です。IT企業で普通に仕事をしているだけだと認知できない技術や、なんとなく使っていても厳密な扱いを理解しているかと問われると答えに窮する技術というのがあると思いますが、その辺りに手が届くというのがこの科目の存在意義だと思いました。試験の平均点が異様に高いですが普通に難しかったので大学院科目の試験平均点はアテにならなそうです(そもそも精鋭しか受けてないので、、)。量子コンピュータがちょっとだけ出てきます。

ソフトウェア工学(’19)
Software Engineering ('19)

内容充実度:8 内容難易度:8 試験難易度:7
UML、アーキテクチャ、プロジェクト計画

開発プロセスから始まり、UMLを使ったモデル化、品質管理といったソフトウェア開発の技術を学ぶ科目です。特にオブジェクト指向に力点が置かれ、結局オブジェクト指向の何が嬉しいのかよくわかっていなかった私にとっては学びが大きかったです。やはり実務と並行してあるべき論を学ぶことで見えてくるものもあります。中盤のモデル検査(オートマトン)と形式手法のところだけガチめの数理論理学なのでここでしばらく止まりました。試験もなんやかんやきちっと理解していないと落としそうな問題が出ます(例によって平均点は高いのですが)。こっちもUML周りを中心に新人研修に使えるレベルだと思います。

知能システム論(’18)
Intelligent Systems ('18)

内容充実度:9 内容難易度:9 レポート難易度:気合による
放送大学でAI人材になろう the Final

人工知能技術を学ぶオンライン科目です。AI人材になった↓ので満を持して履修しました。

分野の進化スピードがあまりにも早すぎるので(受講当時)4年前の開講だとどうかな?と思いましたが、現在主流の深層学習(さすがにBERTとかは入ってませんが)に加え、深層学習の強すぎるパワーによって主流から外れてきた数々のトライアル&エラーを振り返ることができるのが却って勉強になります。G検定とかE資格はほぼ機械学習・深層学習一本勝負になってしまっているので、その周縁知識を補完する意味でもいい科目だと思います。昨今はGoogle Colabと様々なパッケージを活用すれば技術的・数学的な内部処理をあまり理解できていなくとも簡単にAIでポンできてしまう時代ですが(それ自体は喜ばしいことです)、やはりその下層にある基礎技術を理解しているのとしていないのでは応用の幅が大きく変わってくると思います。レポートはテーマが何十個かあるので実装系でもリサーチ系でも好きに選べます。放送大学は昨今データサイエンスに力を入れていますが、この科目の内容が理解できれば一つの山の頂上に達したと言えるのではないかと思います。

生活環境情報学基礎演習(’18)
Basic Seminars in Living Environment Informatics ('18)

内容充実度:8 内容難易度:9 レポート難易度:前半10・後半3
スクラッチでつくる信号処理入門

生活健康科学プログラムに属するオンライン科目で、前半は時系列データに対する信号処理を扱うScilabプログラミング演習、後半はArcGISを使った地理空間情報の演習です。後半については学部科目の生活環境情報の表現-GIS入門(’20)と重複する部分があります。前後半で難易度が大きく異なり、後半は授業内で扱われるArcGISの基本的な操作が分かれば容易に対応可能ですが、前半は相当に高度なプログラミング能力が求められます。シラバスの履修上の留意点には「パソコンの基本的な使い方を知っていて、表計算ソフトでの四則演算の経験、高校卒業程度の数学の知識があれば履修可能です。」と書いてありますがこれはかなり怪しく、学部の手取り足取り教えてくれるプログラミング系科目とは異なり「~を行うプログラムを作成せよ」とぶん投げてくる形なので配列操作や周波数解析の手法がある程度分かっていないと苦しいと思います。私は前半の課題に数十時間要しました。

情報デザイン特論(’22)
Exploratory Study on Interaction Design ('22)

内容充実度:7 内容難易度:7 試験難易度:6
デザインと哲学のはざまで

学部の「情報デザイン」と姉妹科目と思われます。抽象的な議論としての「デザインとは何か?」「デザインするとはどういう手続きか?」という問いに挟まれて、講師陣が実践してきた看護現場や博物館でのデザインプロジェクトが紹介される形を取ります。三人称での観察と一人称での省察の関係によってデザインができあがっていく、というのが根底にあるようで、この科目の教材を見ているだけだと具体例でしかない部分がやや多く、そこから抽象化してどのような手続き・思考が必要なのか?と受講者自身が納得するまで考えることが必要な作りになっています。「情報デザイン」を履修、ないし自身でデザイン的な(これが必ずしも世にイメージされる「デザイン」ではないことが明かされるわけですが)営みに関心がある方が受講すると意味のある科目だと思います。試験は記述で、自身の経験を省察する小論文のような形です。

音楽・情報・脳(’23)
Music, Information, and Brain ('23)

内容充実度:7 内容難易度:7 試験難易度:8
ハイパーソニック!

放送大学の科目の大半が圧倒的な編集努力によってその分野の標準的な教科書を目指している中にあって、ハイパーソニック・エフェクトという特定の学説にかなりの重点を置いた異色科目です。情報コースにありますが、音楽を中心に脳科学や生理学、情報工学といったいくつかの切り口で音楽が人間に与える影響を明らかにしようという内容上、学部の総合科目に近い位置づけであると思います。私も関連論文を調べてみましたが、ハイパーソニック・エフェクトは未だ定説とは言えない状況でもあり、意欲的ながら扱いが難しい科目だなと思いました。試験は記述式で授業内で扱った内容を問われるものですが、なかなか採点が厳しい感じがしました。

コンピューティング(’19)
Computing ('19)

内容充実度:8 内容難易度:10 試験難易度:9
計算理論の沼へ・・・

チューリング機械・帰納関数論・ラムダ計算といった計算理論を扱う科目です。様相論理やカリーハワード同型対応、ゲーデルの不完全性定理といった(普通のシステムエンジニア目線では)数学的なそこそこの深淵を覗くことになり、難しい科目です。教材内では理論の説明が主ですが、試験はきっちり計算(というより理論の帰結としての具体例の処理という方が正しいかもしれませんが)が求められます。かつ過去問の解答が未公表のため、参考文献をあれこれ駆使する必要がある点でもなかなかハードルが高いです。

おわりに

以上です。なかなかのボリュームですね。皆様のご参考になればうれしいです。

せっかくマイルストーンを名乗ったので、広く科目情報を全コース向けに充実させたいです。ほかにも似たような試みをされている方をTwitterなどで見かけているので、リンクするとか何か考えようと思います。
(2021年8月追記)→リンクしてみます。

↑同世代のITエンジニアで勝手にシンパシーを感じてるぷじぇばさん

↑心理と教育コースの坂口さかなさん

↑全く違う属性ですが看護師のもなかさん

↑京都クスノキ大学出身のぺでさん

ここにリンクしても良い方がいましたらコメントかTwitter @RakT1a869LnEHne で教えてください。

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