【COLUMN】隣の島までカメラと逃避行|久莉
クリエイターが作品に込めた想いやストーリー、普段の撮影活動における視点を紐解いていく「Creators Perspective」。
今回のテーマは、フォトグラファーの久莉さんによる「島暮らしでの休日の過ごし方」についてです。
離島でお仕事をしながら生活する久莉さん。海に囲まれた島からでは気軽に遠出ができない中で、カメラと共にどのようにして休日に息抜きをされているのかを、本記事にてお話しいただきました。
お気に入りの小さなカメラを持って旅に出るのが好きな方や、日々の思い出をカメラで残したい方も、ぜひご覧ください。
日々の生活は大切だけど大変で、そんななか身体が疲れたときは休日、家に閉じこもって映画を流しながらゴロゴロしたり本を読んだりゲームをしたりして休んでいます。
心が疲れたときは日常の場所から離れます。いつもと違う風景はどこか開けて呼吸がしやすい気がします。そしてそこにはカメラが欠かせません。
今は島暮らしをしているので遠くに行きたいと思ってもなかなか難しい状況です。船でしか島外に出る手段がなく、便数も限られ本土まで往復だと時間がかかります。でも島内では車で走っているとだいたい仕事に行く道を通ることになり、とても日常です。
こんなとき私は隣の島に行きます。近いけれど橋はないので頻繁に行くことはなく遠く感じる島。
ゆっくりできない日が続いて頭がぼんやりしてきたので何がなんでも次の休みの日は行くぞと決めていました。島をゆっくりマイペースに回りたかったので自分の車をフェリーに載せて出発です。
助手席にはカメラバッグ。疲れ気味だったのでカメラはひとつにしました。重たいものも持ちたくなかったのでこの日は小さめカメラを選びました。LUMIX G100です。
レンズはライカ。レンズにライカって書いてあるとなんだか素敵な写真が撮れる気がしてきます。気分、大事です。
離れたところに出掛けると新鮮でいろいろ目につきたくさん撮りたくなります。カメラを持ってこればよかったと後悔しないよう忘れず持っていくようにしています。
たとえ一枚も撮ることがなくても、隣にカメラがあると安心するんです。
到着。よく晴れてくれました。澄んだ青色です。
カメラを片手に港を歩きます。小さいカメラなので邪魔にもならず、構えるときも力を入れず、撮りたいと思ったときすぐに撮れるので気軽に散策できます。
写真を撮り始めてから、旅に行く前はどのカメラの組み合わせを持っていこうか、買い物だけの予定だけどもしかしたら途中で綺麗な光に出会うかもしれないからコンデジ一台をお財布といっしょに鞄のなかに入れたりと、カメラとの時間が増え、光を見ると写真が撮りたくてたまらなくなるようになりました。
写真を写すには光が必須で、カメラと光の関係は深いだけあって、自分の目で見る光も綺麗なのですがレンズを通して見る光はさらに印象的に感じ惹かれます。
逆光のときのきらめき、順光のときの景色の鮮やかさ。光によって海の青色を見たいときはこの時間はこちらの道と決めます。気持ちも明るくなってきました。
一枚撮るごとに気力が補充されていきます。
目の前の「好き」を撮る。写真を撮っていると、明日も早いなとか余計な考えは消えていき、好きで満たされます。
単純ですが元気になってきたので港で島のお弁当を調達して車で島内を回ることとします。
あまりお店がない場所にも行く予定なのでお腹が減ったときようにデザートも買っていきます。
欲目もあるかもしれませんが、島の食べ物は全部おいしいなと思っています。特に海の近くで食べるおにぎりはどうしてあんなに美味しいのでしょうか。ごちそうさまでした。
海から海へ。海沿いを走るのは気持ちがいいです。
気になるものがあれば停まれるところを探して引き返します。山羊の角と瞳、けっこう怖かったです。
集落もゆっくり走ります。個人商店、入ってみたいけど一回入るまでなぜか緊張して勇気がいります。
結局お店には入らず外をふらふらと撮っていきました。
自分が撮りたいと思ったものを撮りたいように撮って残せる自由とおもしろさ。お気に入りの写真を撮れたときのうれしさ。写真、ほんとうに楽しいです。
何気なく目にしているたくさんの場面の一部をカメラで写しとると新鮮な表情を見せてくれることがあります。やっぱりおもしろいです。
神社でお散歩もしました。花のいい香りに癒されます。
玉ボケきらきらして大好きです。
さらに遠くの場所を目指します。しばらく運転に集中です。
山の上の展望台から。狭くカーブも多いので雪が積もったら来れないけどいつか雪景色も見てみたくなりました。季節ごとにここに来たい、行きたいと考えることも増えました。
車を降りてカメラだけ持って歩きます。坂を上がって下りて。静かな時間です。
忘れやすいので気になったらとにかく撮っておきます。未来の自分へのお土産です。
私は花が好きなのでどこに出掛けても花があると撮っています。
そして無性にファインダーを覗いて撮りたくなるときがあります。まわりが明るすぎるときなどにもファインダー越しに確認することはありますが、この場合とも違う、確認するだけならモニター画面のほうがしやすいときでもファインダーで見て撮りたくなるのです。
花を見つけ、G100にもファインダーがあるのでそっと覗きました。
区切られた世界、視界には花だけがあります。
花に意識がいき、いつもより花が身近で、花の呼吸も感じられそうです。これはフィルムカメラのときにも感じます。ファインダーの効果でしょうか。
シャッターを切り、いつの間にか止めていた息を吐いて吸います。
好きな花を身近に感じ、次に来たときは枯れてるかもともう寂しくなりますが、写真を見返すと花の世界に一瞬入らせてもらった、使用済みの切符を手にしたような感覚になります。写真、大切にしたいです。
帰りの船の時間が迫ってきました。
もっとずっと撮っていたいのですが、また撮りに来るためにも日常に戻る準備をします。自分なりの日常からの短い逃避行でしたが、明日からの日々を頑張るために必要な時間でした。
名残惜しくてギリギリまで寄り道して撮っていました。昔は夕方は一日の終わりを感じましたが、今は夕暮れの光が魅力的でまだまだこれからだと感じます
家族へのお土産には量り売りのサザエを。助手席にはカメラを。今度こそ帰るとしましょう。
いかがでしたでしょうか。
息が詰まるような日々の中でも、見知らぬ土地でカメラを構えるだけで、心が軽くなり開放感を感じられた経験は皆さんもあるのではないでしょうか。
サッと持ち運べる可愛くて小さなカメラであれば、周りの視線も気にすることなくただ「好き」と感じた瞬間を気持ちのままに写真に残すことができます。
小さな鞄にも入り、首から下げてもオシャレな小さなカメラで、あなたも日々を思い出に残してみませんか?
■今回の使用機材【LUMIX G100】
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