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趣味が高じてCP+に登壇したサラリーマンが考える「LUMIXの色味」の話

こんにちは。映像好きのサラリーマン、SUMIZOON(@sumizoon)です。

普段はサラリーマンをしている私ですが、実は趣味が高じたためかCP+2022ではメーカーブースでカラーグレーディングに関する登壇の機会をいただきました。アマチュアカメラマンとしてはこれ以上ない栄誉と感じております。

今回はそんな私の考える「LUMIXの色味」を中心にLUMIXの魅力についてお話しします。

LUMIXとの出逢いについて

機材選びにおいて、振り返ればいくつものメーカーを渡り歩いてきた私ではありますが、紆余曲折を経て最終的に落ち着いた先がLUMIXです。

私がLUMIXに行き着いた理由の一つが、画質を司る「色」になります。

もちろんLUMIXの道具としての使い勝手の良さや多彩な動画フォーマットの対応なども理由にはありますが、私なりに拘ってきた「色」がLUMIXに行き着いた理由の多くを占めることになりました。

私がなぜLUMIXの色に魅了されたのか。それを少しでもお伝えする事ができれば筆者としても嬉しく思います。

私が考える「LUMIXの色作り」

LUMIX S1Hにて撮影

色を理由にLUMIXを使い続ける私が考える「LUMIXの色作り」。それは「忠実である」「スキントーンの美しさ」「低照度下における色情報の豊富さ」「破綻しにくい10bitデータ」といった要素に分類分けされます。

それぞれ詳しくお話しします。

忠実であること

LUMIXの色とは一言で言うと「忠実である」と言う点に尽きます。

「忠実」は面白みのない単語に聞こえるかもしれませんが、実はこれが一番重要なファクタです。カラーグレーディングなどの色の演出を行う上においては、素材自体の色味に特徴的な色作りがされていない事が重要と考えています。

色味に特徴があることは決して悪いことではありませんが、とりわけ自分なりの色作りをしていきたい場合に、演出された色味を含んでいると多くの弊害があります。

数年前に私がブログで書いた記事を改めて読み返してみました。

 S1やS1Hの素の映像に関して言うなら「ナチュラル」であることに尽きると思います。意外とこのナチュラルさというのは重要でグレーディング素材として如何様にでも化けさせる事ができる懐の深さを兼ね備えていると考えることができると思っています。
(中略)
色に関しては極端な特徴が無いのがS1系の映像なのだと思います。(これはディスっているわけではなく、正確に再現する思想がメーカーの思想で素晴らしい点だと思っています。)

https://l-mount.hatenadiary.jp/entry/2020/01/20/005359
Lマウントカメラ情報局

言葉は違えど結局同じ事を述べています。

そもそもカラーグレーディングを行う際はノーマルトーンと言う、いわゆるニュートラルな絵に調整するところからスタートしますが、このノーマルトーンを作る作業自体は本来かなり億劫なものです。

それはクリエイティブというよりはむしろ作業に近い工程であり、できればあまり時間をかけたくない工程だからです。そもそもカメラなのだからその道具の本文は忠実度の高い色味、カラーのバランスを担保してこそです。

良いお酒は良い水からと言いますが、混ざりものがされている水を使ってお酒を作るならば濾過する必要がありますし、完全に雑味を取り除くことは難しいでしょう。ところが初めから素晴らしい水であれば余計な工程が省かれるはずですし、その雑味は入り込む余地がないはずです。

LUMIX S5にて撮影

LUMIXの絵はまさに雑味のない水そのものだと言う事ができます。これが色で演出したい人にとって素晴らしい結果をもたらしてくれる事は想像に難くないのではないでしょうか。

美しいスキントーン

LUMIX GH6にて撮影

LUMIXは以前より美しいスキントーンを描写することで定評がありましたが、GH5SやG9、GH5M2、LUMIX Sシリーズに採用されたカラーサイエンスでは、更に色に忠実な上に美しいスキントーンを描写できるという特徴があります。もちろんそれは最新のGH6でも同様です。

その理由は中間調以上の階調の滑らかさに秘密があるのだろうと私は考えています。特にGH6では広いダイナミックレンジもあいまってマイクロフォーサーズとは思えない美しいスキントーンを表現することができます。

LUMIXのカラーサイエンスはスキントーンを美しく表現可能な上に、マジックアワーに見られるような空の美しいグラデーションも美しいままに繋がりの良いトーンで描写できます。これは動画だけでなくスチルの描写でも同じです。

GH5Sにて撮影(空撮部以外)

低照度におけるしっかりとした色情報

低照度における色情報の残り方もLUMIX特有のものだと感じます。低照度では色が極端に無くなるカメラが多い中でLUMIX、特にSシリーズやGH5S/GH6ではしっかりとした色情報が残る傾向にあります。

通常のコーデックを使いながらも破綻のしにくい画

もう一つお伝えしたい事があります。

LUMIX(GHシリーズやSシリーズ)の動画フォーマットは、その多くが10bitのファイルフォーマットです。

もちろんカメラ内部での処理はそのビット深度よりも多くのビット幅で作られているものですが、最終的に汎用的に扱える10bitフォーマットはGH5の頃から内部収録が可能です。5年前には内部収録で10bitのデータが撮れるカメラはGH5以外には存在していませんでした。故にグレーディングをしようと思うとGH5やGH5S以外に選択肢は無かったのです。

GH5/GH5Sにて撮影

今ではアマチュアカメラマンの間でも認知されるようになってきた10bitファイルフォーマットですが、すでに5年も前からGH5の滑らかな階調性を持つ10bitフォーマットは多くのクリエーターの画に対する欲求を満たしてきたといえます。

例えばGH5以降のLUMIX GHシリーズ/Sシリーズの4K30pはH.264による4:2:2 10bitの方式を主軸とした動画フォーマットが採用されています。

4:2:2というのはクロマサブサンプリングの方式の一つで、比較的色(色差)情報の間引き処理が少なくリッチな色情報を収める方式です。10bitはトーンの滑らかさを表すもので、特にカラーグレーディングを行う際にこの10bitフォーマットは効力を発揮します。

具体的に8bitと10bitの比較を紹介しましょう。下記は8bitのLog撮影のデータをグレーディング時にコントラスト調整したものです。

ぱっと見では上の2枚に違いを感じないかもしれませんが、一旦気づくと恐ろしいほどに違いがあります。分かりやすい様に拡大してみます。

これはかなり意地悪くグレーディングした例ではあるのですが、8bitのデータは空の部分に明らかな縞状のバンディング(トーンジャンプ)が見られます。これが映像の中でザワザワと動くので一旦バンディングに気づいてしまうと映像を鑑賞するどころではなくなってしまいます。

この映像をRGBパレードで見てみます。RGBパレード表示とはR/G/Bの各レベルを1024段階で表示したものです。

8bit素材の場合はそのレベルが飛び飛びになって抜け落ちている事が分かるかと思います。

では次に10bitのデータを見てみます。

いかがでしょうか?8bitのデータでは縞状に見えていたバンディングは見えません。RGBパレード表示もデータが密に詰まっており、そのレベルに飛びが無く抜けが無い事がお分かりかと思います。

つまり8Bit素材ではグラデーションが縞状となるバンディングが発生するため、グレーディング時に美しい映像を表現することが難しい事になります。

GH5が5年前に実現したこの10bitファイルフォーマットは、最近になってようやく他のカメラメーカーの高価格帯モデルで実現していますが、それでも大半のカメラは8bitコーデックのままです。

H.254の比較的扱い易いコーデックながら破綻のしにくい画を時代に先駆けて実現していた事は、振り返ると画期的な事だと思います。

LUMIXの色だから導き出せる自分なりの表現

色が忠実で、美しいスキントーン、しっかりと残る色情報、滑らかな階調性から導き出されたものを、色に拘りのあるクリエイターにこそ使ってほしいと思っています。

ダウンロードしたLUTを単にあてるだけで満足できないといった人は尚の事ですし、本来LUTは買うものでなく自分で絵作りをした結果出来上がるものです。

尚、このカラーグレーディング自体は複雑な事をやっている様に見えて実は非常にシンプルなプロセスで行う事ができます。機会があれば詳細に記載したいと思いますが、この画作りに関してはCP+2022のLUMIXブースの配信で全てのプロセスを説明させていただきましので、是非DAY4のアーカイブをご覧いただければと思います。(この動画はLUMIX BASE TOKYOの会員登録(登録無料)が必要です)

広いダイナミックレンジ

映像の品質の尺度として、色以外の要素では「ノイズ感(S/N)」「ダイナミックレンジ」「解像度」が挙げられます。特にダイナミックレンジは画作りの中で「色」と密接な関係にあります。

ダイナミックレンジとは一枚のフレームで暗いところから明るいところまでを収める器の大きさを示しています。つまりシャドーからハイライトまでを一枚のフレームに収められるか否かはこのダイナミックレンジ特性によって決まります。

レンジの広さが実現した美しいハイライトロールオフ

ダイナミックレンジが狭ければハイライト近辺の画は白飛びをし、データ(輝度、色のデータ)は存在せず階調の表現が難しくなります。

LUMIXはダイナミックレンジが広いため、豊かな階調表現が実現されています。

LUMIX S1Hにて撮影

LUMIX S1にて撮影

いずれの動画も美しい光を表現できていると自負していますが、この階調表現ができることがLUMIXの強みでもあります。

ノイズは少なければ良いというものではない

ノイズに関して記載してしまうと本来は膨大な文章になってしまうので詳細は割愛しますが、GH5S以降のLUMIXのノイズの出方に関して一言で書くと、「素直」という事ができます。

高感度設定時においてはどのメーカーのカメラも一定量のノイズが出ますので、なんらかの処理を経て画作りがされています。

LUMIXの場合は変にノイズリダクションでベタベタに塗りつぶされた画やボタっとしたノイズが出るのではなく、ディテールがしっかり残る粒子の細かいノイズが出る傾向にあります。つまりノイズがノイズとして見えにくく、撮影後の後処理でユーザーがノイズリダクションを調整しやすいのです。

もちろんベースとしてノイズの量は低く抑えられているLUMIXですのでフルサイズのSシリーズではISO6400、最新のGH6ではISO4000程度ならノイズリダクションを使わずに編集してしまう事が殆どです。

LUMIX S5にて撮影

Netflixが使用を許す唯一のミラーレスカメラ

あまり知られていないかもしれませんが、Netflixでは「ある一定の水準をクリアしたカメラ」で撮影した映像しか放送が許されていません。その殆どは映画撮影で使われる超高価格帯のカメラです。

その認証基準として有名なのは、ネイティブな4K以上の解像度であることが挙げられます。故に多くのCM撮影で使われ続けてきたカメラでも、Netflixの基準をクリアしておらず認証されていないものもあります。4KコンテンツがメインとなるNetflixらしい基準と考えられます。

他にも多くの基準がありますが、その厳しい基準をクリアしている唯一のミラーレスカメラがLUMIX S1Hです。同様にボックスカメラであるLUMIX BGH1、BS1Hも認証を受けています。

見方を変えると、LUMIX S5は連続撮影時間30分という制限がありながらも4K動画を撮影する上においてはS1Hと同じクオリティの映像を記録することができますし、BGH1よりも明らかにGH6はワンランク上の表現が可能なカメラです。

つまりLUMIX S5やGH6は映像品質において多くの超高価格帯シネマカメラと肩を並べる存在と言っても良いでしょう。

二度と訪れない瞬間のために

LUMIX S1/GH5Sにて撮影

最後まで読んでいただきありがとうございます。

プロであろうとアマチュアであろうと撮り逃しのできない瞬間は必ずあります。私はYoutubeでは公開していない映像を含め、多くの撮影をLUMIXで撮影してきました。一生の思い出に残す道具として私が選んだのはLUMIXです。

その理由には、前述の様に自分のエッセンスを盛り込みやすい「色」があります。

多くのLUMIXユーザーがLUMIXの画は素晴らしいと言っていますが、一旦LUMIXを使ってしまうとそこから離れられない「画力」を感じ取る事ができると思います。

是非一度その魅力に触れてみては如何でしょうか。

とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ
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