LUMIX GH7で作る、本格ミュージックビデオ|ギュイーントクガワ
はじめに
LUMIX GH7。
この記事が公開される頃には、もう皆様のお手元には届いているでしょうか。
さすがマイクロフォーサーズのフラグシップモデルというだけあって、今回のGHも素晴らしいデキですね!
ずっしりと手に伝わる重み。
手が大きい自分でも思い切り握り込める、深く大きなグリップ。
各ボタンやダイヤルの確かな節度感―。
「そうそう!カメラってこうだよな」と、昔のあこがれを思い出させてくれるような上質な仕上がり。
手に取った瞬間に、その「フラグシップ感(?)」が伝わってきます。
さて、私ギュイーントクガワは、正直に申し上げまして技術的なことはあまり良くわかっておりません。
もちろん今回のGH7にもたくさんのNEW FEATUREがあります。
GHシリーズ初の像面位相差AF搭載だったり、Apple ProRes RAWの内部収録が可能になっていたり。細かくアップデート項目をリストアップしていくととても大変ですし、それらの利点を上手に解説する自信もありません(笑)
なのでそこら辺は他のレビュアー様方にお任せするとして、僕の方からはこのGH7のより実践的な部分を皆様にシェアさせていただきます。
ミュージックビデオ制作
さて今回ギュイーントクガワは、友人のエマークさんといっしょに、GH7の作例として一本のミュージックビデオを制作しました。
鈴音さんというシンガーソングライターの方にご協力いただき、完成した本編がこちらです。
エマーク氏とギュイーントクガワの役割分担はこんな感じ。
はい。今回僕、何もしてません(笑)。
基本的にはエマークさんのチャンネルに公開するコンテンツとして、GH7を使って自由にクリエイティブを楽しんでいただくという企画。僕はそのお手伝いをしただけなのでした。
しかしながら、エマークさんはギュイーントクガワのショットを大変気に入ってくれているようで、本編映像にもその「ギュイーンショット」が多分に盛り込まれています。これは非常に嬉しいことです。
ここからはその「ギュイーンショット」をどのような考えのもとで生み出したのか、そしてGH7がどのように有利だったのかを、ショットからの切り出し画像を交えながらお話しします。
ハウススタジオにて
撮影は都内のハウススタジオから始まりました。
基本的に、動画は全て4K60p MOV 4:2:2 10bit All-IntraのV-Logで撮影しています。そして、ギュイーントクガワは全てのショットにおいて、手ブレ補正は電子補正を「強」、そして手ブレ補正ブーストもオンにした状態で、ハンドヘルドで行っています。
使用レンズはエマークさんの私物のLEICA DG VARIO-SUMMILUX 25-50mm / F1.7 ASPH.を使わせてもらいました。
前提として、エマークさんとの2カメ体制で歩留まりを稼いでいこうという中で、エマークさんは今回、編集も担当される、いわゆるディレクターの立場として、ストーリーの骨子となるメインのショットを撮っていき、僕の担当としては主にヨリのショットをできるだけ撮っておいてほしいと指示を受けていました。
なので、とりあえずガツガツ寄っています。
いわゆる、フェイス、バスト、ウェスト、ニー、フルフィギュア…と代表的な人物撮影の構図があるなか、そのへんはもうエマークさんにお任せして、ギュイーントクガワはそのどれでもない、「パーツ撮り」です。
なので、「足~」とか。
「ギターを爪弾く指~」
なんかギターのヘッドからぶら下がってる「お守りみたいな飾り~」
あと「クチビル」とか、「吸い込まれそうな大きな瞳」であるとか。
そういうアップショット、ディティールショットを中心に狙っていっています。
ここでのGH7の利点としては、まずやっぱり手ブレ補正でした。
LUMIXの動画手ブレ補正、これを使ってしまうともう他のブランドのカメラが使えなくなっちゃいそうです(笑)。怖いほど滑らかです。
35mm判換算50-100mmのレンズなんですけど、エマークさんが広角ズームレンズで大きく撮っている傍ら、僕はアップショットを狙っていくわけですから、必然的に僕はテレ端、100mmを手持ちで稼いでいっているんです。
この滑らかなワークが、換算100mmでできちゃう。
とても安定しているでしょ?これは撮ってて、とてもキモチイイです。
あと、もちろん今回は像面位相差AFが初めてGHシリーズに乗ってきたというところで、新製品訴求のための作例としては積極的に使うべきなんでしょうけど、ここらへんはほとんどMFでやってしまっています(笑)
LUMIXはAFもとても良くなったけど、「MFがやりやすい」っていうのもこれ、大きな特徴なんです。特にこのVARIO-SUMMILUX F1.7のズームのシリーズは、フォーカスクラッチ機構が備わってます。フォーカスリングをカチッと手前に引っ張ってやることで、瞬時にMF操作に切り替えられる機構。
ちゃんと距離計もここに出てきてくれるので、リングを触りながら、ヌメ~っと精細に狙ったところにフォーカスを持っていくことができます。操作感は完全にアナログ。なのでピン送りのようなショットも、少し練習して手に角度を覚え込ませれば簡単に実現しますよ。
そして、そのフォーカスリングの操作も、ちゃんとこの強力なボディ内手ブレ補正が抑えてくれる。
盤石な体制が整ってるな、というのが、ここで解っていただけるかと思います。
…で、ここからは余談なんですけど、なんかエマークさんはこうやって僕が撮るヨリのショットに「色気」を感じて好きなようで…。
まあ「パーツフェチ」という言葉もあるくらいですからね。なんとなくエマークさんが言うこともわかるような気がします。リクエストにお応えして、積極的にフェティッシュなショットを量産するように心がけました。
お次は、F1.7の大口径レンズを活かした前ボケのショット。
「マイクロフォーサーズはセンサーが小さくてボケを作りにくい」というイメージを持たれている方も多いと思うのですが、全然これくらいのボケ表現、可能です!前ボケを活かした中々おしゃれな構図ができたなと思います。
マイクロフォーサーズはやはり、レンズを含めたシステムがコンパクトになるという利点があり、その上で今回の強力な手ブレ補正、そしてAF/MFどっちも行けるというこの使いやすさも相まって、思いついた構図を片っ端からどんどん試せる、チャレンジできる、その「攻めの姿勢」を崩さずに撮影を続けていけるというのが、今回のGH7のいいところかなと思っています。
リップシンク(アテ振り)撮影
さて、ここからは部屋でのリップシンク撮影ですね。
スピーカーから音源を流しつつ、アーティストさんに当て振りをしてもらい、それを何パターンか撮っておき、編集タイムライン上でマルチを組むというやり方です。
ここでも、ギュイーントクガワは担当としてハンドヘルドでヨリのショット、ワークを伴ったショットを狙っています。GH7は基本的には先程と同じ設定です。
こういったMVのリップシンクを撮る場合に気をつけることはまず、「カメラを止めるな」です。
5分の曲だったら5分、頭からお尻までずっとRECを続けること。そしてその5分間、どこを切っても絵として成立するように、編集で使える箇所ができるだけ多くなるように意識して、丁寧なカメラワークが求められるということです。
…まあここでは僕は我慢できずにところどころ大きな移動をしてしまっているので、使えないところもあるんですけど…。
ここでも高さを様々に変えて、ハイアングル/ローアングル、または前ボケを入れてみたり…と、いろんなことを試してしまってます。これは、あまり良くない例ですね。ド下手くそです。
こういうことをやってしまうと、編集さんにあとで怒られますね。駄目です。我慢しましょう。
こちらは、このハウススタジオにあった特徴的な照明を活かした表現を試してます。完パケには採用されなかったショットですが、個人的にはとても気に入っています。
で、ベッドでの寝起きシーン。これはエマークさんが「絶対に入れたかった」シーンらしいですけど、実はもうこの時刻、日が落ちかかってしまって窓からの自然光が殆ど無い中での撮影です。アシスタントに照明を手で持ってもらい、窓際に配置してもらって撮っているショットですね。
このミドルからシャドウにつながるグラデーションも見事に描写できていて、これはダイナミックレンジブーストの恩恵なのかなと感じます。めちゃくちゃキレイですよね。これほんとに30万円未満で買えるカメラかよ、と…。
舞台は夜のストリートへ
新橋駅前でのストリートライブのシーンですね。
ここは先程のレンズに加えて、LEICA DG VARIO-ELMARIT 50-200mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.というレンズも使っています。
35mm判換算100mm-400mmですね。これももちろん全編ハンドヘルドで、手ブレ補正を最大限に活かした撮影をしています。
ただ、今回僕がアホだったのが、ソフトフィルターの表現を重視したために、NDフィルターがセットになってしまってて、光量が落ちてしまってたんですよ。それをISO感度で補うような横着なやり方をしているので、撮って出しでは盛大にノイズが出てしまってます。ISO6400ぐらいでしょうか。
これは編集のエマークさんに苦労かけたかなと思いますね。
ただ、手ブレ補正の優秀さというのがここでも際立ちます。
400mm超ロングからのニーショット。一生懸命歌を歌っている鈴音さんと、その前を無視して通り過ぎる街の人々。自分の音楽活動がなかなか思うようにいかない、というような焦燥感がうまく描けたかなと思います。
まあ、ぶっちゃけて言うと、ここまで来ると流石にGH7といえども、難易度は高めですね。結構苦労して撮影しています。
引き続き、ここからは夜のネオン街のシーンです。
ここでもソフトフィルターをつけて盛大にハイライトを散らしてます。
ちょっと大げさなミストですけど、90年代のアニメっぽくて中々いい表現になってるかなと思います。
ネオンがギラギラしてるところが玉ボケになって面白いですね。
ビールのシーン、これも完パケでは不採用だった箇所ですが、個人的にとても気に入っています。
まずこのネオン街、サラリーマンの聖地、というガチャガチャしたカラフルさがよく出てて、LUMIXの発色の良さに驚きますね。
あと、このヨリ。
特にマクロレンズを使っているわけではないのに、ここまでビールの泡のアブストラクト表現も一本のレンズでできてしまう、これもマイクロフォーサーズ、センサーが小さいというところの利点ですよね。
終わりに
はい、という感じで1日目のロケが終了しました。この後も2日目、今度は長野の方に移動しての撮影に続いていくのですが、これはまた今後のギュイーントクガワのYouTube動画でお話できればと思っています。
LUMIX GH7は、他の先行レビュアーのみなさんもおっしゃっているように、触れば触るほど「欠点を見つけるのが難しい」と感じるカメラです。
弱点がほぼ無い・・・悪く言ってしまえば、飛び抜けて良いというところもない。これまでイマイチ足りていないと感じてしまっていた部分(特にAFまわり笑)が、これで出揃った、というだけかもしれません。
でも、それこそがLUMIX GH7の魅力なのだと思います。
写真も動画も、どちらもハイレベルなものがこれ一台で撮れる。これまでもなかなかそんなシリーズは他に探してもなかったんですよね。GH7を手にして、「無敵だぜ!」と言いたくなる気持ち、よくわかります(笑)
もちろんRAWフォーマットの内部記録であったり、プロキシ同時収録、32bit-float録音、ARRI LogC3対応、Frame.io対応…と、新たな映像プロフェッショナル向けの機能もてんこ盛りに積んできてはいます。
当然、今主流となっているカメラに当たり前に備わっている機能ではなく、現時点でそこまでの動画性能を「デジカメの絶対条件」として求めるユーザーはまだ多くはないはずです。
現に、今回の我々のクリエイティブではそのあたりには一切触れておらず、ただただ質実剛健に、レンズのコンパクトさや、階調感の良さ、発色の良さといった、これまでLUMIXマイクロフォーサーズシリーズが積み重ねてきた基本的な部分を最大限に活かしたコンテンツ作りをしたまでなのです。
そして、今回のような、作り手としても、とても満足感のあるミュージックビデオが一本、出来あがってしまう。
はっきり言って、我々もそんなに難しいことをやっているわけではありません。GH7を手にすればすぐに、とは言いませんが、クリエイターの表現欲求にしっかり応え、結果を出してくれるカメラに仕上がっているのは間違いないと思います。
ということで、GH7、欲しくなっていただけましたでしょうか。
この記事を読んで、自分もこういうの撮ってみたいな、とか、思っていただけると嬉しいですね。
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