8台のカメラを使ったライブ撮影ワークフロー|クマザワコータロー
クリエイターが一つの作品を制作する姿にフォーカスし、そのオリジナリティを要素分類して紐解いていく「Creators Perspective」。
今回は特別編として、クマザワコータローさんのお仕事現場に密着!「8台のLUMIXを使用したライブ撮影ワークフロー」について解説いただきます!
普段の撮影と今回の撮影の違い
私は普段から、今回撮影するアイドルグループの専属カメラマンとして活動しています。
定期的に行われるライブは50名規模の会場のためワンオペ2カメ(全体をGH6、手持ちをS1H)で撮影していますが、今回は1000名規模の大きな会場での撮影だったので、日頃からLUMIXで撮影するビデオグラファーに依頼し、8台での撮影に挑みました。
撮影場所について
今回は東京都渋谷区東のライブハウス「LIQUIDROOM」で撮影を行いました。
使用機材とシステムについて
ビデオグラファーの配置と使用機材についてはこちらの図の通りです。
今回、上図のような形で撮影するにあたり、これらの機材を選択した理由も解説させていただきます。
ライブマルチカムにおけるLUMIXの優位性
1.一貫した絵作り思想
センサーサイズやカメラのモデルに関わらず絵作りが一貫しているため、複数台での撮影における調整がとても楽です。
2.長時間記録に強い
今回の撮影は1時間半だったのでまだマシな方ですが、とはいえ無制限記録ができる安心感は強いです。
3.モバイルバッテリーからのPD給電ができる
今回の撮影は現場で電源が使えなかったので、全てのカメラにおいてモバイルバッテリーからのPD給電で対応しました。
4.高解像な動画収録が可能
オーバー4Kの高解像な動画が撮影できるため、三脚固定・画角固定の動画データも、クロップして新しい素材として扱うことができます。
撮影ワークフロー
事前準備
クライアントワークにおいて何よりも大事なのが事前準備です。特にライブ撮影のような動きの多い現場では、様々な状況を想定して準備しておく必要があります。
多くの場合はセットリストが決まっているので、曲に合わせた照明やMCなどのタイミングも把握しながら、撮影や移動の立ち回りも事前に想定しておきましょう。
設定について
複数台のカメラで撮影した映像を組み合わせることを想定しているため、明るさや撮れ高に差が出ないようにカメラの設定は役割ごとに統一します。
今回は以下のように各カメラを設定しました。
フリッカーを防ぐためにSSは1/100で統一しています。また、後方のカメラはフォーカスリミッターを使用して、AFの範囲を制限しました。
光の考え方
ライブ撮影における光との付き合い方は非常に難しい課題です。
まず、ライブハウス自体がとても暗いです。多くの場合は窓もなく、照明がついていないと真っ暗で何も見えません。そのため、照明が薄暗い場合は、カメラの設定も明るくしないと十分に被写体を捉えることはできません。
そして、照明の数や色は会場によって異なり、アーティストや曲によってどのように照明が使用されるかも異なります。ライブハウス内が暗いからと言って明るく撮れる設定にしていると、照明が強くなる(=曲が盛り上がる)場面で白飛びし、被写体が見えなくなってしまう、なんてことも・・・。
この「ライブハウスの暗さ」と「照明の明るさ」の両方に対応するのが、かなり難しいんです。
これらに対応していくためにも、事前にセットリストやパフォーマンス、照明の位置も確認しながら設定を決めていきます。可能であれば会場を下見、難しければ当日リハの段階で確認しておきましょう。
撮影本番の動きについて
当日は、これまでの準備に合わせて撮影を進めていきます。何度も申し上げますが、セットリストや完成系の動画に合わせてアーティストやマネージャーと必要なカットを事前に打ち合わせ、立ち回りを決めておきましょう。
また、実際にお客様が会場に入ると、想定していた動きができないこともあります。が、今回のように複数のカメラを使用し、様々な画角で撮影しておけば万が一の撮り漏れにも対応できるでしょう。
機材以外で気をつけること
できるだけ黒い衣服を身につけましょう。
主役は舞台に立つ演者さん、そしてファンの皆様です。カメラマンが撮影中に目立ってはいけません。舞台袖や会場を移動するときに観客の視界の中で目立たないよう、できる限り暗い服装に身を包みましょう。
結果を出すためにストイックに撮影しながらも、あくまで黒子として動く心構えが大切です。
自分らしさを出す編集
ライブは、アーティストやアイドルたちにとって「生きる場所」「生き様が最も映える場所」と考えています。そのため、本来であれば写るはずのない「空気」や「感情」を復元して、常に解像度高く見せられるようなイメージで撮影、編集をしています。
最優先とされる「音楽」の他にも、「歌割り」「ダンス」「照明」「来場者の盛り上がり」「特効(Co2や銀テープなどの特殊効果)」など、ライブ中の様々な演出や要素を踏まえて、会場の熱気が伝わることを意識しましょう。
私の場合は歌割りとリズムを基本的に尊重して編集していきます。楽曲のブレイクやオカズなど、おそらく音楽クリエイターがこだわったであろう「外し」や「キメ」に対しては激しいカット割りを適用することが多いです。
振り付けに対しても同じことが言えます。ダンスのディテールが最も解像度高く見えるよう、ステップや全体のフォーメーションを見せたければフルフィギュアで、手元のディテールがより美しければアップカットで、といったように、常に最適解を導き出せるように考えながら撮影・編集します。
会場でライブを見ることができた人も、そうでない人にも楽しんでもらえる映像にしたい、肉眼で生を体験した人にはそれとは別の体験をしてもらいたい。単なる記録映像ではなく、グループのコンセプトや楽曲の世界観をビジュアルイメージとして拡張してお届けできたら、それは実に素敵なことだと信じていて動画を完成へと導いていきます。
今回撮影された動画
今回の「Creators Perspective」は以上です。
LUMIX Magazineでは「Creators Perspective」の他に、メーカーの中の人がブランド思想や本音を話す「LUMIX is」、基礎的な撮影スキルやLUMIXの機能をレクチャーする「LUMIX Ability」など、様々なコンテンツを発信しています。
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