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【Vol.4】写真家 豊田慶記氏が聞く、LUMIX S5II「深堀り」開発者インタビュー

写真家 豊田慶記氏によるLUMIX S5II開発チームとのロングインタビュー。全12回の連載を予定しています。

今回は「手ブレ補正」についてのインタビューです。

▼前回の記事はこちらから!

・聞き手:豊田慶記

・開発チーム(敬称略)
開発リーダー :中村光崇
デザイン :北出克宏
外装設計 :金田憲和
AF開発:福川浩平
AF開発:大神智洋
画質設計:栃尾貴之

ーー: 
スペックシート上ではS5とS5IIの補正効果段数は同じですが、実際に使ってみるとS5IIの方が明らかに体感が良いように思いました。 
 
櫻井: 
静止画のスペックに関しては、ボディ内手ブレ補正(以下、B.I.S.)の効果段数はどちらも約5.0段となっていますが、これはB.I.S.に用いる、ジャイロセンサーなどのデバイスを従来機から引き継いでいること、B.I.S.の機構についても従来機とほぼ同等になっていることなどが関係しております。しかし、従来機に比べてライブビューなどの制御アルゴリズムの改善は行っておりますので、B.I.S.トータルとして補正効果の強化を感じていただけたのだと思います。 
 
ーー: 
S5と同じデバイスを利用していながら、これだけ体感効果を伸ばせるのであれば、より世代の新しいデバイスを利用すれば・・・と期待してしまいます。 
 
櫻井: 
LUMIXの手ブレ補正としては、例えばGH6で採用しているような、よりハイスペックなジャイロセンサーを用い、B.I.S.のみで7.5段を実現出来るだけの技術があります。しかしながら、S5IIに沿った、サイズ、価格などの製品特徴を踏まえ、既存のデバイスを利用しつつどうすれば効果を進歩させることが出来るか?ということを重視し、性能改善に取り組んだものになります。 
 
ーー: 
チューニングでさらに改善するところを見つけられたというのは興味深いです。LUMIX全体の手ブレ補正の印象として、フレーミング操作に対しての追従性が良いのに、ブレに関してもシッカリ補正してくれるという相反する特性を持っているように感じました。 
 
櫻井: 
”ブレを止める”効果を追求しすぎてしまうと、フレーミング操作に対して追従が悪く、画面が遅れて追従してくる、という不都合が生じます。S5IIのフレーミング、および動画性能は、こういった事が無いように、撮り手の意図を汲みつつ、フレーミングを邪魔しないということを目指しています。この性能実現には、使用状況に応じた自然なフレーミングが出来るかどうか?について、地道に調整とテスト、検証をひたすらに繰り返した結果、達成しました。スペック上で表現が難しいところになりますが、このような目に見えない部分についても従来機と比べて進化を続けています。 

ーー: 
動画用に新たに搭載されたアクティブI.S.とはどのような機能になりますか? 
 
櫻井: 
動画に特化した手ブレ補正機能として、歩き撮りなど移動しながら撮影するようなシーンでの補正効果を高めた機能を導入しました。先程もお話した通りS5とほぼ同じB.I.S.のメカとジャイロセンサーを引き継ぎ採用していますが、手ブレ補正制御の仕組みを大きく変更しています。これまでは回転方向と縦方向と横方向の割合をあらかじめ割り振り、その中で補正する制御でしたが、S5IIにおいては、例えば「この人のブレのパターンは回転方向が少ない」と判断すれば縦と横方向についての制御を重視する、といった感じで状況に応じてアクティブに制御を切り替えさせています。これによって歩き撮りシーンでの効果を大きく改善することが出来ました。 
 
ーー: 
紹介動画を観ましたが、衝撃的な内容でした。 
 
櫻井: 
さらに電子手ブレ補正を併用していただければ、画角が少し狭くなりますが、より高い補正効果を期待出来ます。 
 
ーー: 
アクティブI.S.では画角への影響はないのでしょうか? 
 
櫻井: 
アクティブI.S.は物理的な補正制御なので、画角への影響はありません。 
 
ーー: 
ちなみに、アクティブI.S.の効果が最大となる焦点距離はありますか? 
 
櫻井: 
アクティブI.S.の効果は使用される撮影シーンにもよりますが、20mm~35mm付近がブレ補正性能と画質のバランスが良いと思います。 
 
ーー:
動画用の手ブレ補正機能にはさらにブーストモードがあります。これと、アクティブI.S.にはどんな違いがあるのでしょうか 
 
櫻井: 
ブーストモードでは手ブレ補正の効果を最大限に高め、とにかく手ブレを止める、というモードになり、多少のフレーミング変化では画面が動かないくらいに積極的に補正させています。 ブーストモードを含めた様々な補正モードは、シーンや好みに応じて使い分けていただければと思います。 
 
ーー: 
使いこなしについて質問があります。 三脚使用時には手ブレ補正を切ったほうが良いのでしょうか? 
 
櫻井: 
カメラが三脚使用時であると判断すれば、自動的に三脚使用時に沿った制御を行いますが、不意のブレが加わったり、振動が合った場合に、しばらく通常の補正をしてしまう場合もありますので、三脚使用時には手ブレ補正はOFFを推奨しています。

(続きます)

▼次回の記事はこちらから!(2023年3月23日より公開) 

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