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【Vol.3】写真家 豊田慶記氏が聞く、LUMIX S5II「深堀り」開発者インタビュー

写真家 豊田慶記氏によるLUMIX S5II開発チームとのロングインタビュー。全12回の連載を予定しています。

今回は、前回に引き続き「AF」についてのインタビューです。

▼前回の記事はこちらから!

・聞き手:豊田慶記 
 
・開発チーム(敬称略)
開発リーダー :中村光崇
デザイン :北出克宏
外装設計 :金田憲和
AF開発:福川浩平 
AF開発:大神智洋 
画質設計:栃尾貴之 

ーー: 
認識AFにつきまして、カメラ業界のトレンド的には、認識対象の数をアピールする傾向ですが、S5IIでは特にその数の増加がアピールされておらず、S5と同様に「人物」と「動物」となっています。これには理由がありますか? 
 
福川&大神: 
Sシリーズのユーザー層を紐解きますと、人物撮影にお使い頂いているユーザー様が多いことが挙げられます。特に動画撮影では被写体の約80%が人物ということもあり、まずは人物にトコトン合わせ切る。人物に対してはどんな状況でも精度良くAFすることに特化した目標を掲げて開発しました。

 認識対象については数ではなく安定性を重視することが撮影者にとっての利益になると考えましたので、いたずらにスペック競争に参加するのではなく、得意分野を伸ばすこと、想定されるユーザー層として人物撮影が多いことなど、総合的に判断して、この仕様としました。 

たしかに現状では認識対象の数をアピールしていません。その代わり人物認識の安定性を非常に重視しております。例えば人物が後ろを向くと頭部認識、もしくは人物認識で追従し、顔がコチラを向けば瞳認識で精度良く追従します。また、複数人物がいる場合、初めにAFさせた人物を狙い続けて他の人物にAFが乗り移りにくいようにする、新しいアルゴリズムを採用しています。 

ーー: 
認識出来る最小サイズというのはS5と比べて変わっているのでしょうか?  

福川&大神: 
従来機と比べて認識出来る最小サイズは同等となっていますが、これは検証を繰り返した結果、実使用上で同等で十分との判断に基づくものです。 

ーー: 
動物+人物の場合は動物にプライオリティがあるのでしょうか? 

大神: 
この場合は動物にプライオリティがあります。動物と人物が一緒に写り込むシーンでは、カメラ内部的にはどちらも認識しており、基本的に動物にAFさせにいきます。 

ーー: 
これらのAFに関する性能向上は新しいヴィーナスエンジンの処理能力の賜物なのでしょうか?というのも、資料上ではS5に対して約2倍という控えめな性能向上に留まっていますので「2倍でこれだけ出来るの?」という素朴な疑問が生じます。 

福川&大神: 
新しいヴィーナスエンジンの処理能力によって実現出来たものになります。パナソニックでは最低保証性能として、最低限どのくらい性能向上しているのか?という観点で公称しますので、S5とS5IIのエンジンの性能差は約2倍という控え目な公称になります。

ですが、ある部分に注目すれば2倍以上の性能向上を果たしている機能もあり、一概にどれだけ性能向上したのか?という表現が難しいという側面もあります。このように単純に性能を比較してアピールすることは困難なのですが、ハードウェアとソフトウェアの両面で処理性能と演算性能は進化・改善しており、最低でも2倍の性能改善をしている、ということをアピールしています。 

(続きます)

▼次回の記事はこちらから!(2023年3月16日より公開) 

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