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【Vol.3】表現をもっと身近に。新時代のクリエイティブを実現するフルサイズモデル「S9」、誕生。

LUMIX S9の開発チームが語る開発裏話。最終回となるVol.3では「UI・アプリ」についてお話しします。

▼前回の記事はこちらから!


リアルタイムLUTの進化点

UI設計:大塚

まずは、リアルタイムLUTについてお話しします。

S5IIより搭載されたリアルタイムLUTがご好評をいただいておりまして、新たなご要望も多く頂戴しましたので、S9では様々な面でリアルタイムLUTの強化を図りました。

大きく分けて三点になります。

リアルタイムLUTボタンの追加

リアルタイムLUTをより簡単に、身近に扱えるように、S9ではリアルタイムLUTボタンを追加しました。このボタンを押すと、ライブビューでLUTを選択できます。

これまではメニューの深いところからLUTを選択する必要がありましたが、リアルタイムLUTボタンならメニュー自体に入る必要がなく、ダイヤルを回すとLUTが変更されるため、画面に写る映像に直接LUTの効果が反映された状態を確認しながら、最適なLUTを選択することができるんです。

LUTボタン押下後の使用イメージ

一方、これまでのように一覧から選択したい方もいらっしゃると思いますので、リアルタイムLUTボタンを押した状態からDISP.ボタンを押すとLUTライブラリの一覧画面に飛べるような仕様にもしています。さらに、Qボタンを押すと元のフォトスタイルに戻れるようにもしています。

また、S5IIやG9PROIIではお買い上げ時にはLUTが登録されていない状態でお届けしておりましたが、S9では「Sample LUT」と呼ばれるLUTを3つ、既に登録されている状態でお届けします。

これにより、お買い上げからすぐにリアルタイムLUTの性能、世界観をお楽しみいただけるようになっております。

「Sample LUT」は、設計メンバーやデザインメンバー、そしてクリエイターの方にもご協力頂き、それぞれ異なる特徴を持つ3つのLUTをご用意しています。
まずはこのSample LUTでリアルタイムLUTの世界を体感頂き、その後、ご自身の色に合うLUTを探してダウンロードしたり、あるいはご自身でLUTを作成したりして、自分だけの色の表現をお楽しみ頂ければと思います。

LUTにベースとなるフォトスタイルを記憶させる機能追加

これまでの「フォトスタイル:リアルタイムLUT」はVlogがベースとなっており、S5II発売当初にLUMIX Color Labで用意されていたLUTもVlogがベースとなるものだけでした。

そこから「フォトスタイル:MY PHOTO STYLE」を活用して、Vlogのみならず、スタンダードやヴィヴィッドといったLUMIXオリジナルのフォトスタイルに対してLUTを重ねる使い方も生まれています。

また、LUT作成という観点で言えば、Vlogベースで作成するよりも、フォトスタイルをベースに作成する方が容易でもあり、開発者の想像を超える表現が次々と広がっているのだと思います。

また、使用時も設定可能なISOを下げることができるので、明るい環境でも使いやすいということもあり、LUMIX Color LabにおいてもVlog以外のフォトスタイルをベースとしたLUTも追加され、好評を頂いています。

一方で、そういった様々なフォトスタイルをベースとしたLUTをダウンロードして使用される場合、そのLUTの色表現を実現するには、ベースとなっているフォトスタイルをお客様自らで設定して頂く必要があるため、LUT毎にベースのフォトスタイルが何だったかを覚えて、LUTを変更するたびに都度設定しないといけない課題もあったんです。

急いでいる時などにはベースフォトスタイルの設定を忘れがちで、そうなるとLUTが意図した色にはなりません。

そういった背景もあり、S9からはフォトスタイルベースのLUTを選択した場合、ベースとなるフォトスタイルを自動でカメラが判定し、設定する機能を追加しました。

ただし、これはベースのフォトスタイル情報専用のタグが埋め込まれたcubeファイルのみ反映される機能となります。ちなみに、この機能を追加するにあたって実は昨年秋からLUMIX Color Labで配布されているフォトスタイルベースのLUTには、既にこのタグが埋め込まれています。

また、動画編集ソフトを使いご自身で作成されたLUTに対してもタグを埋め込んで頂くと、この機能を適用できます。埋め込むタグの詳細は、取扱説明書に記載しておりますので、オリジナルのLUTでも適用させたい方はそちらをご利用ください。

さらに、この後ご紹介する新アプリを使いご自身で作成されたLUTには、自動でこのタグが埋め込まれるように開発されています。

この機能により、LUT毎にベースのフォトスタイルを記憶して設定する手間が省かれ、本来のLUTの写りを気軽にお楽しみいただけるようになりました。

LUTの画質調整パラメータ追加

「濃度調整」使用イメージ

カメラ内にLUT適用時の画質調整パラメータを拡充しました。これにより、カメラ内でLUT効果を調整できる幅が広がります。

特にご要望が多かった「濃度調整」も今回追加されています。

これまではLUTのON/OFFのみでしたが、S9からは「10%〜100%」で調整ができるようにしました。濃くはできませんが薄めることはできるため、現場で塩梅を確かめながらLUTの効果をお楽しみいただけるでしょう。

「粒状」使用イメージ

さらに「粒状」も追加しました。

LUMIXの「粒状」、「色ノイズ」は大変好評で、ランダムノイズで一枚毎に異なるノイズが載り、フィルムのような質感を楽しめることで人気を得ております。

これまではL.クラシックネオや各種モノクローム系フォトスタイルでのみ「粒状」を選択することができましたが、S9からはLUT適用時にも載せられるようになりました。

これにより、カメラ内の設定でLUMIXの粒状を載せ、LUTによる色の変化だけでなくノイズ感も含めた効果をお楽しみいただけます。

大きな進化点としては以上の三点になります。

LUTの重ねがけが可能に!

LUT1・LUT2 使用イメージ

S9ではMY PHOTO STYLEでLUTを2つ選択できる、つまり、LUTの重ねがけが可能となり、「より自分の色を追求したい」と考えるお客様のご要望にお応えできると考えております。

さらに、MY PHOTO STYLEでも濃度調整ができるため、片方のLUTはそのままの濃さで、片方のLUTは少し薄めに、といった使い方も可能になりました。

S9、とにかくご要望があった機能をモリモリで搭載しています(笑)

従来の「破綻しない絵作り」をベースとしたフォトスタイルはもちろん、自由度が高い絵作りや撮影を楽しめるリアルタイムLUTでの撮影も、ぜひお楽しみください!

ハイブリッドズーム機能の追加

ズームレンズは、例えば遠くにいる子どもやペットを撮ったり、鳥や飛行機を撮ったりと、スマホでは撮りづらいシーンも撮れるためカメラに初めて挑戦する方にも非常に人気です。

しかし、フルサイズでズームレンズとなると、小型軽量化されたS9のボディに対して大きく、重くなってしまいます。 また、シーンによるレンズ交換も面倒ですし、そもそも標準レンズと望遠レンズを揃える必要もあります。

一方、従来よりLUMIXには、写真なら「EXズーム」、動画なら「動画撮影範囲」と呼ばれる、所謂クロップズームの機能が存在しておりますが、これらの機能はメニューから操作する必要があるため、はじめてご使用になられるお客様にとっては中々扱いづらいのではないかとも考えたんです。

そこで、「光学ズーム」と「クロップズーム」を組み合わせた「ハイブリッドズーム」を今回新たに開発しました。

ハイブリッドズーム 使用イメージ
 LUMIX S9
LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.

この機能を簡単に紹介すると、ズームリングの操作だけで、画質を劣化させずにレンズの焦点距離以上のズームを可能としています。

この機能により最大約3.1倍のズームが可能となるため、例えば LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.を使用した場合、実質28-620mm相当の焦点距離をカバーできます。

画像サイズについては、最大までズームさせた場合は新たに追加したXS相当となるため、使用用途は限られますが、それでもスマートフォンで見たりSNSに投稿するには十分な画質が担保されています。なお、ズーム倍率は小さくなりますが、最小画質サイズをMやSに変更することもできるので、ご使用用途と必要なズーム倍率に合わせて変更も可能です。動画は4KやフルHDのまま撮影可能です。

クロップズーム 使用イメージ
 LUMIX S9
LUMIX S 85mm F1.8

また、このハイブリッドズームはズームレンズを対象にしていますが、単焦点レンズでも使用できる「クロップズーム」も搭載しています。

この機能をONにすると、画面上にスライダーバーが表示されます。単焦点レンズはズームリングが無いため、リング操作はできませんが、この画面上のバーを操作することで滑らかにズームさせることができます。

一般的なクロップズームは1.4倍、2倍など段階的なズームが多いように思いますが、今回搭載の「クロップズーム」は好きな焦点距離で調整できるため、単焦点レンズがあたかもズームレンズになったように、自由にズーム効果をお楽しみいただけます。

「ハイブリッドズーム」「クロップズーム」を使用すれば、お手持ちのレンズが生まれ変わりますので、この機能を使って、よりフレキシブルに撮影ができると思います。

「LUMIX Lab」、誕生。

LUMIX Lab開発リーダー:山本

S9に合わせて新しいアプリ「LUMIX Lab」を開発しました。

このアプリのコンセプトは「自分好みの色合いで即撮影、即シェアできるアプリ」です。

開発の背景

「LUMIX Lab」開発の背景からお話しします。

これまで、「カメラの撮って出しで自分好みの色味に撮影し、それを即SNSでシェアできる機能」は夢のような機能とされていましたが、S5IIから搭載されている「リアルタイムLUT」で遂にそれを実現できるようになりました。これはLUMIXにとって大きな強みとなっています。

一方で、「LUTをカメラに取り込む」「LUTを作る」ことは、非常に難易度が高く、リアルタイムLUTは初めてカメラをお使いになられる、もしくは初めてLUMIXをお使いになられるユーザーに使っていただきたいのに、あまり活用いただけていないという課題がありました。

そこで、リアルタイムLUTをより簡単に使っていただくことを第一の目標として、今回の新アプリ開発がスタートしました。

また、LUT機能を大きく進化させたS9との組み合わせで、皆さんに使ってもらうのがベストだと判断し、当初のリリース目標から大きく前倒しをして開発に取り組むことになりました。

LUMIXのアプリとして新規の機能を多く盛り込んだこの商品開発をやりきるために、社内外問わず様々な関係者とコミュニケーションをとる機会がたくさんありました。

そのうえで立場の異なるメンバー全員の方向性を合わせることが重要でしたが、

 「自分好みの色合いで即撮影/即シェア」

このコンセプトだけは絶対にぶらさず、お客様に新しい体験価値を提供したいという共通認識はメンバー間でかなり早い段階で醸成でき、一丸となって開発を推進することができました。

「LUMIX Lab」でできること

それでは、このアプリの代表的な機能を紹介します。

LUTのダウンロード・カメラへの登録

これまで、リアルタイムLUTを使用するためには、主に以下の手順を踏む必要がありました。

①PCでLUTをダウンロード、もしくは作成
②SDカードに保存
③SDカードをカメラに差し込み、カメラを操作して登録

慣れれば簡単ですが、慣れていない方にとってはこの手順も難しく感じられ、慣れている方も何度もやり直すのは手間に感じられたかもしれません。

「LUMIX Lab」では以下の手順でカメラにLUTを登録することができます。

①アプリでLUTをダウンロード・作成し、そのまま無線通信でカメラに登録する

たったこれだけです。非常に簡単にカメラにLUTを登録することができるため、誰でも簡単にカメラでリアルタイムLUTが楽しめるようになりました。

アプリ内には、LUMIX Color Labにて配布されているLUTに加え、今回のリリースに向けて100点近くのオリジナルLUTを追加してご用意しました。もちろん、これらのLUTは全て無料でダウンロードしてご利用いただけます。

追加されたLUTは、国内だけではなくグローバル、欧州・北米・中国・その他様々な地域のクリエイターが作成したLUTです。様々な国の空気感やカルチャーによって異なる絵作りをお楽しみいただけるでしょう。

また、LUTをダウンロードする際は、自分が撮影した写真に対するLUTの適用効果(before/after)を事前に確認してからダウンロードすることもできます。

自分が普段撮影している写真が、どのような雰囲気になるのかイメージしながらLUTをダウンロードできるので、リアルタイムLUTをより楽しみやすくなると思います。

写真・動画の編集

明るさやコントラスト、色合いなどを編集できる、基本的なレタッチ機能を搭載しました。UIは誰にでもわかりやすく直感的に操作できることを意識して設計しています。

動画編集については、音源をつけたり2つ以上の動画を繋げるようなカット編集機能は実装されていません。現段階では写真・動画の基本補正ができるアプリとなります。

LUTの作成

このアプリでの実現を目指した最大の特長の一つが、LUT作成機能です。写真や動画をもとに編集した色合いをLUTとして保存し、自分だけのオリジナルLUTを作成することが可能です。

もちろん、作成したLUTはアプリを経由してカメラへ手軽に登録することもできます。

旅先で一枚写真を撮影し、編集してLUTを作り、カメラに登録して、そのままの絵作りで撮影を継続する、といったことも可能になるんです。

アプリで作成されたLUTには、自動でベースとなるフォトスタイルが登録できるため、カメラで該当のLUTを選択した場合、フォトスタイルも自動で変更される仕様となっております。

また、UIメンバーから紹介があった「LUTにフォトスタイルタグを埋め込む機能」について、動画編集ソフトで作成されたLUTをアプリに取り込むと、どのフォトスタイルのタグを埋め込むかを選択するダイアログが自動で表示されるようになっています。そのため、テキストエディタを使わずともスマホのみでタグを埋め込むことが可能です。

写真・動画の転送

既存アプリ「LUMIX Sync」でも可能な写真・動画の転送ですが、S9とLUMIX Labは5GHzの高速通信に対応しているため、よりスピーディーに転送できるよう開発しました。また、カメラとスマホアプリのペアリングの操作体系を大幅に見直し、LUMIX Syncと比べて劇的にカメラとの連携が簡単になりました。

以上が大まかな「LUMIX Lab」の紹介です。

LUMIX Syncとの違い

「LUMIX Lab」には、現時点ではリモート撮影やライブ配信をサポートする機能が備わっていません。

これらを目的に利用する場合は、既存アプリの「LUMIX Sync」をご利用ください。

現時点で確約はできませんが、今後はLUMIX Labにリモート撮影機能やライブ配信機能を実装する計画をしており、全ての機能をLUMIX Labに一元化したいと考えております。

LUMIXがお届けする、
「新しい撮影体験」がここに。

新たに開発されたLUMIX S9、LUMIX S 26mm F8、そしてLUMIX Lab。

この三点を同時にリリースし、初めてカメラをご使用になられるユーザー、LUMIXのカメラを初めてご使用になられるユーザーの方々に、新しい撮影体験をご提供したいと考えています。

我々としてもチャレンジングな試みを取り入れたカメラ、レンズ、アプリをぜひ、皆様にお楽しみいただけると幸いです。

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