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lumikka original|フィンランドコラム

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lumikkaがお届けするコラムシリーズ。雪の結晶のような小さな視点から日常を見つめ、そこで発見した美しき風景や思考をお届けします。
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#北欧

ヘルシンキの壁と窓

中と外、家と街。 それらに境界線を引く「壁」と、繋ぐ「窓」。 相反するような「壁と窓」ですが、街側から見ればそれらはひとつの平面で、街の生活の背景として日常に溶け込みます。 街の風景は壁と窓がつくる。と言っても過言ではないかもしれません。 今回は、ヘルシンキで壁と窓を探す旅に出かけます。 西の港の方の壁と窓。この地区は、ヘルシンキの中心部と違って新しい建物が多く、どれも似たような雰囲気をしています。 軒がなく、全体的にすっきりとしているところも特徴的。 続いて、

ヒエタニエミの空に

黄昏の時間はゆっくりと流れる。 まるで、その美しい光のなかで囚われているように。 揺れる波、唄う鳥、ヒエタニエミの水平線。 夜の10時30分ころ。ヘルシンキの街から西に向かって——夕日の方へと歩き始めました。ビルの窓ガラスは斜めの光を鋭く反射して、低い空に浮かぶ白い月はちょうど半円を描いています。 大きな墓地の横を通り抜け、さらにしばらく歩くと穏やかな水の平面が見えてきます。 おだやかな。それはそれは、おだやかな。 まっさらな新雪の上を歩くかのように、鴨たちは、少し

夏至の夜散歩

沈まない太陽、北欧の夏。 午後10時に家を出て、ぼんやりとしたオレンジのなかメトロに乗って近くの島へ。その夕暮れは、永遠に終わりがこないのではないかと思えるほどに穏やかで、静かなものでした。 2023年6月21日のこと。 夏至の夜、ヘルシンキの島への散歩で見た/見つけた風景を今回はお届けします。 . . . 家を出たのはちょうど夜の10時ころ。夜を時間で定義するのならばそれは確かに夜でしたが、人の感覚に委ねるのであれば、それはまだ遅すぎる昼のようでした。 少し

lumikka 1st Anniversary

一年前の春、2022年4月15日のこと。 かつてフィンランドのアアルト大学へ留学をしていた私たちは、滞在中に見つけた美しいヴィンテージアイテムたちを携えて、lumikka online shopをオープンしました。 "過去に視点を、未来へかたちを与えること" 私たちの活動は、つねに過去と未来の双方へと向かっています。新しい何かを創り出すことと、歴史に視点を与えること。そのどちらも等しく価値があると考えており、ヴィンテージ品の販売から、撮影や執筆、リサーチやビジュアライズ

アラビアで輝く宝物

TRANSIT58号 フィンランド特集。私たちlumikkaは、取材記事「北の地に生るデザイン」を担当しています。本記事には美術館や工房への訪問、建築家やデザイナーへのインタビューなど、デザインをめぐる旅の様子が綴られています。 前回のコラムから引き続き、記事に掲載しきれなかった取材の溢れ話や旅の記録をじっくりとご紹介していこうと思います。ぜひ、TRANSITの記事と合わせてご覧ください。 今回は、イッタラ&アラビア デザインセンターへの旅を。 イッタラ&アラビア 19

イッタラ村に輝く宝石

TRANSIT58号 フィンランド特集。私たちlumikkaは、取材記事「北の地に生るデザイン」を担当しています。本記事には美術館や工房への訪問、建築家やデザイナーへのインタビューなど、デザインをめぐる旅の様子が綴られています。 今回のコラムからは、記事に掲載しきれなかった取材の溢れ話や旅の記録をじっくりとご紹介していこうと思います。ぜひ、TRANSITの記事と合わせてご覧ください。 今回は、フィンランドを代表するデザインブランドIittala / イッタラのはじまりの場

雪の結晶のように

こんにちは、lumikkaです。 わたしたちは、フィンランドのアアルト大学でデザインを学んだふたりによるデザインユニットで、現在は日本とフィンランドのデザイン、或いはその関係性のリサーチを中心に活動を行なっています。 また、それらの活動の第一歩として、フィンランドのヴィンテージ品を取り扱うオンラインショプを4/15にオープンしています。 わたしたちの活動やお店については、インスタグラムにて随時お知らせをしているのですが、より深く、より分かりやすく、そして確かな手触りを伴