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LAPUAN KANKURIT|フィンランドコラム

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フィンランドのテキスタイルブランドLAPUAN KANKURITさんのnoteにて、「Design&Art」シリーズを寄稿しています。写真と言葉による新たな視点をお届けします。
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#コラム

Design&Art|Colors in Finland 〈05.レッド〉

フィンランドの「色」が織りなす風景をご紹介する「Colors in Finland」シリーズ。今回はクランベリーパウダーの赤色を出発点に、人やモノ、都市から自然まで、様々な風景をお届けします。 赤から連想されるもの。たとえば森のベリーや野花、街中の信号やポスト。紅葉や提灯、鳥居など。空の青や木々の緑と違って、赤は「面」というより「点」として存在していることが多く、他の色よりも目立つ存在・特別な状態なものとして感じられます。 「赤」とは、他の色とはすこしだけ距離のある、わず

Design&Art|Colors in Finland 〈03.イエロー〉

フィンランドの「色」が織りなす風景をご紹介する「Colors in Finland」シリーズ。今回は、道端で見つけた野花の黄色を出発点に、様々な風景をお届けします。 自然界には数多の色がありますが、その中でも黄色のもつ明るさ、ポップな印象は唯一無二です。花びらの黄色は、時に希望の象徴としての意味を持つものです。 ヘルシンキの街には緑色のトラムと青色のバス、そしてオレンジ色のメトロが走っていますが、古都トゥルクでは黄色のバスが街の風景を彩ります。 バスのなか。手すりの色が

Design&Art|Colors in Finland 〈02.グリーン〉

フィンランドの「色」が織りなす風景をご紹介する「Colors in Finland」シリーズ。今回は、サーモンスープなどでお馴染みのハーブ、「ディル」の緑を出発点に、様々な風景をお届けします。 フィンランドではじめてサーモンスープを食べた時、「なんだか森の香りがする」と思ったことを今でも鮮明に覚えています。パクチーほどの刺激はなく、ネギのように馴染み深い香りでもなく、不思議な、けれどフィンランドの森の空気をほのかに感じるさわやかな香りでした。 フィンランドといえば国旗に見

Design&Art|Colors in Finland 〈01.ブルー〉

世界は光に、そして色にあふれています。 色は時に人の感情を大きく揺さぶり、また過去の記憶を、遠い風景を思い起こさせてくれるものです。ゆえに、芸術において「色」はつねに重要な役割を担いつづけ、それは絵画でも、映画でも、舞台でも、そしてデザインでも同じことでしょう。 新たに始まるコラムシリーズ「Colors in Finland」では、フィンランドの「色」に焦点を当てて、色が織りなす風景・物語をご紹介していこうと思います。 今回は、フィンランドの夏の風物詩「ブルーベリー」の

Design&Art|デザインを覗く 〈12.人間と自然〉

「自然」という言葉には、ふたつの意味があります。 ひとつは、「人工」の対義語としての自然。これは空や海、木々や海など人間の手が加えられていない対象を示しており、日常生活でよく使われている言葉です。 もうひとつは、「状態」を指し示す言葉としての自然。こちらは自然物・人工物に関係なく、自然(体)な状態にある様々な対象に対して使われています。 わかりやすく分類すると、これらは英語の「Nature / ネイチャー」と「Natural / ナチュラル」の違い、つまり名詞と形容詞の

Design&Art|デザインを覗く 〈11.青い光の街〉

“the blue of our lakes and the white snow of our winters” フィンランドの色彩を綴ったひとつの詩。 これは、青い十字の国旗を表す言葉でもあるそうです。 ヘルシンキの街には、青い風景が溢れています。 陸地に点在する湖はもちろん、南のバルト海や頭上に広がる大きな空。ひと言で定義することのできない美しい青のグラデーションが街の風景を彩ります。 水平方向に広がる水の青と、垂直方向に広がる空の青。広大なふたつの「青」を日常

Design&Art|デザインを覗く 〈08.自然と空想〉

夕日は微笑み、雲は自由に空を散歩する ——。 私たちの生きるこの惑星には空があり、光があり、風があり、そして生命たちは絶えずうつろいでいます。時に、光は微笑むような表情をつくり、風は呼吸をするように行き交い、そして雲は散歩をするように空を流れています。 このように、自然物を含めた万物に生命が宿っていると考えることを「アニミズム(animism)」と言います。これは、人類学者のエドワード・B.タイラーが提唱したもので、元を辿ると霊魂を意味するラテン語のanimaに由来します

Design&Art|デザインを覗く 〈07.春色の彩り〉

おどる春風、新たな季節の訪れに——。 多くの地域で桜が春を運んできてくれる頃。北の地域ではやっとこれから桜が咲き始める、そんな頃合いでしょうか。 夏から秋への移り変わりはセンチメンタルで、どこか切ない気持ちになりますが、冬から春へと向かうこの季節は朗らかで、エモーショナルなものです。それは、寒い冬を越してまた新たに花を咲かせる草木たちに、これからの自分の姿を重ねてしまうからでしょうか。卒業式の頃に咲き始め、入学式の頃に満開を迎える日本の桜の姿は、まるで私たちの出会いと別れ

Design&Art|デザインを覗く 〈06.日常から風景へ〉

“If a tree falls in a forest and no one is around to hear it, does it make a sound?” 「誰もいない森で木が倒れたら、音はするのか?」 この一文は、とある哲学者による問いかけです。曰く、答えはノーであると。もちろん解釈は人それぞれですが、この問いは「存在することとは、知覚されることである」というひとつの哲学的な思想を意味しています。(気になる方は“George Berkeley”で調べてみて