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断崖絶壁に建つ国宝に会いに。 三徳山入峰修行 / 鳥取②

2022.05.24
こんにちは。
今日はお山に登ります。向かったのは三徳山三佛寺。ここに来たかったのは、断崖絶壁に立つ「投入堂(なげいれどう)」を見たかったのと、役小角(えんのおづぬ)の足跡を辿りたかったから。

役小角


役小角。最初にその存在を知ったのは大学の時。
日本独自の山岳信仰である修験道の開祖とされる役小角は、7世紀に生きた人。大和国の葛城山で活動し、呪術を用いたとか、空を飛んだとか、不老不死になったとか…云々。

入山したらいただいたのが平安時代最強と言われた「角大師護符」。護ってくれてありがとう。

役小角と朝廷との対立は「続日本紀」と「日本霊異記」に記されています。妖術を使い人々を惑わせた、という罪で役小角を捕らえようとした朝廷ですが、役小角はなかなか捕まりません。そこで朝廷は役小角の母を人質にとるという手段に出ます。止むを得ず役小角は自ら出頭し、伊豆大島に流されてしまいます。

いつの世も権力者が恐れるのは、コントロール下におけない自由で自立している人たち。

三徳山入峰修行


慶雲三年(706)役小角が三弁の蓮花を散らしたところ、その一弁がここに落ちたので堂宇を建て「修験の行場」にしたと言われています。

赤いルートを登って投入堂まで行きます。

そう、ここは修行の場。なので、奥の院である投入堂への登山は「三徳山入峰修行」と呼ばれています。

山道や木の根を傷める為、金具の付いていない登山靴必須。入山許可が下りなかった時はわらじに履き替えます。
わらじってぬかるんだ道に威力を発揮するんだって。

そして必ず輪袈裟(わげさ)をして参拝すること。
「六根清浄」。六根とは「眼・耳・鼻・舌・身・意」の意味。見なくてもいいものを見たり、言わなくてもいいことを言ってしまったり…日常生活で染み付いてしまった穢れを浄化する為の修行。

宿入橋


朱色の宿入橋を渡るともうこの世ではありません。
登山道入り口から投入堂まで約1km、約200mの標高差の山道へ。
行ってきまーす!

カズラ坂


最初の難関、カズラ坂。根っこを傷めないようにそっと手を掛けて登ります。

クサリ坂


そしてクサリ坂。

ここまで一気に登ってきたので結構息が切れてる。
「文殊堂(国指定重要文化財)」までもう一息。

文殊堂


文殊堂に到着。靴を脱いで、と。わー絶景!!!

60cm程の幅…。足がすくむかと思いきや、スタスタ歩けた。さっきまでの息切れもスーッと引いたし。あら不思議。

でも端っこには座れず。
空気が物凄く透明で、緑の生命力も力強く、感覚がクリアに研ぎ澄まされていく感じでした。

苔たちがカワイかった。

地蔵堂

地蔵堂(国指定重要文化財)へ向かいます。鎖を伝って、

見上げると地蔵堂が。

到着〜

トコトコ一周。先ほどの文殊堂とこの地蔵堂、室町時代後期の建築と推定されているそうです。

鐘楼堂

鎌倉時代の建築とされる鐘楼堂。天とお山に向けて「これからお参りいたします」という合図になるんだそう。ゴーン。
しかし2tもの重さの鐘をどうやってここまで運んだのか…解体して組み立てたの??

茶色の虫さん、こんにちは。

観音堂


天保5年(1648)鳥取藩主 池田光仲により再建された「観音堂(県指定保護文化財)」。

胎内くぐり。昼間でも真っ暗なお堂の裏側をぐるりとまわって

投入堂


山道を曲がると、眼前に投入堂が。こんなに瀟洒で優美で荘厳な建築物って…初めて。ひれ伏す。

写真家 土門拳は「わたしは日本第一の建築は?と問われたら、三佛寺投入堂をあげるに躊躇しないであろう。」と著書の中で表わしています。

天然の窪みを利用して建立されたという投入堂。覆いかぶさるのは安山岩溶岩。柱状節理ですねー

お堂を支える華奢な柱は八角形。なんて美意識!
しかし、なぜここに、なぜこの方角で建てられているのか、そして施工方法等、今でも多くの謎を内包しているといいます。

役行者が三徳山を訪れた時、その山のふもとでお堂をつくりました。役行者は法力でお堂を手のひらに乗るほどに小さくし、大きな掛け声と共に断崖絶壁にある岩窟に投入れたと言われています。このことから「投入堂」と呼ばれるようになりました。

三徳山三佛寺

この建物の前に立つとこんな伝説も信じられる。荒唐無稽とか不思議とか。今の文明が最先端で昔は劣っていた、というのは思い込みなのではと思ってしまう。超古代では当たり前だった能力や技術が失われ、忘れ去られただけなのかもしれない。
音で物を移動させられたかもしれないし、光で治療できたかもしれないし、動植物と心を通わせるのも当たり前だったかもしれない。
私たちはそんな能力が退化してることも気付かず過ごしているのかも。
この場にいるとそんなことを考えさせられる。

自分の直感を丁寧に拾い、常識の外に意識を向けた者が仙人と呼ばれる超人だったのかも。

素晴らしいのが周りとの一体感。石も植物も虫も人も建物も、すべて自然の一部。日本人の持つ感性を体現している投入堂。

パワースポットと呼ばれるところで何も感じ取れない私ですが、ここは違いました。

険しい道を歩くと自然に目の前のことに集中する。今だけになる。未来を心配せず、過去を後悔せず、今を楽しむ。エネルギーは今にしか存在しないのよね。
神道の真髄である「今中」がほんの少しわかったような気がしました。

緑の美しかったこと!

帰りの観音堂、なんだか視え方が違った。

馬の背を抜けて
文殊堂が見えてきましたー
帰りは軽快に下りる〜
みんなが掴む木の根っこがツルツルになってました。

おー現世に戻ってきた。なんだか身体が軽いわ。

往復約1時間半。冷たい水が最高に美味しかった。

もっと投入堂のことが知りたくなり「投入堂 解けた謎。深まる謎。」を購入。建築家 生田明夫さんが40年を費やした研究の集大成です。
地道にコツコツと集めた資料、それによって得られた自らの見解を「次の世代への手紙」として惜しげも無く纏め、公開して下さっています。

本を手にした時、じんわりと涙が出てきました。この方の誠実さと「投入堂」にかけた情熱が伝わってきて。
気になるのはその空間構成。

後の世の人々に伝えるべき大切な「何か」を発している投入堂。文字や絵ではなく「感じる」という手法で。
本当に大切なことって言葉になる前の何か。うまく言えないけど、感覚的にスッとわかること。そんな気がしています。

凛々しく建ち、真っ直ぐに語りかけてくる投入堂。まさに国の宝。
また必ず修行に来ます!

続く






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