見出し画像

小さく気高いフルーツパーラー。 横浜・北仲「水信フルーツパーラー」

こんにちは。
「水信フルーツパーラーに行きませんか?」という嬉しいお誘いをいただき、早速。

新しい横浜市庁舎向かいの「KITANAKA BRICK&WHITE」内にある水信のフルーツパーラー。いつも前を車で通り過ぎるだけで、なかなか訪れる機会がなかったので嬉しい。
だって、ここは水戸岡 鋭治さんが内装を手掛けているから!

「水信(みずのぶ)」は大正4年(1915年)、初代加藤信明が横浜で台湾バナナ加工卸問屋「水信商店」を創業したことが始まり。
横浜で果物、といえば水信。ジョイナス本店の前を通るといつも爽やかで甘い香りに誘われます。

多くの列車デザインを手掛けられてきた水戸岡 鋭治さんの内装。やはり動いていました!

旅情を誘う駅舎を思わせるアーチ型の天井。

オルセー美術館ですな〜ギュスターヴ・エッフェルの鉄骨設計、ホーチミンの中央郵便局を思い出す。
(記事「ホーチミン歩き ベトナム旅行記②」)

今まで僕が多く手がけてきた列車の場合は、移動して景色が変わっていくということが、一番素晴らしくて価値があるんですね。ですから、いかに窓をデザインするかがテーマで、いい窓=額縁を作って、景色という絵が次々と変わっていくのが理想なんです。
それに対し、店舗は景色は変わらないから、いかにして変化をつけるかを考えます。
例えば、最初はパフェを食べに行き、その時に何か漠然としたものが記憶に残っていて、その次に行くと「ああ、床も壁もシートも全部デザインが違う」と気づく。

水信フルーツパーラー

天橋立駅で出会った、水戸岡 鋭治さんデザインの特急列車「丹後の海」が浮かぶ。
(記事「天橋立〜舟屋 / 海の京都③」)

床も

椅子のファブリックも

壁のデザインも異なる。

組子の職人の手仕事による仕切り扉。美しくてじんわりとしてくる。

現代では手間隙がかかってしまう作業、古今東西の世界のデザインの様式を採り入れるような圧倒的に手間のかかるものは、いちばん嫌がられます。
それに比べ、この店は50年使うということを前提にして作ってあります。
デザインというのはセンスだけでなく、職人・作る人の手間隙、情熱・エネルギーというものが入っていることを、お客様は感じるんですね。

水信フルーツパーラー

教会風のコーナーには金色の鳥の巣箱。

内装は一見ヨーロッパ風、そこに日本や中国などアジアの柄が入ってきたり。デザインは一つひとつ全部違って、既製品は一つもありません。
照明器具も、椅子、テーブルも、全部がこの店のために作ったもの。天井のステンドグラスから、壁の装飾の模様もすべてをデザインして、オリジナルで製作しています。

水信フルーツパーラー

列車な照明。動いてる。

ウェス・アンダーソン手掛けたブリティッシュプルマンの内装デザインを思い出した。列車の旅がしたくなるー

で、お目当は大好きフルーツサンド。水分を適度に含んだパンの柔らかさ、フルーツとの相性の良いクリームのかたさ。美味!

今回のフルーツサンドは山形産のオーロラという洋梨。トロリとした滑らかな食感でした。

決して広くない、狭いけれどぎゅっと密度を上げて作ってあることは、わかる人にはきっと伝わる。建築物やデザインが好き、豊かな空間を使ったことがある、そういう人たちがくれば、この良さが、手間隙が理解できると思います。

水信フルーツパーラー

「わかる人には伝わる」
これでいい。これがいい。大きく広げる必要はない。同じような意識、感覚を有する人たちが共感し、嬉しい気持ちで満たされる空間。

この内装を見て、着て行くものを考えた。会った途端納得。ふたりとも偶然マリア・グラツィアの絨毯のようなファブリックだった。

誇り。
自分の仕事、自分の好き、自分に纏わることにかける情熱。それは突き詰めれば、自分をどれだけ信頼し愛し満たしているかということに繋がる。
この内装の中で美味しい体験をして思った。
遅くまでそんなことを話し、帰宅後水戸岡 鋭治さんのインタビューを読み返した。

お客様からいただいた儲けは、お客様に還元しなければいけません。しかし、世の中にはそういうことを考えないビジネスばかりが多くなっています。
長い間お客様にご愛顧いただいた老舗だからこそ、クオリティーの高い物を提供していく。この店は、そういう形で老舗のプライドが表現されています。
こんなに小さい空間に大きなお金をかけても儲からない、ではなくて、ここは「水信のフラッグシップ」。これが水信の考えるサービスであり、店作りであり、考え方であるということを表現した時、こうなるという店なんですね。
昔の一流ホテルなどには、こういう手のかかった造りがありましたが、今はこんな面倒な仕事をするところは一切ありません。
世界を旅して良いものを知っているような方たちが、ここを知れば使ってくださる。わからない人には高くても、わかる人にとってこの値段でこの空間は安いと思えるし、そう感じてくださる人はたくさんいると思います。
とにかく実際に来て見て、素晴らしさを感じていただきたい。お客様には一度は来て、最高のサービス、料理をこの空間で楽しんでみていただきたいと思います。

水信フルーツパーラー

小さく気高いフルーツパーラー。
また来ます!今度はパフェをいただきに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?