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ディスバイオシス

ディスバイオシス(dysbiosis)とは、

常在菌の多様性が無くなる、宿主に対し常在菌の共生が上手くできていない状態を「ディスバイオシス:Dysbiosis」と呼びます。

私たちに共生している常在菌は、身体のあらゆる体表面に固有のバランスを保ちながら定着しています。特に腸内細菌は、私たちの健康や生命機能を維持しているともいわれています

便宜上「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」とよく言われますが、そのような細菌は実際には存在しません。

私たちが健康でいられるのは、善玉も悪玉も含めた多種多様な細菌たちが私たちのオナカの中で複雑に相互作用しながら一つの生態系を作り出しているのです。これは、私たち人間社会や、地球と共生している人間も含めたあらゆる生き物の生態系と同じです。

この腸内に多様な細菌が共存共栄している状態を「シンバイオシス:Symbiosis」と呼びます。

ディスバイオシスは様々な疾患と相関関係

このディスバイオシスと免疫(アレルギー・自己免疫疾患)、腸(炎症性腸疾患・過敏性腸症候群・大腸がんなど)、神経(うつ病、自閉症、パーキンソン病など)、代謝(肥満、糖尿病、動脈硬化症、脂肪肝・肝がん)など様々な領域の疾患と相関関係がある*(1)-(12)ことも判明しています。つまり、私たちの腸内フローラは多様性が最も大事だということです。

そして、このディスバイオシスの原因として、抗菌薬やプロトンポンプ阻害薬※などの薬剤や、欧米型の食事、環境因子などの種々の要因が考えられています。

※プロトンポンプ阻害薬:胃内において胃酸分泌を抑え、胃潰瘍などを治療し逆流性食道炎に伴う痛みや胸やけなどを和らげる薬(出典:日経メディカル処方薬事典)

欧米型の食事は、食物繊維などの難消化性食物成分が少なく、脂肪が多く含まれているため、腸内常在菌の短鎖脂肪酸の産生のもととなるルミナコイドが不足しています。

短鎖脂肪酸は、大腸のエネルギー源の95%をも占め、腸内の抗炎症作用を発揮し、病原体から腸管を防衛する働きもあるため、日本人の腸内の健康状態を保つためにも、薬剤を避けるだけでなく、ルミナコイドの豊富な食事も重要性と言えます。*(13)(14)

出典:
*(1) “Terminal restriction fragment length polymorphism analysis of the diversity of fecal microbiota in patients with ulcerative colitis.” Inflamm Bowel Dis 13: 955-962, 2007.
*(2) “Multicenter analysis of fecal microbiota profiles in Japanese patients with Crohn's disease.” Gastroenterol 47: 1298-1307, 2012.
*(3) “Microbial community analysis reveals high level phylogenetic alterations in the overall gastrointestinal microbiota of diarrhoea-predominant irritable bowel syndrome sufferers.” BMC Gastroenterol 9: 95, 2009.
*(4) “Luminal and mucosal- associated intestinal microbiota in patients with diarrhea- predominant irritable bowel syndrome.” Gut Pathog 2: 19, 2010.
*(5) “Microbial ecology: human gut microbes associated with obesity.” Nature 444: 1022-1023, 2006.
*(6) “Transfer of intestinal microbiota from lean donors increases insulin sensitivity in individuals with metabolic syndrome.” Gastroenterology 143: 913-916 e917, 2012.
*(7) “Dominant and diet- responsive groups of bacteria within the human colonic microbiota.” ISME J 5: 220-230, 2011.
*(8) “Delayed gut microbiota development in high-risk for asthma infants is temporarily modifiable by Lactobacillus supplementation.” Nat Commun 9: 707,2018.
*(9) “Gut flora metabolism of phosphatidylcholine promotes cardiovascular disease.” Nature 472: 57-63, 2011.
*(10) 「腸内細菌叢の消化管疾患への関与」モダンメ ディア 2014 ; 60 : 325−331.
*(11) 「腸内細菌と過敏性腸症候群」日消誌 2015 ; 112 : 1956−1965.
*(12) 「自己免疫疾患と腸内細菌」第20回腸内細菌学会シンポジウム2-1
*(13) 「特集 腸内細菌叢からみた経腸栄養療法・腸内細菌叢とdysbiosis」日本静脈経腸栄養学会誌35(5):1099-1104:2018
*(14) The microbiome in infectious disease and inflammation. Annu. Rev. Immunol., 30, 759-795 (2012)

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