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作品の中で生き続けるということ「コンフィデンスマンJP〜プリンセス編〜」

初日に観にいった。「コンフィデンスマンJP プリンセス編」

今回は「本物も偽物もない。信じればそれが真実」という詐欺師にとっては信条であるかのようなセリフが、後の結末を予感させるストーリー。

ダー子たちの今回のおさかなちゃんは、世界的大富豪であるフウ家。実は先ごろ亡くなった当主は、遺言として3人の実子ではなく愛人との間にできた子供「ミシェル・フウ」に全財産と跡取りになる権利を譲ると記していたのだ。ミシェルという名は一族が誰も知るところのない存在だったため、財産を狙って世界中から「我こそミシェル」と名乗りを上げる輩たちが次々と出てくる始末。偽物ミシェルがことごとく蹴落とされていく中、ダー子たちもフウ家に潜り込みミシェルを仕立て上げることで、大金をせしめようと企む。

いつもの「コンフィデンスマンJP」の世界が満載で、過去様々にダー子たちと因縁を持った人々が出演しているのだけれど、中でも前回の映画出演からダー子と一時は恋仲だった?と噂される天才結婚詐欺師のジェシーの登場は感慨深いものがあった。

演じるのは三浦春馬さん。前回はダー子にまんまとやられてしまう役どころで、同じくダー子たちに並々ならぬ執着を持つヤクザ赤星(江口洋介)に睨まれことになった。

その弱みから、今回はダー子に協力することになる、ということで全体からすると登場シーンはさほど多くはないけれど、相変わらず真っ赤なスーツの似合う、性根からの女たらし役を演じていた。

彼のことについては何が真実なのか何が虚構なのか、どこまでが周囲が作り上げた感動話なのか区別できないし、することは永遠にないだろうから差し控えるとしても、スクリーンの中の彼は完璧な容姿で指名された役柄を堂々とこなしていて、一連の報道が本当なのかわからなくなるほどだった。

時々、老齢の俳優さんでも作品が繰り返し放送されたり、収録していた作品が何が原因なのか数年後に放送されたりすることもあって、ご存命なのか亡くなったのかわからなくなる時がある。

作品の中で生き続ける、と一口に言ってしまうと何かしら軽々しい表現になってしまうけれど、確かにそこにいて生きて仕事をした、表現した、という事実がパッケージされて存在し続けるということに、特異さと格別なものを感じる。

作品の中の記録されたものは永遠にその瞬間であり続ける。

その後にどんな人生を歩み、どんなふうに歳を重ね、見た目や中身が成長したり衰えたりしようとも、瞬間瞬間が刻まれている証拠がある。

一般人である私たちも、煌めく瞬間を写真や動画で残そうと日々記録している。

ただそれはあくまでも私的なことに限られていて、俳優たちのように自分の意図するところだろうがしなかろうが、不特定多数に拡散されることが目的である場所に存在し続けるということは、ある意味責任感を伴うものだし、無責任になろうと思えばどこまでもなれるものだと思う。

「私たちはなりたいものになれる。何だってなれる」

詐欺師を生きる術とし、生きがいであるダー子は柔軟に天才的に自分の役割を変えながら、たくましくしたたかに生きている。

作品はコメディなので、トーンはあくまでも明るく軽く、シリーズを通して観ているこちらからすると、後半怒涛に畳み掛けられる「ネタバラシ」はほとんど想定の範囲内だったけど(最後のオチは別として)、「本物か偽物もない。信じればそれが真実」という言葉は、世の中に対する警告も含めたメッセージなのではないかと感じた。

作品の中で展開する舞台は大富豪の豪邸、パーティーであるゆえにスクリーンいっぱいに煌びやかさがあって、自粛ムードが高まる中でスカッとする思いもあった。今はとても行ける気がしない、シンガポールやマレーシアの異国情緒あふれる光景も目の保養。

この作品に共通して言えることだけれど、エンドロールが終わってからが案外重要だったりするので、どうか席を立たずにそのままで。

それにしても、大きな財を成す、ということは想像以上に自分がいなくなった後のことを散々心配しなければならないのだろうな。

【追記】私の行った「TOHOシネマズ」では劇場に入る前に検温ポイントがあり、マスクの有無は厳しくチェック。座席も完全予約制で隣り合わせでは取れないようになっていた。今は公開作品が少ないこともあって、3つのスクリーンで上映されていたため、部屋の広さや席数も好みで選べるし、時間も20分刻みくらいのイメージで自由に選択可能でそれも良かった。密閉空間だし、定番のポップコーンや飲み物は販売されているのでマスクしても無意味と感じるなど、当然心情的に行きたくないと思われる方もいるとは思うしそれには何ら異議も何もないけれど、私個人の印象としては最大限の努力はしている、だった。あとはそれぞれの考えで行動すればいいと思う。




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