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見られる時に見よ、タイドラマの名作「The Shipper」

6月も半ば、この記事を書いた↓。
ここ数ヶ月、布教シートなるもので「The Shipperっていうタイドラマがすごくいいから見て!」という呟きなどを見かけた方も多いのではないか。
その呟きを横目に見ながら「その通り!」と思っていたのでさらに強調すべくこの記事を書く。
今は「YouTube」で日本語字幕付きで見られるこの天国な状況(名作が次々とジオブロックされていく世の中・・・)、気になるかたはとにかく今すぐチェックしてほしい。

ともかく、ポスター?ビジュアル?を見る限りラブコメという印象がやや強めと想像するだろう。

ところが、である。

これが中盤くらいから「実はすごい深い話だ・・・」となり、毎週楽しみに日本語字幕がつくのを今か今かと待ちわびてようやく見られた暁には、もう次週がたまらなく待ち遠しくなっていた。

そして先日公開されたEP12の最終回では、号泣していた!!!

タイドラマと言えば、ジャンルとすればBLが人気である。それを入り口に「タイ沼」にハマった方も多いのではないか。私も他ならぬそのうちの一人。

ところが、この「The Shipper」は腐女子が妄想するカップル(推しカプ=シップ)が出てきて彼らが中心人物となるものの、実はBL要素はストーリーにまぶされるふりかけ程度にとどまる。
最後まで見ると、男女の愛、家族愛、友情、そしていろんなものを超越した人間愛、とあらゆる要素を取り込んだ、大きい「愛」の話だったとわかる。

ここでストーリーのおさらいをしよう。

PanとSodaは、高校一の秀才であるP'Kimとスポーツ万能だが学校一の不良であるP'Wayの2人が一緒にいるのが大好き。暇さえあれば、2人がカップルになる妄想小説を共同執筆し楽しんでいる。
ただ実際はそううまくいかず、P'Wayにはモデルばりの美人でスレンダーな彼女がいるし、そのP'WayはPanたちの妄想小説が元で起こった騒動により退学の危機に。
罪の意識を感じたPanはP'Kimに謝りに行くが、その時事故に巻き込まれ2人は気づけば天国の入り口に立っていた。
手違いだと死の天使からこの世に戻された2人だったが、目覚めたらPanとP'Kimはそっくり体が入れ替わっていた!

ポイントになるのが、この「入れ替わり」という現象。それにより、PanはP'Kimとなり、これまで憧れの目で見ていた彼の生活を垣間見ることになる。そこで知ったことはP'Wayの恋人にふさわしいと信じていた彼とはかけ離れていた。
コメディ要素もあるこのドラマを、登場人物から見てみようと思う。

弟Knetと兄P'Kim

PanとSodaの妄想小説に割り込んでは邪魔をするKhetは、授業中いつも寝ているし、よくサボっている劣等生。3人でつるむことも多かったけれど、実はKhetがあの学校一秀才と名高いP'Kimの弟であることは、Panは全く知らなかった。
実は一緒の家に住んでいながらほとんど会話もなく、2人は絶縁状態。
そして実はKhetが学校をよくさぼっていたのは、将来の夢のためだった。
PanとなったP'Kimは以前とは別人のようで、Khetと打ち解けるようになっていく。その変化に戸惑いながらも、Khetは徐々にP'Kimに心を開く。
それもそのはず、KhetはPanに恋をしていて、兄への長年の思いと現在の恋心とが相まって、複雑な心境になっていたのだ。

そのKhetのスマホの待ち受け画面。これをP'Wayに偶然知られてしまい、「好きでもない子を待ち受けなんかにするはずがない」とからかわれる。

これすごいいい写真だし、こんな風に片想いしている男子高校生。かわいすぎる!!Khetの夢は、このPanのためでもあるところがまた健気。

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弟のKhetを演じるのは、Ohmくん。鼻筋がすっと通っているイケメンくんで、スタイルもすごくいい!Panへの一途な想いが胸を打つ演技が光る。

深い絆で繋がっているP'WayとP'Kim

P'WayとP'Kimはいつもつるんでいる友人同士。ただ退学にリーチがかかる不良と学校中が期待する秀才とでは全く釣り合っていないのだが、物語終盤ではどうやって2人が仲良くなったのか、P'KimがP'Wayを何度も救う理由がわかる。
中身がPanであるP'Kimに、P'Wayはようやく気付いた胸の内を告白するのだが、それは深い深い2人の歴史を物語るもので、PanはP'WayにとってP'Kimがどれだけ必要な人なのかを悟り苦しむ。

弟Khetに待ち受け画面のことをからかいながら、P'Wayは逆に自分の気持ちにも気づかされる。
彼が無意識に待ち受け画面にしていたのはこの写真。Kimと戯れる姿がすごくいい。

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彼は何となく付き合っていた彼女と別れを告げる決意をするが、それがまた新たな騒動を引き起こす。

Wayを演じるのはFlukeくん。やんちゃな不良がよく似合うけど前髪を下ろすと全然雰囲気変わるんだよな。お初の役者さんなので次何を演じるのか楽しみ。

Panと周囲の人々

P'Kimの外見で日々を過ごすことになったPanは、これまで知らなかった事実を知るたびにP'Kimに失望する。
そんな彼女自身も抱える問題があり、一番は義父との関係。母親の再婚相手である父は母親の死後も約束だからと自分を育ててくれているが、金銭面でも精神面でも重荷になっていることが気がかり。

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Panの体に入っているP'Kimはなぜか昏睡状態から目覚めず、彼女自身の意識不明は続いているが、父親への負担を考えると彼女は自分が元に戻ることに意味があるのかと思い悩む。

彼女は初めてP'Kimになったことで自分を客観的に見ていた。大切な友達を悲しませることになる一方で、P'Kimを取り巻く人々の、彼への思いの方が自分の存在意義を上回っているのではないかと苦しむ。彼女を大切に思う人々の本当の気持ちに気づく日は果たしてくるのか。

やおい小説に全てをかけるイマドキ女子高生だけれど、どこか自分のことを大切に思えないという難しい役を演じたのはこの方。

手足が長くて美しい。キュートな髪型もチャームポイント。

昏睡状態から目覚めないP'Kim

この物語で一番のキーマンとなるのが、P'Kim。

学校一の秀才という彼にはPanが知っていく裏の顔がいくつもあるのだけれど、それはなぜなのか。ただ自分のプライドのためだけではないことが次々と暴かれる。孤独な彼の苦しみと、P'Wayといることで安らいでいく部分。

彼を演じているのは、正真正銘キュートでイケメンのFirstくん。ただ最も難しい役と思うのが、P'Kimであるバージョンと、中身はPanであるバージョンの二つを演じ分けるということ。
ドラマの中、視聴者にはもちろん中身がPanであることは知らされているからそう見える部分もあると思うのだけれど、本当にちゃんとPanちゃんに見える。
Panちゃんは女性らしさとか、女の子らしいところがやや少なめのイマドキ女子高生。その微妙な少年っぽい少女を見事に演じている。これは本当にすごい。

演技の上手い俳優さんはタイにも日本にもたくさんいるのだけれど、彼は本当に器用。

孤高の天才ぶりと、Panちゃんが感じる彼を取り巻く環境。全てがラストに繋がっていくのでしっかり見て欲しい。

Panは何を選ぶのか。それはP'Kimの答えでもある

P'KimになったPanは、自分の体に入った彼を目覚めさせ最後は元どおりになることを望み、その方法を調べるのだが、結局それはかなわないことが死の天使によって知らされる。

彼女は悩み、決意し、そしてある事実によって「一つの答え」へと突き動かされる。

それがこの物語の全てであり、それはP'Kimの答えでもある。

あまりうまくいってなかった兄弟の仲睦まじい姿を母親に報告しようとテレビ電話をつなげるKhet。P'KimになったPanの、複雑な心のうちがよく現れている。これもうまい。

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ラストエピソード12は本当に泣かされる(一部では11も号泣したと書かれていたが私は感動はしたけど泣くほどではなかった。ところが12はダメだった。本当に泣ける)。

ただのBLラブコメと思いきや、若い人から親世代までを巻き込む大切なメッセージを伝えるための、全12話の解説書だったのだなと思う。

明日ではなく今日、今を生きるために私たちは笑って泣いて全力で生きる。そのことをしみじみ感じさせてくれた。

「The Shipper」非常に奥深い、ブラボーなドラマなのだ。

感動感動のラストに続くのは、日本の「逃げ恥か?」との呼び声が高い、みんなでダンシングのシーン。ちょっとたどたどしい人もいる、キュートな時間を最後にご堪能あれ

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番外編のカメオ出演(ネタバレ)

ストーリーはBL要素弱めだけれど、PanちゃんはBL小説を妄想執筆する生粋の腐女子。そんな彼女へのサービス(?)として、ラストエピソードでカメオ出演するのが、BLカプで大人気のこのお二人。

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OffくんとGunくん。2人のイチャイチャを見て、Panちゃんがお決まりの歓喜の鼻血を出すというシーンに使われている。

ついでなので付け加えると、もし彼らの切ないBLラブストーリーが堪能できる「セオラブ」未視聴のかたがいたらオススメしたい。切ない片思いが中心になって進んでいくので、キュンキュンが満載だ。初心者にもオススメできる。

さて「The Shipper」に興味が湧いたら早速レッツゴー。見られる時に見ておけ、が最近のYouTube公開のタイドラマの合言葉。知らないうちにジオブロックかけられていて、泣き叫ぶ声がTwitterを荒らす日もそう遠くない、かも。とにかくとにかくEP1だけでも見て欲しい(そしてハマって欲しい)。

EP12のラストシーン、意味深だった・・・もしかしてパート2あるのかな。

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