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君は職人魂を知っているか?

プロローグ:私の旦那さんは工業系の学校を卒業し、製造業の職に就いています。とあるものを作る職人です。

そう旦那くんは手先が器用だし、知識もある。

インターホンを付け替えるときも自分が配線など全てやっていたし、現在我が家にあるテレビ台は全て彼の手作り。ホームセンターに材料を買いに行き、ドリルだの何だのを駆使して好きなように仕上げてしまう。
私は時折アシスタントに任命されるも、非力な上に職人の「し」の字もない不器用代表なので、おそらく「自分が二人いればいいな」と拙いアシストにイライラしていると思われる(そんなことおくびにも出さないけど)

つい先日のこと。
滅多に気持ちがノラない私が、何の気まぐれか「そうだ、ヤカンを磨こう!」と思い立っちゃった。時々こういう前向きな気まぐれを発動する私。絵に描いたような気まぐれ、気まぐれ選手権上位入賞。

さて、我が家のヤカンは、新婚当時買い求めた柳宗理のものが今でも現役選手。
ただし、大事に大事に扱っていたのも束の間。

この適当で、まだら模様のやる気に身を任せてきた流され侍(忍者?)の私、その私に使われているヤカンは今や結婚10数年のコゲとホコリと数々の油料理にまみれ、己の怠慢をべったりコーティングされたお姿に相成り申していた。

ごめん、ごめんよ。

とりあえずネット検索して、重曹がいいとの情報を得た私は重曹ペーストを貼り付け半日放置。まるでテレビショッピングみたいに「あらぁ、一度に汚れがスッキリ!嘘みたい!!」というエンディングに向かってひたすら待ち続けた。

そして・・・いざスポンジをスタンバイしてやかんに取りかかったものの、結果は・・・しごく中途半端。

さすが重曹、ある程度は落ちた。これがきっと数ヶ月の汚れ程度なら演技力に難があってもナチュラルに感嘆の声が用意できるほどには劇的な結末を迎えられたはず。

ただし、10年以上ですよ。一度スポンジと中性洗剤で試みたものの全く歯が立たずに諦めた過去もある。そう簡単には「バイバイ汚れ」ってわけには行かないホトトギス。

そんなところに旦那くんが帰宅。珍しくヤカンなぞ磨いているパートナーにギョッとしつつも感化されたのか、いきなり職人の血が騒ぎ出したらしい。

中途半端な汚れを残したまま、右肩の痛みを訴え、早々に戦線離脱した私を横目に、翌日には「コゲ取りグッズ」を買い込んで帰ってきた。

そこから彼の職人魂が爆発。

私には全く理解不能な、「400番手」と「600番手」のスポンジとクロスを使い分け、みるみる汚れを手玉にとっていくではないか!!!!

「ほえ〜、職人ってのはすごいもんですな」

感動しきりの私を尻目に「いやいやこんなもんじゃないっすよ」と口の端に不敵な笑みを浮かべ一心不乱にヤカンを磨く旦那くん。その手は止まることを知らなかった。

そして数十分後、ヤカンは光を跳ね返すようなピカピカなお姿に!明らかに一皮剥けた!明らかに若返った!!私がやって欲しいくらい!!!!!!

・・・まぁ元々柳宗理のつや消しシリーズであることはしばらく黙っておこう。つや消さないタイプで第二の人生ってこともアリだし。

「いやぁ、君がそんなにあのヤカンに思い入れがあったなんて知らなかったなぁ」

私があまりのお姿になり申したヤカンの再起を願って必死にかつての姿を追い求めて一念発起したと勘違いなさっているけれど言うまい、皆までは言うまい。
頭の片隅には「汚れ除去に歯が立たなかった場合は買い替えもあり得るか」という思いがあったことなど一生胸にしまっておく。

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