「シベリアからの奇跡」詩
母さんが大事にしていた 柳行李(こうり)
色は 飴色になりピカピカ光る。
蓋を開けると 出征時に作られた ボロボロの日章旗。
父さんが ゲートル巻いて 敬礼した旗だ。
父さんの出征式は セピア色のまま
心のアルバムに はっきり 焼き付いている。
家の前には 近所の人たちが集まる。
手には 打ち振る 日の丸小旗
白い割烹着に 襷(たすき)がけ姿。
ミカン箱の上に立った 父さんは
軍服姿で 軍帽を目深にかぶる。
赤い襷と「祝出征 立山礼君」と
書かれた襷を 交差がけしている