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【かがみの孤城 レビュー】生きるということ

『かがみの孤城』を読み終わった。

帯に「かがみの孤城」読書感想文大募集!! とデカデカと書いてあったから、よし書こうと思ってnoteで調べてみたらとっくに企画の期間終わっていた。。。

それならもう帯変更しといてよ…って思ったけど、久しぶりに文庫本を読んで感動した。

自分の価値観・感性が豊かになる感覚がしたし、いい経験だったのは確か。

せっかくだからレビューを書こうと思う。
サイン入り本欲しかった。。。

▷学校に行けない7人の子どもたち

この物語はざっくり言うと、各々色んな事情で学校にいけない子ども7人が自分の部屋の鏡を通じて城に集められるというストーリー。


・学校で一方的にいじめにあった子
・家庭環境に難がある子
・難病の姉を抱える子
・周りの期待で押しつぶされそうな子
・虚言癖で煙たがられた子

ここに集まった7人には本当に様々、理由があった。

そんな彼らひとりひとりの情景の描き方だとか心の状況、醜い心情の表し方などが卓越していて、リアルに想像できた。想像出来すぎた。

故に
途中までは心が痛くなるストーリーだった。

▷共感が出来すぎて、心が痛い。

俺は幸い、学校には元気に通えていた組だった。

しがらみ等を感じず、何も気にせず楽しく学校に向かっていた記憶がある。

ただ、

・姉が中学でいじめに遭う
・俺が中学一年生の頃、母が乳がんを患う

このふたつの事情があり、すごく共感できる部分が多い物語だった。共感というか心臓をグッと掴まれている感じ。

だんだん物語が進んでいき、7人それぞれの環境が紐解かれていくにつれて

“こころ”の心情を姉の心情に、
“リオンの姉”の心情を母の心情に、

あてはめながら読み進めた。

▷姉のいじめ

“こころ”の心情の表し方がすごいリアルだった。

思春期と呼ばれる大事な時期に、信じていた友達やクラスメイトにいじめられた経験を持つ子はああいう気持ちになるものだと感じた。

・どこかで笑われている感覚
・素直に泣いて助けを求めればいいものを強がってしまう
・転校して逃げていいのに「あの子たちのために転校したら負けた気分」

みたいな、逃げを良しとしない思考に至りがちな気がする。

姉がいじめられた当時、俺は小学六年生。まだ世の中のことを何も分かっていなかった時期。

ただこの本を読んだ今振り返ってみると、今の姉の性格に当時のいじめられた経験が少なからず影響してるのかなと、感じる部分が多い。

この小説を通して姉に対して優しくなれる、そんな気がした。

▷母の病気

俺が中学一年生の頃、母が乳がんになった。

自分の部屋にいた時、下のリビングから母が癌になったという話が聞こえてきた。耳を澄ましていた訳ではない。聞こえてきた。

中学一年生当時、訳が分かっていないのに“癌”と聞いて、理解もせずに涙が溢れてきたのを思い出す。

リオンの姉がリオンにかける言葉だとか、母の心境、リオンだって可愛い息子だけどリオンに当たってしまうその感じも痛いほど理解出来た。辛かった。

大学四年生になった今、当時の母にもっと優しく接してあげていればなと強く感じている。

そんな気持ちを思い出すストーリーだった。

親孝行なんていつ出来なくなるか分からないから親が元気な今のうちに、思う存分親孝行してあげなきゃって気持ちになった。

▷尻上がりな面白さ

かがみの孤城は終わりに近付くにつれて面白くなっていく構造だった。気がする。

・こころが鏡の城に通い始める
 ・こころが鏡の城のメンバーと打ち解け始める
  ・ウルシノが学校に通う(学校の話をし始める)
   ・全員が同じ中学校だと気づく
    ・現実世界では会えないことを知る
     ・鍵を見つける

みたいな流れで階段を登るようにどんどん面白くなっていった。

ひとつ話が展開したと思ったらテンポよく展開していってて止まらなかった。

下巻に入ってからはキリがいいタイミングがなくって一日で読み切った。

現実世界で会えないことを知ってからはパラレルワールドという仮説が出て、生きている時代が違うことを知って、生きて大人になれば会えないことはないっていう展開になって、、、

願いの鍵を見つけて、オオカミさまの正体がわかって、喜多川先生の正体もわかって、知らず知らずに“助け合って”生きていた。

っていう終わりに繋げる展開はスッキリだった。

これまであんまり文庫本を読んでこなかったからか、こんな面白い物語がドラマになって、俺の頭の中で描いていたこころや、ウレシノ、リオン像を視える化して放送されたらなぁって思った。

▷心の教室

喜多川先生が実はアキだったことにはさっき触れた通りなんだけど、その喜多川先生が務めるスクール名が“心の教室”だった件について、少し考察。

この事実にたどり着くまでに約400ページ近く読み進めて、最後の最後に伏線が回収された。

ここまで散々、主人公こころちゃんは自分と同じ名前のスクールである「心の教室」のことをみんなに告げれずにいた。

心の病を抱えた子たちの集う場所。
くらいに、ちょうどいい名前だと思ってなんとなくスルーしながら読み進めていたけど、ここに来て点と点が繋がった感覚。

城から解放されたリオン以外のみんなは、オオカミさまとの約束通り記憶はない。

けど、心の奥でかすかに残る記憶として残っていて、そのために知らずのうちに「心の教室」の活動に参加するようになり、井上晶子から喜多川晶子へ。

そこでずっと待っていた安西こころがやって来る。っていう繋がりは素敵だった。

あとはスバルがゲーム制作者になるシーンが描かれていない。何かしらの形で見てみたい、、

▷読書を通じて自分と会話。

ひとり黙々と読書をすることで、自分と向き合えることを今回知った。

綴られた文字から主人公、情景を思い浮かべて自分の解釈で『かがみの孤城』ワールドが広がっていく。

その、自分が作り上げた世界と自分の経験とを重ね合いながら改めて色々考え直したりなど、今までの自分とこれからの自分に向き合えるいい機会になった。

現代はAIの発達もあり、スマホだったりSNSにみんな引っ張られているけれど、そんな中で紙を一枚一枚めくって読む小説もいいもんだ、と確信。

また他の作品も読んでレビューしたいと思う。

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