郷に入れば謙虚に見えるように振る舞え

「留学前にできるだけ英語力を伸ばしたいのですが、何をするといいですか?」

資格対策を終えた受講生から、このような質問をたびたびもらいます。

国内にいる間に、できる限りレベルアップをしたい。至極当然の考えだと思いますが、個人的な答えは「現地に行ってからトライ&エラーを繰り返した方が良い」であると思っています。

というのも、決まった文脈の中で学習する英語はどうしても静的なものになり、コミュニケーション本来の瞬発性や柔軟性といった動的な経験を積むには負荷が足りないからです。

これは机の上で水泳のフォームを勉強するのと似ていて、それに時間を使うよりも実際に水の中に飛び込んで知識と感覚を一致させていくことが他言語のコミュニケーションスキルを向上させていくには必要なのだと個人的には思っています。

ただ、そんなことを言っているだけでは責任を放棄しているような感覚があります。

そこで色々と試行錯誤した結果、国内にいる時にこんなことをしておくのがベストなのではないかという考察をまとめておこうと思います。

あくまで個人的な意見なので、ご容赦いただけますと幸いです。

相手に嫌な気持ちをさせない表現

まず結論ですが「相手に好感を持ってもらえるような表現を、自信を持って流暢に発話できるように練習すること」が最も大切だと思います。

海外に住んでみて思うのは、自分の周りに「色々と教えてくれる人」がいる時の方が生活に馴染みやすく言語習得も早いということです。

郷に入れば郷に従えという言葉がありますが、郷に入るためにはその土地の “仲介者” が必須です。仲介者がいない状態では、その土地のルールもわからず郷に従うこともできません。「色々と教えてくれる人」がその仲介者の役割を果たします。

私はオーストラリアで働いていた会社を退職した後に、台湾と上海に1年半ほど滞在していた時期があります。

その時に中国語を学んだ方法が「言語交換」でした。

言語交換は、私が英語(日本語)を30分教える代わりに、相手から中国語を30分習う、というような相互的な学習スタイルです。これのいい点は、相手も自分の言語を学びたいと感じていることで、良い関係性を築きやすいことです。

そこで仲良くなった様々な人たちは、いろんなコミュニティに連れて行ってくれたり、分からないことを丁寧に教えてくれました。

一人ではできない圧倒的な量の経験。そのおかげで、半年の間にHSK6級程度のレベルに到達しました。HSKとは、中国政府認定の中国語能力試験です。1級~6級の6段階に分かれています。(6級が最上位)

ヒト対ヒトの関係性を作る

では、どうすれば「色々と教えてくれる人」と出会うことができるのか。

その際に重要になるのが、相手に好感を持ってもらえるような表現だと思います。謙虚で相手を不快にさせない丁寧な表現、これを徹底する。

日本語でも「◯◯に行きたいんだけど、道を教えて」と、質問される場合。または、「すみません。◯◯に行きたいのですが、道を教えてくれませんか?」と質問されるのでは、後者の方が気持ちが良いと思います。

「伝われば良いや」という考えで学習をしていると、結局はその程度の人間関係しか構築できません。いつまで経っても「第二言語学習者」対「ネイティブ」の関係のままです。

相手の文化圏で “丁寧” だと考えられている表現で、その表現を聞いた相手が心に突っかかりがない状態でコミュニケーションできる状態。それが、ヒト対ヒトの関係性に繋がっていくのではないかと思うのです。

例えば、英語圏で他人に何かを頼む時、 “please ~” だとぶっきらぼうな印象です。かといって丁寧すぎる “would you mind ~” と話すと逆に馬鹿にされているような気がします。

このときに湧き出る些細な違和感は、その人との距離を遠ざけるには十分すぎる役割を果たします。

人は無意識に自分のことを尊重されていないと感じた場合、そう感じた相手との良い関係を築きたいと思いません。

日本語で考えるとほんの些細な表現の違いですが、相手の文化的価値観や礼節に合わせてコミュニケーションを取ることが大切だと思います。

自信を持って流暢に話せるようにする

“丁寧さ” の次に大切なことは、自信を持って流暢に話せるような表現を身につけることです。要は発音の再現性を高めるということです。

一生懸命話した自分の英語が伝わらないとき。そんな場面が1日に何回もあったり、何日も続いたりすると、コミュニケーションを取るために必要な勇気がポキっと折れてしまうことがあります。

言語の核は自分に対する自信です。自分の考えている内容、発信するアイデアに自信がなくなると、それを伝える言葉は弱くなり声が小さくなります。

結果として、さらに自信がなくなっていくという負のサイクルに陥ってしまう可能性があります。

逆に「言葉が伝わる」という成功体験を経験できると、それだけで次の一歩が踏み出しやすくなります。

特に異文化環境では、「チャレンジできる」か「できないか」で身につくインプットの量に大きな差があるので、この一歩を踏み出すための自信を得ることが大切です。

「定型文的な表現」を中心に練習する

言語は「定型文的な表現」と「アドリブ」の2つの要素の組み合わせです。

定型文的な表現とは、例えば “Could you show/tell me how to ~~~” や “As far as I know, one of the best (choices) is ~~~”といったような頭で考える必要のない表現。アドリブは「自分の考え」や「その場に応じた応答」です。

前者はコミュニケーションの流れとして比較的よく使用する表現ですが、後者はその場限りです。

IELTSやTOEFLのスピーキング対策として「自分の意見を英語で書き出しておく」というような方法がありますが、全く同じ質問が出題される可能性は極めて低いのであまり汎用性が高いとは言えないでしょう。

一方で、意見を述べ始める表現はほとんどの質問で活用することができます。

だから、発音の精度を高める時はこれらの表現を中心に伸ばしていく。頭で舌の位置とかを考えて発話している状態から、無意識で再現できるレベルを目指す。

一つ上手くできるようになると、相対的に他の表現も上手くなります。これを続けていると、会話を始める表現はある程度自信をもって発話できるようになるでしょう。

言語は自信が核になっているといいましたが、不思議なもので最初にスムーズに話し始めることができると、その後のリズムも整って良い感じに返答できたりします。(頭は真っ白で脇汗ダラダラですが)

表面上の情報ではなく、内面に意識を向ける

“ネイティブがよく使うスピーキング表現集”のような書籍を読んでみると、「確かにこれは使うけど、本当にこれ使うかぁ?」というような表現が沢山出てきます。

例えば、"I think it's important to make sure we are on the same page before we move on. "

on the same page

うーん、確かにネイティブが使用することはあるでしょう。

ただ、これをせっせと勉強するのは「なんか違うよな〜…」と疑問に思うのです。(もちろん知っていることに越したことはありませんが)

仮に非ネイティブがこの表現を流暢に使っていることを想像すると、なんか分かりませんがキザだなとかカッコつけてると思ってしまいそうです。笑 

上手く伝えようと思わなくていいのです。相手に英語が苦手だとちゃんと伝えた上で、一生懸命伝える。そうすればほとんどの人は真剣に話を聞いてくれるはずです。(稀にバカにしたり差別的な人がいますが関わらない方がいいです)

やはり言葉という表面に出てくる情報よりも、その言葉をどう伝えるのかという態度や内面、所作といった部分がやっぱり大切ではないのかと思います。

あ、あと語彙力は大切ですね。やっぱり。語彙力は多ければ多いほど圧倒的に有利だと思います。

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