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美術館の仕事

私は小学校から吹奏楽をやって、
音大を経由した、根っからの音楽畑

西洋音楽史の授業を受けていると、
西洋文化は
建築ー美術ー音楽の順番にいつも音楽が最後に影響を受けて発展してきた道を辿る。

流れが流れだったので、美術にはちょっと興味はあったものの、
注目の美術展に年に1度行くくらいの興味しかなかった。
という事はたいして興味がなかったって事だな。

人事異動

2013年12月。江戸川区の施設で勤務していた私に内示があった。
2014年1月から、美術館に異動というものだった。

美術館への異動事態は嫌ではなかったが、
音楽畑の私に何ができるのか?
何をしたら良いのかがわからなかった。

しかも、その美術館のクライアントは、私を正社員にしてくれた当時の社長。
赴任の挨拶で

「なんでお前やねん。」

と開口一番で言われた。
音楽畑のお前が、美術館で何ができるの?
という事だったと思うが、
自分が美術館を異動する時に、
「お前がいなくなると困る」
と言わせてやると心に誓った。

都内でやっている美術展にはほどんど通い、
美術館の運営ってなんなのかを肌で感じる毎日を送った。

実際2年後に異動になった。
課長としてその美術館は担当するものの
現場の担当ではなくなったが、
クライアントには、困るが担当はするなら。
と言ってくれたようなので、まずは目標クリアしていたようだった。

のちに別の仕事でその方と新規の美術館の運営に関わりプロジェクトをご一緒したが、
「この会社で美術館とゆうたらお前しかおらんやろ」
と言われた時には、なんだか認められた気がして嬉しかった。

静と動

美術館の仕事を始めて1番最初に感じたのは、
ホールの仕事と
「静と動」が逆という事だった。
ホールでは、お客様は指定の席にジッと2時間座っている。
ステージの上では、演奏家や役者が、動いている。
演出上の事はあっても基本は客席はお客様の快適さを求めている。

美術館では、お客様が動いていて、作品はジッとしている。
展示室内は、作品のための温湿度設定。
お客様が作品に合わせないといけない。

スタッフの緊張度

ホールは大小あるけれど、定員が決まっている。
公演前の30分ほど前に一気に入場して、
公演後にはスーッと退場して街に消えていく。
短期決戦なのに対して、
美術館はだいたい9:00〜18:00で常に人がいる。
どの時間が混むかわからない。
スタッフは緊張感を維持しないといけない。

作品とお客様の安全を守る「看視」(あえてこの字)の仕事は
最前線でありながら、美術館の中でも時給も安価。
ただ展示室の端に座っているだけ。と思って応募してくる人もいるが、
大間違い。

時に何十億円という作品のそばで、看視をするのだ。
作品に何かがあっては、大変なことになる。
美術館の命に携わる仕事なのだ。
私は尊敬しているし、1番大事な仕事と思っている。
学芸員の信頼も必要。

お客様と美術館の架け橋

私たちが主にやっている仕事は、
美術館でお客様との接点を持つ業務

ご案内
チケット販売
展示室入口のチケットチェック
看視
イベント
電話の問い合わせ
友の会の事務局

市民ギャラリーの貸し出し などなど

スタッフが行なっている業務は上記だけど

マネージャーとしては
美術館運営部との連絡・調整
コロナ禍では、お客様をどう迎えるかなども一緒に調整している。
学芸員との連絡・調整
展覧会の展示に関すること。
作品の簡単な解説。見所の共有。
お客様の専門的な質問の学芸員への確認
お客様向けの簡単な展示解説の作成と確認
イベント企画
展覧会に合わせたイベント企画
清掃・警備・設備との連携

と結構、美術館運営に関わる多岐にわたる仕事を担っていた。

お客様と美術館の架け橋であると同時に
美術館内の各部署との架け橋でもあった。

美術館2.0

今のご時勢。
文化施設ではいち早く開館し、お客様を迎えている美術館。

作品は飛沫しないし、
お客様自体が動いているので、ソーシャル・ディスタンスをとりやすい。
という事もあるんだと思うが、
不特定多数のお客様がいらっしゃることには変わらない。

日本の美術館は、なぜか静かに観るという
暗黙の了解があるのだけど、
本当は、目の前の感動をすぐに共有したっていいんじゃないかな?と思っていて、
昨年までは、海外のように会話であふれる
美術館を作りたいと思っていた。

今でもそうあるべきとは思っているけど、
なかなかそうもいかない世の中になってしまった。

これからのことを考えると、
オンラインの活用を考えざるを得ない。
高細密高画質撮影のデジタルアーカイブ
予約制とオンラインチケット
オンライン講演会
オンライン・ギャラリートーク
リモート・ワークショップ

でも、やっぱり本物と対峙するときの体験、
感動はやっぱり違う。
なんとか本物の体験が最高の状態でできるよう
オンラインも活用していきたい。

あとは、デジタル化にはいつも、エンジニア側の思いが優先される。
いけないことでは無いが、使いこなすには、人間がアジャストしないといけない。
便利になる反面、便利さを捨てないといけないこともある。
設計には、運営に携わっている人間がいないと、本当に使いやすいものにはならないだろうと思う。
なかなかそこには入り込めないでいるのだけど....


まだまだ、美術館での仕事を始めて10年も経っていない
青二才がいうことではないが、
挑戦しないといけない事は山積している。



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