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#431 弁護士には想像力が必要だし,想像するのは楽しい

【 自己紹介 】

※いつも読んでくださっている方は【今日のトピック】まで読み飛ばしてください。

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このブログでは,現在弁護士5年目の僕が,弁護士業に必要不可欠な経験と実績を密度高く蓄積するため,日々の業務で積んだ研鑽を毎日文章化して振り返っています。

日々の業務経験がトピックになっているとはいえ,法律のプロではない方々にわかりやすく伝わるよう,心がけています。スラスラと読み進められるよう,わかりやすくシンプルな内容でお届けしております。肩の力を抜いてご覧くださると嬉しいです。

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが,アクセスして頂き,ありがとうございます。本当に励みになっています。

【 今日のトピック:弁護士には想像力が必要 】

今日は,弁護士に想像力が必要とされることについてお話しようと思います。

以前書いた↓のブログと若干かぶりますが,そこはご愛嬌ということで。

そもそも,想像力が必要なのは,何も弁護士に限ったことじゃありません。

相手がどんなことをしているのか,相手がどんな気持ちなのか,想像して相手に乗り移ることは,ビジネスマンとして必須のスキルなんだと思います。

例えば,僕は入院中の方から依頼を受けたこともありますが,その場合,「病院の外に出られない」というお客さんの状態をきちんと想像することが必要です。

ただ,「想像」ですから,あくまで自分の経験に基づく視点から相手のことを考えているにすぎません。

つまり,相手が同じように思っているとは限らない,ということです。

だから,想像を働かせたとしても,その想像を真実と断定しちゃダメです。特に僕らの仕事は,軽々しい「断定」が命取りになってしまいます。ただ,自分なりの視点が,それなりに根拠を持っていれば,たとえ違ったとしても,違うことを説明できるし,想像と違ったからこそ,「違った」という視点から,より明晰に真実を把握することができます。

だから,やっぱり,自分なりの視点で相手を想像することが大切なんです。

このことを,最近,離婚事件で実感しました。

離婚事件って,よくよく想像してみれば,いきなり降ってわいてくるものじゃありません。

ほとんどの場合,蓄積があります。

まあ,まれに,不貞発覚などで突発的に離婚を決意するパターンもありますが,本当にまれです。

離婚を決意するというのは,その前段階があって,その前段階も,いろいろとグラデーションがあるわけです。

で,そのグラデーションが,最大に濃くなったのが,「弁護士をつけて離婚を請求してくる」とか「離婚調停を提起する」とか,なんです。

離婚請求の相手方からの相談を,最近2件ほど受けましたが(どちらも妻から離婚を請求されている夫からの相談),どちらも,僕が奥さんの「本気度」を指摘すると,「まさにそうです」とおっしゃってくださいました。

きちんと,相談に来られた男性(夫)のことを「想像」すれば,既に,夫婦関係があまりうまくいっていないことの蓄積が見て取れるはずです。

それでもなんとか,夫婦関係をキープしてきたんです。

ただ,妻が弁護士に依頼して,その弁護士から通知が送られてきたり,離婚調停を裁判所に提起したりすると,「ああ,それくらい本気なんだ」と思うわけです。夫としては。

この「ああ,それくらい本気なんだ」をきちんと想像する。それが,本当に大切です。

想像して,それを言葉にする。「今までとは本気度が違う,と思って,今日はいらしたんですね?」と言葉にするわけです。

この言葉が出るかでないかで,相談者からの信用度合が違ってきます。

相手に憑依して,想像する。想像したら,その想像に基づいて,かけるべき言葉をひねり出して,言葉にする。

それが,弁護士には不可欠です。適切な言葉をなげると,相手の心情がグッとこちらによってくるのを感じます。

この「想像力」には,やっぱり経験が必要でしょう。

弁護士として長く働いて,いろんな事件を処理していくと,想像の度合い,想像の精度が変わってくるはずです。

ただ,僕のような若手弁護士としては,想像力は経験だけじゃないということも主張したいです。

若手弁護士は,経験した事件数が少ないからこそ,それぞれの事件が特別です。

「ああ,これ前にもやったな」と思うことが少ないです。

だからこそ,1つひとつの事件に的を絞って,想像力を働かし,その事件特有のポイントに気づくことができるはずです。

なまじ経験が多いと,「前やったあれと一緒」という思いに引っ張られて,その事件にしかないポイントに気づけなくなる危険もあるはずです。

ただ,残念ながら,「その事件特有のポイントに気づく」うえでも,経験がものを言うんですよね(笑)。

想像を働かせる訓練を,事件処理を通して何年も繰り返していれば,この事件のどこに何が眠っているか,掘り起こしやすくなります。

若手弁護士は,こういった掘り起こす「アテ」すらもわかっていません。

経験を積んでいれば,簡単に気づくことができた点に気づけない。そういう失敗も多いです。

だからこそ,若手弁護士は,思いっ切り想像しなければいけません。

弁護士としての経験が少ないとしても,人生経験も同じように少ないとは限りません。

自分の人生経験をフルに活用して,想像しなきゃいけない。

で,これが楽しかったりするんですよね。というか,この「想像」が楽しいから,弁護士として働けているのかもしれません。

例えば,会社の破産なんかやると,めちゃくちゃに想像力を働かせます。

実は僕,レストラン運営会社の破産を2件もやったことあるんですが,レストランを営業するって,とても身近な話ですが,あんまりレストラン側にたって考えたことありませんよね(笑)。

レストラン側にたつと,どんなことが見えてくるでしょうか。

・毎日の仕入れはどうやっているのか

・仕入れは誰かが買い付けに行くのか,持ってきてもらうのか

・現金で貰ったお代はどこに管理しているのか

・従業員は何人いるのか

とか,いろいろと想像します。

もうね,若手弁護士なので,明確な「アテ」はありません。とにかくやみくもに想像するしかありません。だから,めちゃくちゃに要領悪いし,時間がかかってしまいます。

破産事件も,経験を積んでいけば,必要な情報に的を絞って聞けるようになりますが,その前は,とにかくやみくもに想像して聞くしかありません(笑)。

これに付き合わされるお客さんはたまったもんじゃないですが,ただ,お客さんも法律のプロではないので,的外れな質問も,的外れかどうかわからないので,真摯に答えてくださいます。

本当にありがとうございました。的外れな質問にもお付き合い頂いた結果,僕も少しは成長できたと思います。

僕も,いつの日か若手弁護士を雇ったら,めちゃくちゃに的外れな質問でも,成長のために付き合います。

なるべくお客さんには迷惑かけないようにはしますが,僕も,先輩弁護士やお客さんに迷惑かけながら成長してきので,グッとこらえて若手弁護士の成長を見守ります。

この「想像力」は,建築事件でも大切です。

建築なんて,めちゃくちゃ「物理的」な話です。「物理的」というのは,何かしらの建物が,現に,どこかの土地に「建っている」わけで,その建築の進み具合とか,建築不備などは,この世界の現実として存在している,ということを意味しています。

この「物理的」という感覚,僕はとっても大切にしています。

「物理的」な事件は,まさに,「会議室で起きているんじゃない,現場で起きている!」のです(#古い)。

この「現場」を想像する能力が,「物理的」な事件では不可欠です。

建築だったり,土地だったり,交通事故だったり。こういう事件は,必ず「現場」があります。

「現場」があるなら現場に行けばいい,という簡単な話じゃありません。

なぜなら,実際のところ,現場に何度も行く暇はないからです。何度も何度も現場に行かなきゃいけない事件もあるのでしょうけど,いちいち確認するために現場に行くのは時間のムダです。

それに加えて,仮に訴訟になった場合,裁判官が現場に行くことはほとんどありません。進行協議や検証で現場に行くことは,制度上可能ですが,進行協議や検証を実施するかどうかは裁判官次第です。

そうすると,紙媒体のみで,裁判官に「現場」を理解させる必要があるわけで,その際も,現場の「想像力」が必要になります。

これに加えて,裁判官を想像する(裁判官に憑依する)ことも必要になってきます。

現場に行けない裁判官が,紙媒体のみという制限がある中,どんなことを知りたがっているのか。そして,それをどうやって書面上に表現すれば,裁判官が欲しがっている情報が的確に伝わるのか。

こういった想像力も必要です。

これって,めちゃくちゃにおもしろいですよ。

僕のような,いわゆる「町弁」が扱う事件って,日常生活絡みがほとんどです。でも,いざ「事件」として扱うと,見えているようで全然見えていない,日常生活の問題に直面します。

隣地との問題でも,境界があるようで,実は杭が打ってなくて境界が曖昧となっていたりだとか,「土地」といっても,平らな土地もあれば,斜めの土地もあるし,段差がある土地もあります。

当たり前のように見ている景色も,実はきちんと理由があって,その「理由」を想像する。

これが,弁護士の醍醐味ですし,経験を積めば積むほど,想像の精度が高まるので,だからこそ,年老いても現役でバリバリ仕事している先生方が多いのかもしれません。

とりあえず僕は,まだまだ5年目なので,少ないながらも経験した過去の事件を糧に,なるべく要領よく想像力を働かせようとしながらも,結局はやみくもに想像してしまっているという「ジタバタ劇」を,お客さんにバレないようしれっと繰り広げようと思います。

僕もまだまだ成長途中です。温かく見守ってくださるとうれしいです。嬉しいとすぐに涙をこぼしますので,どうぞよろしくお願いします。

それではまた明日!・・・↓

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