#487 なんか難しそうな話:遺留分減殺請求と遺留分侵害額請求
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【 今日のトピック:遺留分減殺請求と遺留分侵害額請求 】
毎日最後に「心身への負担を考慮し,「書き始めてから1時間くらいでアップする」という制限時間を設けています。」と書いてきましたが,1時間でも心身への負担が大きくなってきたので,今日から,書き始めて30分くらいでアップすることにします。
かなり制限時間が短くなりましたが,そのおかげで,より短時間集中で濃い内容をお届けできるはずです。
さて,今日は,めちゃくちゃ難しそうなタイトルです(笑)。なんか漢字がいっぱいですね(笑)
少しずつ説明します。
さて,「遺留分」というワードを聞いたことがある人は,それなりに多いかもしれません。
「遺留分」というのは,「最低限貰える遺産」を意味します。
例えば,相続人が長女,長男,二男の3人だとしましょう。ある男性が,遺言を残し,その遺言には,全財産を長男に相続させる,と書いてあった場合,長男は,その遺言に基づいて,お父さんの遺産(不動産や預金)を,全部自分で貰えます。
不動産の名義を変えたり,預金を解約して現金化したり,そういったことが,遺言に基づいてできます。
しかし,遺言では全く遺産が貰えない長女と二男にも,「遺留分」というものがあって,遺言のせいで全く遺産が貰えないとしても,「遺留分」だけは,法的に確保することができます。
「遺留分」のぶんだけ,全財産を貰った長男から取り戻すことができるのです。
この「遺留分を取り戻す」場合の,取り戻す方法の違いが,「遺留分減殺請求」と「遺留分侵害額請求」なのです。
これまで,というか,2019年6月30日までに亡くなった人に関する相続の場合,「遺留分減殺請求」によって,遺留分を確保することになります。
「遺留分減殺請求」の場合,遺留分を確保する方法は,「現物」です。
「現物」というのは,不動産なら不動産,自動車なら自動車,預金なら預金を,そのまま現物で貰う,ということです。
ただ,「現物で貰う」といっても,「全部不動産でほしい」とか「全部現金でほしい」などを要求することはできません。
例えば,↑の3兄弟の例で,遺産が,不動産3000万円,預金3000万円,NTT株式3000万円,だったとしましょう。
この場合,遺言のせいで遺産を全くもらえなくなった長女及び二男にも,「遺留分」があって,その遺留分は,遺産全体の6分の1です。
遺留分は,「法定相続分の2分の1」なのですが,↑の場合,長女と二男の法定相続分は,それぞれ3分の1なので,その2分の1,つまり6分の1が,「遺留分」なのです。
遺産の合計額は9000万円なので,遺留分の額は1500万円となりますが,この「遺留分1500万円」を,「全部預金でほしい」とか「全部株でほしい」とか,請求することはできないんです。
不動産も,預金も,株式も,それぞれ6分の1ずつ取得するのが「遺留分減殺請求」です。
だから,不動産については,6分の1だけ自分の名義にして,預金と株式の6分の1(500万円分)だけ自分のモノになります。
これが,「遺留分減殺請求」で,2019年6月30日までに亡くなった人の場合は,こういった結論になります。
ただ,遺留分減殺請求を受けた相手,↑の例でいうと,全財産を相続した長男が,「価額弁償」といって,「お金で払います」と主張すると,お金でしか貰えなくなります。
これに対し,「遺留分侵害額請求」は,遺留分を確保する手段がお金に限定される,ということです。
今は,この「遺留分侵害額請求」が採用されていて,2019年7月1日以降に亡くなった人の場合,お金でしか,遺留分を確保することができなくなりました。
これは,遺留分を請求する方,請求を受ける方,それぞれにとって,メリットにもなりますし,デメリットにもなります。
例えば,遺留分を請求する側が,不動産の名義や株なんて必要ないから,お金でほしいという場合は,相手に有無を言わせず現金で遺留分を確保できるので,メリットになるでしょう。
これに対し,お金ではなく,株や不動産など,現物がほしい場合は,お金でしか遺留分を確保できなくなった現在の制度はデメリットになります。
遺留分の請求を受ける側も,お金で払いたいか,現物で払いたいかによって,デメリットが出てきます。
お金で払いたい場合は,かつての遺留分減殺請求でも,「価額弁償」を主張できたので,変わりはありませんが,これに対し,遺産に現金があまりなく,お金で払おうにもお金がなく,現物で払いたいという場合は,有無を言わせずお金で支払わせる今の「遺留分侵害額請求」は,デメリットになります。
【 まとめ 】
遺言によって,全然遺産が貰えなかったり,全然貰えなかったわけではないけれども,少ししか遺産が貰えなかった場合は,「遺留分を請求できないか」と気になりますよね。
亡くなった時期によって,相手に請求できるのが「現物」なのか「お金」なのか変わりますので,そこは十分に注意してください。
それに加えて,そもそも「いくらくらいの遺留分が貰えるの?」という点が,最も気になるでしょうが,遺留分の算定は,相続人の数や,遺言の対象となった遺産によって大きく変わるので,弁護士に相談してみてください。
弁護士が遺留分を算定してくれるので,その金額を見た上で,弁護士に依頼するかどうか決めればいいと思います。
そして,遺留分でめちゃくちゃ大切なのが,時効です。
遺言を見てから原則として1年で時効になり,遺留分を請求できなくなります。
そして,亡くなって10年経つと,遺言を一切知らなくても,遺留分は請求できなくなってしまいます。
遺留分は,かなり専門的な知識が必要なので,ネットの情報を調べるのも骨が折れると思います。
弁護士に相談して,時間と手間を節約するのも一理あるんじゃないかなぁと勝手に思っています。
それではまた明日!・・・↓
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