特別養子という制度
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このブログでは、2019年7月にうつ病を発症し、それをきっかけに同年12月からブログを始めて、それ以降、900日以上毎日ブログ更新してきた、しがないサラリーマン弁護士である僕が、日々考えていることを綴っています。
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【 今日のトピック:特別養子 】
日本には、「特別養子」という制度が存在します。
これは、「実子あっせん」が根強く日本社会に残っていたことを受け、生み出された制度です。
昭和62年の民法改正で導入されたので、かれこれ35年くらいの歴史があります。
「実子あっせん」というのは、医師が虚偽の出生証明書を作成してあげて、その虚偽出生証明書を添付して出生届と一緒に提出するものです。
さすがに、それはよくないと誰もが思いました。
親子関係というのは、人間関係の基本です。
そこが間違っていては、ダメです。もちろん、虚偽の出生証明書が添付された出生届は無効で、誰かが裁判を起こせば、親子関係が否定されてしまいます。
例えば、相続で、親子関係のあるなしの紛争が顕在化します。
相続というのは、親子関係があるかどうかによって、遺産を受け継ぐかどうかを決めています。
生前にどれくらい尽くしたかどうかは関係ありません。
「寄与分」という制度があって、遺産の維持または増加に特別の寄与があった相続人は優遇されますが、あくまで、「特別の寄与があった」場合のみです。
身の回りの面倒をみるのは、基本的に「ふつう」なので、老後に同居していた程度で「寄与分」が認められることはありません。
そうすると、基本的に、子どもが何人かで相続できる遺産の金額が変わってきます。
相続人が妻1人子ども3人なら、妻が50%、子どもが1人6分の1ずつです。
これが、子ども1人の親子関係を否定してしまえば、相続人が、妻1人子ども2人に変わりますから、妻50%子ども1人4分の1ずつと、子どもが相続できる金額が増えます。
6分の1から4分の1になるので、1.5倍になります。
遺産全体が6000万円なら、子ども1人1000万円だったところが、1500万円に増えます。
遺産全体が6億円なら、1億円が1億5000万円に増えるのです。親子関係を否定したくなるのもわかります。
ただ、そもそも、親子関係が後から否定されるなんて、原則として「あっちゃだめ」なんです。
親子関係がさかのぼって否定されるのは、万が一のためにその手段を用意しておく必要はありますが、「万が一」が起きないようにしておく必要があります。
だから、「実子あっせん」なんて認めるわけにいきません。
こんな大問題が昭和40年代に発覚したので、何かしら対策を打たなきゃいけなくなりました。
まあ、「生んだ子を育てられない人」と「実子として育てたい人」という、言い方は悪いですが「需要」と「供給」はあって、それをマッチングさせるニーズがあったのは確かでしょう。
ただ、この「ニーズ」は、子どもがおいてけぼりになっています。
生まれた赤ちゃんは、モノではありません。
今このブログを読んでいるあなたも、書いている僕も、かつて「赤ちゃん」でした。
「赤ちゃん」は、いつまでも赤ちゃんでい続けるのではなく、だんだんと大きくなって、大人になるのです。
当たり前ですが、赤ちゃんだって「ヒト」で、大人の都合で、実親を隠されるなんてことが起きてはいけません。
いつの日か、実親を知ることができたらそれでいい、という話でもありません。
年齢に応じて、実親のことを知ることができなきゃいけないに決まっているんです。
最終的に、赤ちゃんだって大人になるわけですから、そのときに、虚偽の出生届を提出されて、実親が誰かわからなくなっていたら、その人は、一生つらいでしょう。
そこで、新しい「養子」を考え出したのが「特別養子」です。
特別養子は、あくまで「養子」ですが、実親との法的な親子関係を消滅させます。
生物学的な親子関係は消滅させようがありませんが(母親のお腹から生まれた事実は変えようがない)、法的な親子関係は法律で消滅させることができます。
もちろん、特別養子縁組をしたからといって、実子になるわけではないのですが、法的な親は養親のみとなり、特別養子ではない養子とはまた違った養子であることは間違いありません。
戸籍の続柄の欄にも「長男」とか「長女」と記載されます(普通養子だと「養子」と書かれます)。
実子にはできないけれど、「実子」と「養子」しか手段がないと、また「実子あっせん」という事件が起きてしまう、ということで、「特別養子」という制度が生み出されました。
少しは「実子」に近づけた「養子」という感じでしょうか。
特別養子が実子ではなく、養子であることは間違いないのですが、ただ、この制度を作り出したことで、わざわざ「実子あっせん」なんてしなくても、特別養子を正面から利用すればよくなったというのは、大きな成果だと思います。
毎年、全国でかなりの数の特別養子が誕生しているようですし。
もしかしたら、「実子あっせん」という悲劇が、今でも日本のどこかで行われているかもしれませんが、きっと劇的に減っていて、それはたぶん特別養子のおかげです。
法改正の目的を達成できたと評価できるでしょう。
ちなみに、特別養子は、戸籍を追えば実親にたどり着けるので、その点もよさげだなと思っています。
それではまた明日!・・・↓
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