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弁護士の僕ならこうやって遺産相続を進めます-13(遺留分を渡すかどうか)

【 自己紹介 】

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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

【 今日のトピック:遺産相続 】

今日で13日目ですが、引き続き、遺産相続についてお話していきます。

昨日は、「父が遺言を残していたケース」を2つに場合分けしました。

①遺言のおかげで僕自身がたくさん遺産を貰うことができ、他の相続人は遺留分すら足りない

②遺言のせいで僕以外の相続人がたくさん遺産を貰ってしまい、僕は遺留分すら足りない。

この2つです。

それぞれ、「遺留分」がキーワードです。

①は、遺留分すら不足する相続人がいるからこそ、法的に是正することが出きます。遺留分が不足する相続人がいないのであれば、遺言によって損したとしても、是正することはできません。

「是正」といっても、損した相続人が確保できるのは、遺留分までだけです。遺留分以上に貰うことはできません。

(遺留分以上に貰いたい場合は、遺言が無効であることを裁判で確定しなきゃいけません。遺言が無効であることを裁判で確定できれば、その後、遺言が無効であることを前提に遺産分割を進めることができます。)

②は、僕自身が、遺留分すら貰えないからこそ、法的に是正できるんです。遺留分には足りているようであれば、是正することはできません。

さて、じゃあ、このブログのメインパートである「僕だったらどうするか」について書いていこうと思います。

まずは、①です。遺言によって、僕がたくさん貰うことができた場合に、遺留分にすら足りていない相続人に対して、遺留分を渡すかどうか、について書いていきます。

そもそも、「遺留分」は、「遺留分侵害額請求」といって、遺留分すら足りていない相続人が、「遺留分ほしい!」と僕に対して伝えて初めて、請求できるようになります。

何もせずに指をくわえていれば、空から遺留分が降ってくるわけではありません。遺留分に足りていない相続人が、自らアクションを起こして初めて、遺留分は請求できるのです。

たくさん貰った僕の立場から言えば、「遺留分ほしい!」と言われるまでは、法的には、遺留分を渡してあげる義務はないのです。

そして、そのまま、父が亡くなってから10年経過すれば、遺留分は請求できなくなります。

「遺留分ほしい!」と、僕の母や妹たちが言わないまま、父が亡くなってから10年経つと、その後、「遺留分ほしい!」と母や妹たちが言ってきたとしても、時効なので、遺留分を渡さなくていいんです。(今回の設定では、父の相続人は、僕と、僕の母と、僕の妹2人です。)

そうすると、10年間逃げ切るという方法もありえます。

例えば、父が公正証書遺言で、「遺産はすべて古田博大(=僕)に相続させる」と書き残し、その公正証書遺言を僕に託して亡くなった場合、僕以外の相続人が何も知らないまま、僕が単独で土地の名義変更とか預金の解約を完了できます。

「遺産はすべて古田博大に相続させる」なんて遺言を僕以外の相続人に見せてしまうと、「遺留分ほしい!」と言われる可能性がありますが、別に、他の相続人に遺言を見せなきゃいけない義務があるわけではありません。見せなくても、犯罪ではないからです。

公正証書遺言は、僕以外の相続人も調べることができるので、気になるなら調べればいいです。

それに、自筆証書遺言であれば、「検認」という手続きが家庭裁判所で必要となってきますが、「検認」をやる場合は、家庭裁判所から通知が届くので、その通知を見て、遺言の存在を知ることができますし、法務局に保管されている自筆証書遺言であれば、法務局で遺言の有無を調査することができます。

ただ、こういった遺言の調査に必要な知識を、僕以外の相続人が知っているかどうかは別問題です。知らなければ、調査できないまま10年が経過し、遺留分を請求できなくなってしまいます。

それを狙ってもいいんですが、ただ、僕は、このやり方は利口じゃないと思います。僕も、かつて、一度だけ逃げ切った事案を目にしましたが(亡くなって10年経過した後に、土地の名義が変わったことに気がついた)、一般的に言えば、10年も逃げ切るのは、かなり難しいです。

例えば、10年間逃げ切ることを企てて、遺言を見せなかった場合に、亡くなって7年後、遺言の存在を知られたら、非常にバツが悪いです。

「7年も隠していたのか!預金を解約したこと、土地の名義を変えたこと、どっちも隠していたんかあああ!」と激怒されかねません。

この「激怒」に巻き込まれるのは、僕の人生にとって非常にムダなので、だったら、最初から回避しときます。

つまり、僕なら、積極的に遺言を見せます。「財産すべてを古田博大(=僕)に相続させる」という遺言が残っているよと、たぶん、遺言書をコピーして渡すでしょうね。

公正証書遺言なら、僕がコピーを渡さなくても、公証役場でコピーを貰えますし、自筆証書遺言でも、「検認」という家庭裁判所での手続きの後、裁判所に遺言書の写しが保管されるので、そのコピーを裁判所から貰うことができます。

だから、結局、遺言のコピーは、僕以外の相続人も手に入れることができるのです。だったら、最初からコピーを渡してあげていいと僕は思います。

どうせコピーを手に入れることができるにもかかわらず、コピーを渡してあげないのは、単なる「嫌がらせ」だからです。

このように、僕なら、遺言書のコピーを渡しますが、その後、遺留分を他の相続人に支払うかどうかは別問題です。

僕なら、「遺産はすべて古田博大に相続させる」と父親が書き残した理由次第で、対応を変えると思います。

まあ、父は亡くなっているので、父から理由を聞き出すのは不可能なのですが、遺言書に明確に理由が書かれていたとしたら、「こういう理由で父が遺産はすべて僕にくれたわけだから、遺留分はやめておかないか?」と提案すると思います。

まあ、遺留分の請求は、遺言の理由に左右されないので、あくまで、「お願い」のレベルです。どれだけ父が強烈な理由を書き残したとしても、その理由によって遺留分が消滅することはありません。

反対に、父が、全く何の理由も書き残さず、単に「遺産すべてを古田博大に」と書いていたのであれば、僕は、遺留分侵害額請求を待たずに、遺留分を支払うと思います。

全く理由がないとはいえ、少なくとも、父が財産すべてを僕に譲ろうとしていたことは間違いないので、その意思を尊重してあげたいですが、ただ、法的には、他の相続人に遺留分を支払わなきゃいけないので、遺留分は支払うと思います。

遺留分以上に欲しいと言われたとしても、それには応じませんが、ただ、遺留分の限度であれば、すんなり渡してあげると思います。

今日はこれくらいにします。

それではまた明日!・・・↓

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