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遺言を残そうと思ったら-14(遺言能力はちょくちょく紛争になります)

【 自己紹介 】

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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

【 今日のトピック:遺言を残す 】

今日も引き続き遺言について書いていきます。

さて、昨日は、遺言能力がないと、遺言が無効になってしまうことを書きました。

ちなみに、遺言は、一般的には「ゆいごん」と読みますが、法律の世界では「いごん」と読むのが普通です。

「遺言」を「ゆいごん」と読もうが「いごん」と読もうがどっちでもいいと思いますが、「遺言能力」を「ゆいごんのうりょく」と読むと少し違和感があります。

「遺言能力」は、日常会話では出てこない単語ですから、日常会話で使う「ゆいごん」読みをすると、違和感が出てくるようです。

さて、どうでもいい小話をはさみましたが、遺言能力についてです。

遺言能力がない状態で書いた遺言は無効です。

昨日も書きましたが、「遺言能力がない」とは、「遺言の内容を理解する能力がない」ということです。

この「遺言能力」の話って、少し違和感があるっちゃあるんです。

遺言は、契約とは違って自分以外の他人はおらず、自分だけで作成します。

自筆証書遺言なら、自分と紙とペンと印鑑と朱肉があれば作成できますから、内容も理解できない状態で作成するというのは、あんまり考えられません。

遺言と違って契約なら、契約相手がいますから、契約内容を理解できなくても、契約相手から言われるがままに署名押印しちゃう、という事態も想定できます。

でも、遺言は自分だけで作成しますから、理解できていないなら、そもそも作成できず、遺言が残らないような気もします。

しかし、実際には、裁判で遺言能力の有無が争われて、結果的に、遺言能力がなかったと判断されるケースも結構あります。

遺言は、遺言を残す本人が1人で作成するにもかかわらず、その内容を理解していないというのはどういうことなんでしょうか。

それは結局、本人以外の誰かが遺言のきっかけになっているのです。

僕ら弁護士も、遺言作成の依頼を受け付けることが結構ありますが、本人だけで事務所に来て遺言作成を依頼する場合は、遺言能力には問題ないでしょう。

自分で法律事務所まで来て、遺言の作成を依頼しておきながら、遺言の内容を理解していないというのは、ちょっと意味がわかりません。

無事に弁護士に遺言の作成を依頼できているわけですからね。弁護士に遺言作成を依頼する際も、弁護士への依頼を理解していることが前提になっていますが、弁護士に依頼できるのに遺言の内容は理解していないというのは、普通は考えられません。

これに対し、遺言の作成を、本人じゃなくて、その息子や娘が依頼してくることもあります。

こういう場合、遺言能力がアヤシイことがあり得ます。

息子や娘が、本人に代わって遺言を残すことはできません。なので、いくら息子や娘が依頼の窓口になっていたとしても、依頼するのは本人です。

だから、遺言の依頼を受けた場合、必ず本人の意向を確認します。(まあ、本人の意向を確認するのは遺言の依頼に限らないんですけど・・・)

僕は今まで経験ありませんが、仮に、本人の意向を確認して、遺言能力に問題がありそう(息子や娘から聞いていた遺言内容を知らなかったり、会話すら成立していなかったり)なら、遺言作成の依頼は拒否します。

こうやって、弁護士に遺言を依頼してくれれば、弁護士が依頼を受けるかどうか判断する際に遺言能力も一緒に判断できるんですが、そうでもなければ、遺言能力を判断されないまま遺言が作成されてしまうことになります。

本人が言い出しっぺではなく、息子や娘が言い出しっぺで遺言を作成し、その結果、言い出しっぺの息子や娘にとって有利な遺言が、本人が遺言内容を理解しないまま作成されてしまうことがあって、こういう場合が、遺言能力が紛争になる典型的なケースです。

ただ、言い出しっぺの息子や娘としては、いくら自分が言い出しっぺだとしても、本人がそういう遺言を残したいと言っていて、そのとおりに遺言を作成したわけで、その遺言が言い出しっぺの自分に有利だからといって、遺言が無効になってほしくはありません。

遺言を残そうと思ったきっかけが自分だったとしても、本人が心からそういう遺言を残そうと思ったのに、後で遺言が無効とされたらたまったもんじゃありません。

しかし、ある息子や娘にとって有利な遺言が残されると、反作用として、それ以外の息子や娘にとって不利になってしまうので、遺言能力の紛争はよく起きます。

ただ、遺言の内容を理解していたかどうかを、過去にさかのぼって確認するのはかなり難しいです。

当の本人はすでに死んでいて、事情を聞くことはできません(本人が死ぬ前に遺言が有効かどうかを裁判で確認することはできません)

こういった遺言能力の有無が、遺言を作成したその瞬間にはっきりしていれば一番よくて、それを可能としているのが、公正証書遺言なんです。

今日はこの辺にします。

それではまた明日!・・・↓

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