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弁護士の僕ならこうやって遺産相続を進めます-8(不動産の売り方)

【 自己紹介 】

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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

【 今日のトピック:遺産相続 】

さて、今日も、引き続き、遺産相続についてお話していきます。

僕だったら、遺産に不動産が含まれる場合、その不動産は売却してお金に変えてそのお金を分けます、ということを、昨日と一昨日の2日間にわたって説明してきました。

2日間にもわたって説明するのはだいぶくどいですよね、すみません(笑)。

今日も繰り返したくはないのですが、要は、不動産を不動産のまま誰かが取得してしまうと、値上がりしたら、ほかの相続人から恨まれるし、逆に値下がりしたら、本人が損するから、僕だったら、お金に変えてさっぱり分けてしまったほうがいいと思っています。

それに、売ってしまえば、不動産の金額が売却代金によって決まるので、不動産の評価額に争いが出ることもありませんし(このことは、後で補足して説明します)。

僕は、今のところ、生粋の「住むためには不動産所有権不要」論者なので、相続人の誰かが遺産の不動産に住んでいても、「売ったほうがいい」と提案します。

不動産を売れば、お金が手に入るので、そのお金で、賃貸物件で住むことができます。

「所有権」は、「管理責任」がくっついてくるので、基本的にお邪魔虫です。土地の土が流れて隣地に迷惑をかけたら責任をとらなきゃいけません。

また、「所有」しているばっかりに、移動の自由も奪われるし、ご近所とのトラブルも起きます。

「所有」さえなければ、人生の各ステップに応じて、自由に引っ越すことができます。だから、「所有権」は不要なんです。

年老いて引っ越す見込みもない、なんて思う人もいらっしゃるでしょうが、年老いたら年老いたで、老人ホームに入所したり、老人ホームまでいかなくても、バリアフリーで住みやすい物件に引っ越すことも十分考えられます。

足腰がしっかりした頃に建てた家は、階段があったり、年寄りには不便です。「所有」していなければ、住みにくい家はさっさと捨てて、別の物件に乗り換えることができます。

僕の思想は、こういう風なので、「不動産は売っちゃえよ」ということになるわけです。

そして、昨日のブログでは、不動産は不動産業者に査定してもらい、ある程度の金額を確認するとともに、「本当にこの値段で売れるの?」ということも確認する、ということを書きました。

査定書に、どれだけ高い値段が書かれていても、その金額で売れなければ、売ることはできません。

いくら「売ったほうがいい」と思っているとはいえ、現実問題、買い手がつかなければ、「売る」ことはできません。

「売る」のは、買い手があって初めて実現するわけで、現実的に売れるかどうかがめちゃくちゃ大切なんです。

それで、「この物件は売れそうにないよ」なんて言われたら、売るのは諦めるかもしれません。

売るには、極端に値段を下げなきゃいけない(例えば、300坪の土地だけど100万円でしか売れない)なら、売らずにキープするかもしれません。

それでも売ったほうがいいと思って、売るかもしれません。

不動産を所有していると、それだけで「管理責任」がくっついてくる、というのは先ほど書きましたが、それを嫌って、貰い手があるならそれでいいやと思って、0円で売る、つまり「贈与」するかもしれません。

これは、ケースバイケースです。僕なら、タダ同然で売るくらいなら、倉庫か何かで使えるかもと思って、持っておくでしょう。

さてさて、また前置きが長くなりましたが、今日は、不動産の売り方について少し書きます。

「売る」というのは、「買主さんにお金を払ってもらい、そのお金と引き換えに不動産の名義を買主さんに変更する」ということです。

今日お話ししたいのは、

・買主さんをどうやって見つけるか

・名義変更をどうするか

という2点です。

まず、「買主さんをどうやって見つけるか」というのは、先ほど、「後で補足して説明します」と書いたところに関わってくるのですが、不動産の買主は、ふつうは、不動産仲介業者に見つけてもらいます。

不動産仲介業者と「媒介契約」という契約を結ぶと、その不動産業者が、不動産を流通システムにのせます。そうすると、売出情報が公開され、その公開された情報を見た人から、「買いたい!」と言われたら、その人が買主候補となります。

その買主候補と正式に売買契約を結び、実際に売却代金が入金されたら、晴れて、不動産がお金に変わります。

こう書くと、「買主は不動産業者に探してもらえばいいじゃん。何も難しくないじゃん」と思われそうですが、それだけだと、後日争いになる可能性があります。

例えば、僕が、不動産業者に依頼して、買主を見つけてもらい、その買主に無事に売却できたとしましょう。何の問題もなさそうですが、後で、「もっと高く売れたはずだ!」と他の相続人から文句が出るかもしれません。

「2000万円で売却したけど、3000万円で売却できたはずだ!」とも言えるわけです。

そうすると、せっかく売却して、不動産の金額が1つに決まったかと思いきや、新たな紛争を生み出しかねません。

そこで、相続人が、「それぞれ」買主を探す、という手法をとることがあります。

もちろん、他の相続人が、「あなたが見つけた買主さんに、好きな値段で売っていいよ」と了承していれば、それでもいいのですが、その了承がない場合、相続人それぞれが買主を探し、最も高い値段で購入してくれる買主を探し出し、その買主に売るということを約束するんです。

そうすれば、後で、「もっと高く売れたはずだ!」とはなりません。

その金額で売却し、売却代金が入金されれば、無事に不動産がお金に変わり、なおかつ、不動産の金額も1つに決まります。

そして、「売る」とは「不動産の名義を変える」ということでもあるんですが、遺産に含まれる不動産は、亡くなった人の名義のままとなっていますが、死んだ人名義のままでは売れません。

生きている人の名義に変わらないと、法務局が買主さんへの名義変更を受け付けてくれないんです。

だから、生きている人、つまり、相続人の名義に変える必要があるんですが、この場合、その不動産に住んでいる相続人がいたら、その相続人の単独名義にしておきます。

これから売っちゃう物件に「住んでいる人」なんていないかもしれませんが、別の物件に引っ越していても、住民票上の住所が売却物件であればいいです。

その理由は、居住用不動産を売却すると、3000万円まで譲渡所得税が課税されないからです。

不動産を売却すると、売却代金には、「譲渡所得税」という税金が課税されるのですが、その税率は約2割です。

したがって、3000万円で不動産を売却すると、その売却代金には、原則として、約600万円の税金が課税されてしまうのです。

ところが、居住用物件であれば、3000万円までは譲渡所得から控除されるので、譲渡所得税が課税されません。

譲渡所得税が課税される場合は、ほかにも、取得価格を控除することが認められています。

例えば、5000万円で土地を売却した場合、譲渡所得税は、原則として、約1000万円課税されてしまいますが、この土地は、もともと、4000万円で購入したのであれば、5000万円から4000万円を差し引いた残りの1000万円が「譲渡所得」として課税されます。

だから、譲渡所得税は、約200万円となります。

こうやって、取得価格を、課税対象となる所得から差し引くことができるのですが、しかし、相続で取得した場合、取得価格は「ゼロ」ですよね?

お金を出したのは亡くなった本人で、取得した相続人は、一銭も出さずに不動産を取得できていますので。

しかし、相続の場合も、売却代金の5%は、取得価格として差し引くことが認められています。

そうすると、結局、遺産に含まれる不動産を、その不動産に住民票がある相続人の名義にして売却すれば、売却代金の5%+3000万円まで、譲渡所得税は非課税となります。

今、国税庁のホームページを見ていたら、どうやら、住民票がその不動産になくても(つまり、今その不動産に住んでいなくても)、住まなくなって3年経過した直後の12月31日までは、3000万円の控除を受けられるようです。

こんな感じで、僕だったら、3000万円の控除を受けられる相続人の名義に変えて、不動産を売却します。

そして、売却相手(買主)は、相続人がそれぞれ、不動産業者に依頼して探し出し、後で「もっと高く売れたはずだ!」とは言わせないようにします。

さて、今日は、かなり複雑なことをお話ししました。

弁護士が入る前から、ここまで複雑なことをするのは、あまりないのかもしれません。

「不動産は売却して分けようか?」

「いいよ」

「買い手は僕で見つけるけど、それでいい?」

「いいよ」

これで、終わっちゃうことも多いでしょう。きっと。

売却金額に後から文句をつけるなんて事態、ふつうはあんまりないと思います。

ただ、遺産に含まれる不動産について、評価額の意見が割れていたりすると、こういう手法をとらざるを得ないことも多いです。

そんな場合に、僕だったら、どうするかを、今日は説明してみました。

明日は、僕の父親が亡くなったという設定に戻って、どんな風に遺産を分けていくか、お話していきます。

それではまた明日!・・・↓

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