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弁護士の僕ならこうやって遺産相続を進めます-17(遺留分の民事訴訟を覚悟する)

【 自己紹介 】

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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

【 今日のトピック:遺産相続 】

今日で17日目ですが、引き続き、遺産相続についてお話していきます。

昨日は、「父が遺言を残していたケース」のうち、

②遺言のせいで僕以外の相続人がたくさん遺産を貰ってしまい、僕は遺留分すら足りない。

という場合に関して、「僕だったらこうやって遺留分を請求するだろうな」ということについてお話しました。

今回の設定では、「財産すべてを妻に相続させる」という遺言を残していました。「妻」とは、僕の母を意味します。

つまり、僕にとって「遺留分を請求する」というのは、母に対して、「遺留分くれよ」と伝えることになります。

まあ、母は、僕が「遺留分くれよ」と言わなくても、最初から遺留分を渡すつもりかもしれませんが、それは、母がそう言ってくれるまではわかりません。

というか、遺留分を渡すつもりだった母が、後で気が変わって、「遺留分は渡したくない」と思い始める可能性もあります。

遺留分を請求できる権利は、母の気持ちで左右されるわけではありませんが、とはいえ、僕が遺留分を確保する方法は、母から支払いを受ける以外に法的にはあり得ません。

あくまで、今回の設定では、父の遺言によって、母が、すべての遺産を取得しまっているので、僕が遺留分を確保するために引当てとなる財産は、父の遺産が追加された後の母の財産のみです。

僕の遺留分を、母以外の財産から工面してもらうことはできないんです。

ここ、少し大切なことを話しているのですが、遺留分は、「父の遺産」からのみ支払いを受けられるわけではありません。

父の遺言によって、母が父の遺産すべてを取得した結果、父の遺産と母の財産は混ざり合ってしまいますが(例えば、母が父の預金を解約して、自分の預金口座に全額入金した場合は、母の預金と父の預金は完全に混ざり合ってしまい、区別できなくなります)、母は、父の遺産と自分の財産が混ざり合ったことを理由に遺留分の支払いを拒否することはできません。

母は、もし仮に、父の遺産を全部ギャンブルに使ってしまい、1円もなくなってしまったとしても、自分の財産から遺留分を支払わなければいけません。

これが「遺留分」です。

だから、結局、僕は、遺留分を確保したいのであれば、母の財産から支払いを受けるほかにないのですが、そうすると、母からどうやって遺留分を支払ってもらうか、というのが非常に大切になってきます。

「遺留分は当然の権利だから!」と最初から強気で母に当たると、母から自発的に支払いを受けるのは難しくなるかもしれません。

とにかく、最初は穏便にいきます。僕なら。

穏便に行く方法は、昨日書きましたが、まずは、父が「妻に財産すべてを相続させる」と書き残した理由について、母に尋ねます。

「妻に財産すべてを相続させる」というのは、つまり、子どもたちには1円も渡したくない、ということを意味します。

子どもにも相続の権利があることは、一般的に知られていることですから、父も当然知っていたはずです。

しかし、父は、子どもには1円も渡したくないと思って遺言を残しているわけですが、その理由について、母が何か聞いているかもしれません。それを、なるべく穏やかな口調で質問します。

まあ、質問すること自体は、嫌がられないと思います、たぶん。

父が遺言を残した理由は、子どもであれば、知りたがるのは普通ではないでしょうか?

まあ、自分に思い当たるフシがあるかもしれませんが、それを確認するためにも、母に尋ねたほうがいいでしょう。

これすら母から拒絶されるようであれば、母と僕との関係は、思った以上に悪化しています(泣)。

そうすると、いくら、遺留分が法的な権利として認められているとしても、母から自発的に遺留分を払ってもらうのは難しいと覚悟しなきゃいけないと思います。

一応、穏便に理由を聞いて、教えてくれないならば、「遺留分を請求します」と伝えて、後日改めて遺留分を請求することを正式に書面で送ったほうがいいでしょう。

遺産の総額も自分で調べて、遺留分の金額を記載して、その金額を支払ってほしいと、書面で請求するわけです。

これくらい母との関係が悪化していると、母が自発的には支払ってくれなさそうなので、最終的には訴訟を覚悟しなければいけません。

そもそも、相手が自発的に支払ってくれない場合に、遺留分を強制的に支払わせる方法は、民事訴訟です。

遺言がない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて、遺産の分配について決着をつけますが、遺留分の場合は、地方裁判所に民事訴訟を提起して決着をつけます。

ただ、家庭裁判所に遺留分の調停を提起することは認められていて、民事訴訟よりも先に、調停を提起することも多いです。

「調停」は、裁判所での話し合い手続きなので、お互いに譲歩して、合意できなければ無意味です。

合意できるずに、調停が「不成立」となってしまうことも多いです。

ここでは、本当に正直に言いますが、遺留分は、いきなり訴訟を提起するのではなく、調停を提起することが結構多いのですが、その理由の1つは、訴訟提起が結構面倒「だった」からです。

2019年6月30日までに亡くなった方の場合、遺留分を確保する手段は、「遺留分減殺請求」というものでした。

これは、現在の「遺留分侵害額請求」と違って、遺留分をお金で確保するのではなく、現物で遺留分を確保する手段です。

だから、遺産に不動産が含まれていれば、その不動産の所有権が相続開始(死亡時)にさかのぼって遺留分権利者に移転し、預金についても、預金債権が遺留分権利者に移転する、という体裁がとられていました。

その結果、遺留分の訴状を書く場合、各遺産すべて(不動産、預金、株式、保険、などなど全部)について、その一部が遺留分権利者に移転した、ということを1つ1つ書かなきゃいけませんでした。

これがもう、めちゃくちゃに面倒だったんです(笑)

今回の設定だと、「遺産全部が1人の相続人に渡る」という、かなり簡単な遺言なので、それほど面倒なことにはなりませんが、これが、遺産の「一部」を、複数の相続人に分配して、遺留分減殺請求する相手も複数になってくると、途端にめんどくさくなります。

いや、本当にそうなんです。

遺言によって、遺産をたくさんもらった相続人が複数いる場合、それぞれの相続人に請求できる金額は、各相続人の遺留分を超える金額で按分する必要があるのですが(はい、ここまでの日本語が意味不明ですよね。ええ、意味不明で結構です。意味わかる人は、すぐに司法試験受けて弁護士になってください)、この計算をしていると、すぐに、「○億××××万△△△△分の●●●万▲▲▲▲」という風に、ハチャメチャな分数が現れてきます。

全然意味わかんないですよね(笑)。意味わかんなくていいです。

とにかく、遺留分の訴訟は、ハチャメチャな分数が出てくることが常で、とにかく面倒だったのです。

だからこそ、訴訟を提起する前に、いったん、調停での解決を図ることが多かったと僕は思います。

しかし、今は、遺留分は、「お金で払ってもらう」という権利に変わりました。

だから、今は、訴訟を提起する場合も、「○○万円を支払え」という単純な記載で足りるようになりました。本当にラクになりました。

ラクになったので、「いったん調停を提起する」という選択をしなくてよくなったと僕は思います。

話し合いでの解決が見込めないのであれば、さっさと訴訟を提起して、決着をつけちゃっていいような気がします。

まあ、遺留分の争いは、親族間の争い(今回の設定でも、母と息子の争いです)なので、訴訟で解決するよりも、話し合いで解決したほうがいいのは間違いありません。

訴訟を提起した後も親族関係は消滅しないからです。だから、親族間の争いは、なるべく話し合いで解決するべきだと考えられていて、この意見には僕も同意します。

しかし、親族間の紛争だからこそ、感情的になり、話し合いでの解決が難しいケースが多いのも一般的な傾向です。

だから、僕としては、「親族関係は消滅しない」ことを強調して、話し合いによる紛争解決を無理に進めるよりも、ある程度のラインで、話し合いでの解決を諦めるのも大切だと思っています。

特に、遺留分の紛争の場合、最終的に、「民事訴訟」で法的に紛争を終わらせる手段が用意されているので、話し合いでの解決が難しいのであれば、さっさと話し合いに見切りをつけて、民事訴訟を提起しちゃうべきでしょう。

特に、今は(2019年7月1日以降に亡くなった人の相続に関しては)、遺留分の訴訟提起も、以前よりは簡単になったので、さっさと訴訟提起しちゃいましょう。

以上のように僕は考えているので、母との人間関係に、かなりの亀裂が入っていたとしたら、僕は、それなりに早い段階で訴訟提起を覚悟すると思います。

今日はこれくらいにします。

それではまた明日!・・・↓

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