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弁護士の僕ならこうやって立退きに対処します-5(法律知識の確認:「正当の事由」)

【 自己紹介 】

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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

【 今日のトピック:賃貸物件の立退き 】

今日も、昨日に引き続き、立退きに関する法的知識を確認していきます。

今日は、法律知識確認のメインイベントと言ってもいいでしょう。「正当の事由」について説明します。

少し復習しますが、大家さんが法的に立退きを請求するためには、借主(住民)との賃貸借契約を終了させなければなりません。

借主が家賃を滞納している場合は、滞納家賃全額の支払いを督促して、期限までに支払いがなければ、それで契約が終了するので、それ以降は、法的に立退きを請求できるようになります。

「期限」といっても、滞納家賃全額払えという通知が借主に届いて10日もあれば十分です。本来の支払期限はとっくに過ぎているので、10日も待てば十分なのです。

しかし、借主が毎月きちんと家賃を払っている場合は、そうはいきません。

昨日もお話しましたが、契約期限の6ヶ月前までに「更新の拒絶」するか、または、「解約の申入れ」をして6ヶ月が経過しないと、契約は終了しません。

しかも、「更新の拒絶」または「解約の申入れ」に、「正当の事由」がなければ、6ヶ月が経過しても、「契約終了」という効果は発生しません。

「正当の事由」なく、「契約更新しませんからね」とか「6ヶ月後に契約終了しますからね」と通知しても、契約が終了しないんです。

大家さんにとっては残念なお知らせですが。

じゃあ、どんな場合に「正当の事由」があるのか、という話になってきます。

実のところ、僕は、かつて「正当の事由」についてめちゃくちゃ判例を調べたことがあります。

というのも、顧問先の不動産業者が、「正当の事由」の壁にぶち当たり、そのせいで、かなり立退きに苦労した経験があるからです。

この立退きについては、僕が代理人として携わり、どうしても立ち退こうとしない借主にかなり苦しめられました。

最終的には、こちらが大幅に譲歩して、かなり多額の立退料を支払うことで、なんとか立ち退いてもらうことができました。

さて、「正当の事由」の話ですが、条文には↓のように書いてあります。

「建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、」

条文を引用しても、長くて意味がわからないですよね(笑)。説明します。

ある裁判例が、「正当の事由」があるかどうかを判断する方法について、結構わかりやすく説明していて、それによると、まずは、①大家さんが契約を終了させたい理由と、②借主(住人)が引き続き借り続けたい理由を比べます。

①と②を比べて、①大家さんが契約を終了させたい理由が上回らなければ、「正当の事由」は無いと判断されます。

①大家さんが契約を終了させたい理由

②住人が引き続き借り続けたい理由

「比べる」といっても、意味がわかりませんよね(笑)。

「比べる」といっても、比べようがないですよね(笑)。僕もそう思います。「比べる」の意味がよくわかっていません。誠に申し訳ありませんが(汗)。

例えば、

①大家さんは、建物が築30年を超えて、老朽化が進み、そのせいで、家賃を下げないと入居者が集まらなくなっているから、建物を取り壊して、キレイな今風のアパートを新築し、もっと高い家賃収入を得られるようにしたい

②借主は、妻と8歳と6歳の子ども2人と一緒に居住する男性で、このアパートは、職場から徒歩5分とめちゃくちゃ通勤に便利で、妻の勤務先からも近く、他に、同じ徒歩圏内・同じ家賃で家族4人が暮らせるアパートは存在せず、なおかつ、同じ価格帯のアパートに引っ越すと子どもたちが転校を余儀なくされるから、引っ越したくない

この2つを「比べて」、どちらが「上回る」のかを判断するって、かなりざっくりとした判断にならざるを得ませんよね?

①大家さんが契約を終了させたいのもよくわかるし、②借主がこのアパートに住み続けたい理由もよくわかります。

だから、「正当の事由」の判断って、かなりビミョウなんです。

そうすると、「こういう場合はこうだから①が②を上回ります」と断言することはできません。

ただ、基本的に、住むためのアパートであれば、その場所に住み続けなきゃいけない理由は、ないことが多いと思います。

他にもアパートはたくさんあるはずですから、どこか他の場所に引っ越しても、生活に大きな支障が出ることはないことが多いでしょう。

とはいえ、大家さんが契約を終了させたい理由も、それなりにしっかりした理由が必要です。

↑に書いたような、家賃収入を増やしたいという理由があって、具体的に、現在の収益と、アパート新築後の収益を比較して、どれくらいの収益に差が出るかはっきりしていると、大家さんが契約を終了させたい理由がかなり説得的になりますが、なんとなく、「老朽化したから新築したい」くらいだと、説得力が低いです。

アパートを新築すると、当然ながら、建築費が必要になるわけで、それを借入で工面するのであれば、ローンの返済が必要となってきます。

ローンの返済と見込まれる家賃収入との差額が収益となるわけですが、その収益が、今の収益を上回ることもよくわからないまま、なんとなく、「老朽化してるな」というくらいだと、②借主が住み続けたい理由を上回ることは難しくなるでしょう。

①大家さんが契約を終了させたい理由

②借主が引き続き住み続けたい理由

のそれぞれは、本当にケースバイケースですし、「比べる」とか「上回る」というのもよくわかりませんから、なかなか一概には言えません。

とはいえ、大切なのは、①が②を上回っても、それだけで「正当の事由」が認められるケースはかなり少ないです。

①が②を上回るのが、「正当の事由」には必要ですが、それだけで「正当の事由」は認められず、それなりの「立退料」を支払うことで、「正当の事由」が具備されるケースがほとんどです。

ここまでをまとめると、

・大家さんが契約を終了させたい理由>借主が引き続き借り続けたい理由→この不等式が成り立たないと、「正当の事由」は認められない。

・↑の不等式が成り立っても、立退料を支払うことで「正当の事由」が認められる場合がほとんど

立退料ナシで「正当の事由」が認められるのは、震度5程度の地震で完全に建物が崩壊してしまうような、住むこと自体が危険な建物だとか、そういった、建物の構造自体に問題があるようなボロボロの建物に限られてきます。

さて、今日は「正当の事由」について説明しました。

結局ケースバイケースということしか説明できませんでしたが、こういった知識を前提にすると、大家さんが立退きを求める「理由」を知る必要があります。

大家さんが、どういった理由で立退きを求めているのか、仮に僕が立ち退いたらその後どうしようと思っているのか、立ち退いた後の計画がどれくらい具体的に進んでいるのか

そんなことを大家さんから聞き出すことが必要になってきます。

そして、次は、自分が今住んでいる物件に住み続けなきゃいけない理由を考えます。

・入居を決めた理由は何だったのか

・今住んでみて、どこを気に入っているのか

・そのお気に入りポイントは、他の物件では満たされないのか

そういった、自分側の事情も分析します。

大家さん側の事情を聞き出し、自分側の事情を分析することで、どちらがより説得的なのか考えます。

今日は、ここまでにします。すみません、話の途中ですが、これ以上書くとかなり長くなってしまうので。

それではまた明日!・・・↓

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