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特別養子縁組

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このブログでは、2019年7月にうつ病を発症し、それをきっかけに同年12月からブログを始めて、それ以降、700日以上毎日ブログ更新してきた、しがないサラリーマン弁護士である僕が、日々考えていることを綴っています。

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【 今日のトピック:特別養子縁組 】

「特別養子縁組」という、なんか特別そうな養子縁組が日本にはあります。

「特別養子縁組」という制度は、昭和62年の民法改正で新設され、昭和63年1月から正式にスタートしました。

今となっては目新しくもないんですが、民法が制定されたのは明治時代なので、民法の歴史と比べると、結構新し目です。

特別養子縁組について説明するには、特別のつかない普通の養子縁組から説明しなきゃいけません。

「養子にする」という言葉を聞いたことある人も多いと思いますが、「養子にする」は、たいていの場合「養子縁組」を意味しています。

「養子縁組」とは、血の繋がりがない2人の間に法的な親子関係を生じさせるものです。

法的には親子なので、養子は、養親が死んだら相続人になります。養親には、養子のほかに実子がいたとしても、養子と実子との間に相続権に差はありません。

もっと言うと、養子は、養親だけでなく、実親との親子関係もあるので、養親方と実親方双方の相続に直面します(正直、実親がいるのであれば、相続の点で養子はラッキーです)。

しかし、養子縁組したとしても、戸籍の「父」や「母」の欄が書き換えられるわけじゃありません。

父や母の欄には、実親しか記載できません。養子縁組したら、新しく「養親」の欄が作られ、その中に養親の名前が記載されます。

そして、養子縁組すると、実親の戸籍から養親の戸籍に移動します。

まあ、こんな感じで、養子縁組は、養子から見れば、実親とは別に親を作り出すことを意味し、養親から見れば、実子とは別に子どもを作り出すことを意味します。

特別養子縁組は、これと違って、実親との法的な親子関係は消滅します。

実親とは別に親を作り出し、実子とは別に子を作り出すという点では、普通の養子縁組と同じなんですが、しかし、特別養子縁組は、実親との親子関係が法的には消滅してしまいます。

普通養子縁組であれば、実親と養親双方の親子関係が存続するのですが、特別養子縁組だと、最後に残るのは養親方の親子関係だけです。

普通の養子縁組なら実親と養親で親が2組できてラッキーにも見えますが、どうも、この日本では、そんな「ラッキー」よりも、実親子関係を養親子関係を優位に捉える文化があるようです。

日本では、遅くとも江戸時代以降、実子でない子を実子として届け出る風習があったらしいです。

これはつまり、養子と実子に差を設け、実子が優位であるという社会通念があったということですが、まあ、実親子関係と養親子関係に差を感じるのは、人間の本能的な発想なので、回避するのは難しいと思います。

しかし、実子でないのに実子として届け出るのを許すわけにはいきません。実子と養子で本能的に差を感じるからこそ、両者がごちゃまぜになったらダメなんです。

実子でない子を実子として届け出ることは、江戸時代どころか、昭和40年代頃まで根強く横行していて、それが表面化したのが「菊田医師事件」です。

「菊田医師事件」って、つまり、民間の医師が、「いらない子ども」と「子どもがほしい大人」をマッチングして、マッチングが成立した場合は、医師が出生証明書を偽造してあげて、「子どもがほしい大人」の実子として届け出せるようにしてあげる、という事件です。

実子と養子に差を感じてしまうのは仕方ないとしても、あまりにも「実子」に重きを置きすぎているせいで、こんな事件が起きてしまいました。

そこで、この事件の反省から、昭和62年に民法を改正し、実親子と養親子とは別に、「特別養子縁組」という制度を新設しました。

特別養子縁組は、実親子関係が消滅するので、実子とほぼイコールな感じに見えて、そこが狙いでした。

ただ、僕が強調したいのは、特別養子縁組も養子縁組だ、ということです。

児童相談所で働いている僕としては、特別養子縁組を成立させた養親さんたちが、実子として子育てする覚悟で養子縁組を成立させようとしているのは理解しているつもりです。

特別養子縁組は、普通の養子縁組とは異なり、届け出るだけでは成立しません。

自分で申立書を作成し、その申立書を家庭裁判所に提出します。そして、それだけでなく、特別養子縁組の成立要件を満たすことを裁判所に書面で説明します。

特別養子縁組の成立要件を満たすことを、家庭裁判所に逐一説明するなんて、相当な手間です。しかし、それでもやっぱり、目の前の子どもを特別養子にしたいと思うからこそ、これだけの手間をかけられるのです。

そうやって手間をかけた結果、最終的には、実親子関係を法的に断絶させることになり、そういった結論を自ら引き起こすことも覚悟しています。

その覚悟には、心から敬意を評します。

しかし、特別養子縁組も、養子縁組であることには変わりありません。特別養子縁組は、実子でない子を実子にできることを認めた制度ではないのです。

実親子関係を消滅させる「養子縁組」を認めたのが特別養子縁組なんです。

戸籍の記載も、最終的には、養親が「父」や「母」の欄に記載されることになりますが、その戸籍から順にさかのぼっていけば、自分が特別養子であることは判明します。

実子として育てたいという気持ちもわかりますが、戸籍を見れば、実子ではなく特別養子だということはわかっちゃうんです。

「実親が誰か?」というのは、子どものアイデンティティの基盤になります。ここに穴が開くと、自分がわからなくなってしまいます。自分の親が実親でないことが発覚したときの喪失感を想像してみてください。

実子として育てたいという養親さんの思いは本当に素晴らしいと思いますが、養子視点から考えると、実親を隠されるよりも実親を知りたいという思いが勝ってしまう場合もあると思います。

特別養子縁組って、本当に難しいですね。

僕の個人的な見解ですが、養親であることを墓場まで持っていくよりは、自分が養親になった理由や、実親が育てられなかった理由を懇切丁寧に養子に説明したほうがいいと思います。

最終的に養親になるまでにどんなことがあったのか、養親になった後、どんな思いで今日まで育ててきたのか。

キレイゴトだけでは語れない、現実のストーリーを話してあげるのが、結局、養子にとってベストだと僕は思っています。

養親から説明したうえで、それをどう乗り越えるのかは、養子が頑張る番です。

真実を知って不安定になるでしょうし、親に会いたいと思っておいそれと会えるわけでもありません。しかし、その現実を養子は乗り越えなきゃいけないんです。

本当に残酷ですが、僕が特別養子だったら、やっぱり、隠されるよりは知りたいです。知った上で、めちゃくちゃ時間がかかるかもしれませんが、自分で折り合いをつけたいです。

実親に会えるなら会いたいです。養親に隠されたせいで実親に会えないまま一生を終えたら養親を恨むと思います。

特別養子縁組は、本当に難しいです。でも、僕は養親と養子どちらも応援したいです。幸せな人生が養子と養親どちらにも訪れてほしいです。

特別養子縁組は、児童相談所の職員など、成立までにいろんな人に相談できるので、とことん相談して、質問しまくるといいと思います。

それではまた明日!・・・↓

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