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限られた時間で事情を聞き取る:質問の踏み込みの深さ

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このブログでは、2019年7月にうつ病を発症し、それをきっかけに同年12月からブログを始めて、それ以降、700日以上毎日ブログ更新してきた、しがないサラリーマン弁護士である僕が、日々考えていることを綴っています。

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【 今日のトピック:時間は限られている 】

「限られた時間で仕事をする」という、至極当然のことについて今日は書いてみようと思います。

僕は弁護士として働いていますが、弁護士の仕事って、その多くが「事情の聞き取り」に時間を割かれています。

例えば、僕らは、事務所で法律相談を受けますが、その時間の大半は、事情を聞き取る時間です。

離婚の相談とひと口に言っても、いったいどの点でモメていて、どうして弁護士に相談してまでなんとかしようと思っているのかは、本当にケースバイケースです。

・離婚するかどうかでモメているのか

・親権でモメているのか

・養育費の金額に折り合いがつかないのか

・面会交流するかどうかでモメているのか

などなど。

こんなのは、事情を聞き取らないとわかりません。

で、事情を「聞き取る」って、ただただ相手に話させることとも違います。

僕が思うに、「聞き取る」って、「質問する」です。

「なんで?」「どうして?」と、オープンクエスチョンしているだけでは、ダメです。事情が聞き取れません。

もちろん、最初は「今日はどうしましたか?」で始めてもいいと思います。

というか、法律相談は、事前に相談の概要を聞いておくことが多いと思います。

「離婚の相談です。養育費でモメています」だけでもわかっていると、まだ話は早いです。

しかし、それだけで適切に回答できるはずもなく、養育費でモメている原因について特定する必要があります。

その際は、養育費の金額について、一定の基準があることを示す必要もあるでしょう。

まあ、とにかく、弁護士は、事情を聞き取りまくっています。

で、限られた時間で、必要な情報を聞き取らなきゃいけません。

打合せや相談も、無限にできるわけではありません。お客さんの時間も限られていて、1時間なら1時間で、打合せを終えなきゃいけません。

留置場での接見でも、いろいろと限られた時間で事情を聞き取らなきゃいけません。

本当に難しいのですが、うまくこの作業をするには、想像力をふくらませることが大切だと思います。

自分の常識に照らして、いろいろと質問していき、自分の常識とは違う答えが帰ってきたら、その理由を尋ねる。

これを繰り返すことが、「質問する」ことによる「事情聴取」だと思うのです。

例えば、「スーパーで化粧品を万引しました」という犯人が逮捕されていて、弁護人として留置場に接見に行くとしましょう。

で、まずは、万引したことに間違いがないかどうか質問することになるでしょう。そして、「どうして万引したの?」と、万引の動機や理由について聞きます。

ここまでは、いわば「セオリー」なんですが、ここから先は、相手が何を言ってくるかで大きく違ってきます。

「自分で使おうと思っていました」という答えが返ってきたら、「どうしてお金を払わなかったの?」という質問が続きます。

「これまで、万引がバレなかったので、今回も万引できると思っていました」という答えが返ってきたら、とりあえずは、「ああ、こいつはバカだなあ」という結論が出ます。

じゃあ、ここで質問を終えていいかと言うと、そうではありません。

「これまで、万引がバレなかった」という点について、さらに質問しなきゃいけません。

「これまでは、どこで何を盗んだの?」

「最初に盗んだのは、いつのこと?」

「初めて盗んだのは、どうしてだったの?」

こんな質問が次は浮かんでくるはずです。

「はずです」と言っても、僕も、最初は浮かんできませんでした。

僕はどうも他人に興味がありません。普通だったら、↑のような質問が自然に浮かんでくるのでしょうが、僕にとっては、目の前の犯人がどうして万引してしまったのかなんて、どうでもよかったので、何の質問も浮かんできませんでした。

でも、そうやって、何の質問も浮かばずに事務所に帰ってくると、ボスに対して報告する時に、全然報告できないのです。

ボスは、当然ながら、↑のような質問が浮かんでくるわけで、その質問を、僕に対してぶつけてくるわけです。

でも、僕は質問すら浮かばず、全く聞き取れていないわけですから、「あ、それは聞いていません」「わかりません」のオンパレードです。

「聞いていません」「わかりません」を繰り返すのは、めちゃくちゃシャクなので、だんだんと、僕は、そういった「シャク」な思いをせずに済むように、「ボスに報告する時に、どんな質問を僕が受けるか」を想像するようになりました。

僕自身が目の前の相手に興味を持てない、というところは変わらなかったのですが、「ボスからいろいろと質問されて、それに答えられないとめちゃくちゃシャクで気分が悪いな」とは思うようになったので、とにかく、ボスが浮かぶであろう質問に対しては完璧に答えられるように、事情を聞き取っておこうと思うようになりました。

こうやって、僕の質問力は鍛えられていきました。

まあ、これは、結局のところ、「限られた時間で事情を聞き取る」につながっていくと思います。聞き取りが不十分なら、また留置場まで接見に行かなきゃいけなくて、移動時間も含めると、大幅なタイムロスになります。

自分が1日に使える時間=仕事に割ける時間は、限られています。その限られた時間で、仕事をこなしていかなきゃいけないわけで、そうすると、1回で聞き取れることは、なるべく1回で聞き取っておきたいんです。

聞き取っていないと、ボスからいろいろ言われてイヤなのに、それに加えて、追加で時間もかかってしまいます。踏んだり蹴ったりです。

今、僕にボスはいませんが、しかし、「限られた時間で仕事をこなす」のは、変わりません。

質問に対する答えを鵜呑みにするのではなく、想像力を働かせて、さらに追加で質問する。

「想像力をふくらませる」というか、「自分が納得するまで聞き取る」という感じでしょうか。

この「納得」の水準が高ければ高いほど、仕事の質が上がっていくんだと思います。

いろんなことに気がつけるようになるほど、「納得」の水準が高くなり、いろんなことを質問できるようになります。

「納得」の水準が低い、つまり、ある程度のところで納得できちゃう場合は、自分のレベルがその程度、ということです。

そのレベルを引き上げるには、経験を積んだり、勉強したりする必要があると思います。

(ちなみに僕は、経験だけでは会得できない「知識」というものに重きを置いています。)

経験や座学によって、いろんなことに目が行き届くようになり、「納得」の水準を上げて、質問の踏み込みを深める。

抽象的に言えば、これが、「限られた時間で事情を聞き取る」極意だと思います。

で、自分のレベルが低くて、「納得」の水準が低いにもかかわらず、なんとなく質問を続けるのは、時間のムダです。

自分が納得してしまって、次の質問が浮かんでこないのなら、「なんか、もう少し聞いといたほうがいい気がする」と思っても、そこでゲームオーバーです。

自分の無力さを正面から受け止めて、上司の判断を仰ぎましょう。そこできっと、「あ!」と思う瞬間がやってきて、「そんな当たり前な質問すらオレは思い浮かばないのか・・・」と打ちひしがれることになりますが、大丈夫です。

それは大切な成長の証です。

こうやって、いつまでも「あ!」という悔しさを味わい続けるのかもしれませんが、そのうち、「あれ、最近なんかいろいろと聞き取れるようになった気がする・・・?」という瞬間がやってきます。

ゆっくりゆっくり、ぼちぼちやりましょう。

それではまた明日!・・・↓

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