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過払金を弁護士の僕ならどうするか-7(過払金の時効消滅)

【 自己紹介 】

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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

【 今日のトピック:過払金 】

今日も引き続き、過払金について書いていきます。

さて、昨日までで、だいたい過払金の歴史については説明し終わりました。

「弁護士の僕だったらどうするか」というブログタイトルにもかかわらず、タラタラと過払金の歴史についてお話していたのは、過払金の時効について説明するためです。

実は、「時効」にも2種類あります。取得時効と消滅時効です。

(刑事事件でも、「公訴時効」がありますが、過払金は民事の話で、民事の時効として、取得時効と消滅時効があります。)

今日お話するのは、消滅時効です。

「取得時効」は、たいてい、他人の土地を長年にわたって占拠し続けたら自分のモノになるというケースです。

占拠された側とすればたまったもんじゃないのですが、隣家の人が越境して建物を建ててそのままの状態で何世代も放置され、越境した経緯なんて誰も知らなくなった時点で「取得時効だ!」とか「境界確定だ!」とか言われるのが多いです。

すみません、脱線しました。過払金の消滅時効です。

結論だけ言ってしまえば、過払金は、最後に返済した日から10年が経過すると時効になってしまいます。

だから、例えば、今日(2021年8月1日)時点で、最後の返済日が2011年8月1日である場合は、過払金が請求できなくなりました。

最後の返済日が2011年8月2日なら、今日中に訴訟提起すれば間に合いますが、最後の返済日が2011年8月1日までなら、過払金は請求できません。

まあ、正確に言えば、時効は「援用」が必要で、「援用」までは時効の期間が経過しただけで、過払金自体は消滅していません。

「援用」というのは、貸金業者が「時効になっていますよ」と(元)借主に通知することです。「援用」は、単に通知するだけでいいんです。

だから、貸金業者が「援用しない」のはあり得ません。最後の返済日から10年が経過しているのであれば、100%の確率で「援用」してくるので、「援用」までは過払金が消滅しないとはいえ、最後の返済日から10年が経過しているのであば、結局、過払金の請求は不可能です。

この「時効が10年」というのが、現在の過払金請求において、めちゃくちゃ大きなハードルとなっています。

言うまでもなく、貸金業者たちもバカじゃありません。2006年に、「みなし弁済」を無効化する最高裁判決が出たわけですから、みなし弁済を前提に利息制限法を超える利率で貸し付けていたそれまでの手法を変更せざるを得ません。

つまり、利息制限法の上限利率の範囲内で貸し付けるようになったのです。2006年以降は。

そりゃそうですよね。利息制限法の上限利率を超えた利率で貸し付けてしまうと、あとで過払金が請求されてしまうわけですから。

貸金業者としては、そんな面倒は御免こうむりたいわけで、最初から利息制限法の上限利率の利息しか要求しなくなったんです。

だから、2006年以降の貸付けでは、基本的に過払金は発生しません。

まあ、利息制限法の上限利率を超えた利息を支払っている可能性が完全にゼロではありませんが、アコムやアイフルなど、聞いたことある大手サラ金業者であれば、すべて、利息制限法の上限利率以下の利息しか要求しなくなりました。

そうなると、過払金が発生するのは、2006年までの貸し借りなんです。

2006年までは、どの貸金業者も、みなし弁済を前提に利息制限法の上限利率を超える利息を要求していましたから、普通に貸金業者との間でお金の貸し借りをするだけで過払金が発生していました。

ところが、2006年から完全に潮目が変わり、一切過払金が発生しないお金の貸し借りに移行されたのです。

まあ、サラ金業者たちが、利息制限法を守るようになったので、とても良いことに違いないんですが、今だに過払金のコマーシャルが溢れている現状を踏まえると、「借金していれば過払金がもらえる」という印象を与えかねません。

しかし、それは完全に間違いです。

2006年までの貸し借りであれば、「借金していれば過払金がもらえる」という考えも、あながち間違いではありませんが、2006年以降は、貸金業者たちが利息制限法を守るようになったので、過払金は発生しなくなり、「借金していれば過払金がもらえる」という考えは、完全に誤りとなりました。

(2006年以前の貸し借りであっても、「借金していれば過払金がもらえる」というわけではなく、利息制限法の利率で計算すると、元本以上に返済している場合に限って過払金が請求できます。元本以上に返済していないのであれば、借金は減るでしょうけど、逆に過払金を請求する、という所まではいきません。)

ただ、2006年までの貸し借りしか、基本的に過払金が発生しないとはいえ、じゃあ、今現在は、時効によって、一切過払金が請求できなくなっているかというと、そうではありません。

今でも、過払金が請求できる可能性は残されています。

確かに、2006年までの貸し借りでないと、過払金は発生しません。そうすると、最後の返済日からとっくに10年が経過していて、過払金は請求できなくなっていそうです。

しかし、そうじゃありません。

例えば、2000年から、アコムとの間でお金の貸し借りを続けていたとしましょう。

2000年に初めてアコムから借金して、2018年に完済したのを最後に、今日まで借金していないとします。

この場合、2000年~2006年までのお金の貸し借りでは、ほぼ間違いなく過払金が発生しています。

しかし、アコムは、2006年から利息制限法の上限利率に収まるように利率を変えています。その結果、2006年から2018年までの貸し借りでは、過払金は発生していません。

この場合、2000年から2018年まで継続的に貸し借りを続けていたのであれば、10年の時効は、完済した2018年からスタートします。

だから、過払金自体が発生した2000年~2006年までの貸し借りからは、とっくに10年が経過していますが、最後の返済日からは10年が経過していないので、2000年~2006年までの間に発生した過払金は請求できるわけです。

こういう感じで、今でも、過払金が請求できる可能性は残されているんです。だから、今だに過払金のコマーシャルが溢れているのです。

しかし、いったんお金の貸し借りが途切れると、過払金は請求できなくなります。

例えば、↑の例でも、2000年~2008年までお金の貸し借りを繰り返していて、いったん2008年に完済し、契約書なり借用証書なりを返してもらった後、2年後の2010年から再びアコムと契約してお金の貸し借りを繰り返すようになった、という場合であれば、いったん貸し借りが途切れているので、2008年までの貸し借りと2010年以降の貸し借りが別契約となり、2008年までの貸し借りで発生した過払金は、2008年に完済した日から10年で時効となってしまいます。

その結果、2021年の現在の時点では、過払金を請求できません。

こういう感じで、過払金は、「時効」の問題が大きく関わってきます。

そのため、サラ金業者たちが利息制限法を守るようになった現在の時点でも過払金が請求できるのは、2006年以前から、お金の貸し借りを、少なくとも2011年ころまで継続的に続けていた人たちだけなのです。

お金の貸し借りが2010年で途切れているのであれば、せっかく過払金が発生していても、時効によって請求できません。

2006年以前からの貸し借りが2011年まで続いていたとしても、最後の返済日が2011年8月1日以前であれば、残念ながら過払金は請求できません。過去には戻れないので、もう間に合いません。

この時効の問題があるからこそ、今回の設定は、かなりムリがあったんです。この辺も明日説明します。

それではまた明日!・・・↓

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