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交通事故の被害にあった場合に弁護士の僕ならどうするか-16(後遺症:被害者請求)

【 自己紹介 】

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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

【 今日のトピック:交通事故 】

昨日に引き続き交通事故について書いていきます。

さて、昨日は、後遺症等級認定のうち、「事前認定」について書きました。

交通事故の加害者が加入する任意保険会社は、被害者に保険金を支払った後、自賠責保険から出るぶんは、自賠責保険会社から回収することになります。

例えば、後遺症等級が14級の場合、自賠責保険から後遺症慰謝料75万円が出るんですが、そうすると、被害者に後遺症慰謝料として100万円払った任意保険会社は、そのうち75万円を、自賠責の保険会社から支払ってもらうことができるわけです。

自賠責と任意保険の関係は、こういう感じになっています。

ただ、後遺症等級が14級かどうかは、自賠責の保険会社が決めることです。だって、後遺症慰謝料75万円を支払うのは自賠責の保険会社ですからね。

自分のお財布からお金を出すのに、お金を出すかどうかを他人に決めてもらうわけにはいきません。

自分のお財布を痛めてもいいかどうかを決めるのは自分自身です。

だから、後遺症慰謝料として75万円を支払っていいかどうか、つまり、今回の事故の被害者に、14級の後遺症が残っているかどうか、を決めるのは、自賠責の保険会社なんです。

ただ、自賠責保険会社は、自社で後遺症の有無を決めるのではなく、後遺症の調査を「自賠責調査事務所」に外注します。

で、その外注先の調査結果に基づいて、後遺症14級「アリ」なら、後遺症慰謝料75万円を支払いますし、後遺症14級「ナシ」なら、後遺症慰謝料は払いません。

で、自賠責保険会社が後遺症慰謝料を支払うと決めたのなら、任意保険会社も後遺症慰謝料を支払いますし、自賠責保険会社が後遺症慰謝料を支払わないと決めたのなら、任意保険会社も後遺症慰謝料を支払いません。

なぜなら、さっき説明したように、自賠責保険会社が後遺症慰謝料を支払うなら、任意保険会社も後から自賠責保険会社から後遺症慰謝料75万円を回収できるし、逆に、自賠責保険会社が後遺症慰謝料を支払わないなら、任意保険会社は後で後遺症慰謝料75万円を回収できないからです。

さて、ここまでが昨日説明した「事前認定」のおさらいです。

今日は、「被害者請求」の話ですが、これは、被害者が直接、自賠責保険会社に対して、後遺症慰謝料の支払いを請求します。

「被害者請求したいです」と自賠責保険会社に連絡すると、必要書類の書式一式が郵送されてきて、必要書類を揃えて、自賠責保険会社に郵送します。(事故状況を図で示したりと、結構面倒です。)

事前認定と被害者請求の違いは、

・任意保険会社が被害者に支払った後に、任意保険会社が後で自賠責保険会社から回収する

・被害者が直接自賠責保険会社から回収する

の違いです。

正直なところ、理論上、後遺症等級認定の判断に違いは出ません。

だって、後遺症等級を判断するのは、いずれにせよ、自賠責保険会社から委託を受けた自賠責調査事務所だからです。

事前認定の場合は、任意保険から自賠責保険会社に連絡して、事前に、自賠責保険会社の意見(後遺症が何級なのか?)を聞いておくことになりますが、被害者請求の場合は、被害者が自賠責保険会社に直接、自賠責保険会社の意見を聞くことになります。

・任意保険会社が意見を聞くのか

・被害者本人が意見を聞くのか

という違いはありますが、いずれにせよ、自賠責保険会社の意見(後遺症が何級なのか)を聞くことに変わりはありません。

任意保険会社から聞かれた場合と、被害者直接聞いてきた場合とで、意見を変えることなんてありません。

自賠責調査事務所も、きっと忙しいはずで、いちいちそんなことを考えていられないという現実的な事情もありますが(笑)、それだけじゃなく、被害者請求だろうが、事前認定だろうが、治療の経過は同じなので、判断資料は同じなんです。

自賠責調査事務所は、後遺症診断書や、CT画像、診療報酬明細書など、治療の経過を記録した資料に基づいて後遺症の等級を判断しますが、この判断資料が、事前認定なのか被害者なのかで違いは出ません。

全く同じ資料です。

だから、理論上判断に違いは出ません。

ただ、違いがあるとすれば、

・利害関係

・オプション

この2つだと思います。

事前認定は、任意保険会社が自賠責保険会社にお伺いを立てるわけですが、任意保険会社は、後で自賠責から回収できるにせよ、お金を払う立場なので、なるべくなら、後遺症の等級が認定されてほしくありません。

例えば、後遺症が14級と認定されると、任意保険会社は、後遺症慰謝料75万円までは自賠責から回収できますが、それを超える部分は、財布を痛めることになります。

訴訟となった場合は後遺症慰謝料として110万円の支払いを余儀なくされるので、14級と認められてしまうと、任意保険会社も110万円から75万円を差し引いた35万円は、支払いを覚悟しなきゃいけません。

だから、任意保険会社は、なるべくなら等級が認定されてほしくなくって、そんな立場にある任意保険会社から自賠責保険会社にお伺いを立ててもらうと「頼りない」、ということは言えると思います。

それと、被害者請求の場合は、自分で書類を用意することになりますが、必要書類の他に、自分でいろいろと資料を付け加えてもいいわけです。

「陳述書」といって、必要書類だけでは説明が不足する事情について詳細に記載した書面を提出することもできます。

もちろん、この「陳述書」は、必要書類には含まれていないので、等級認定を判断する自賠責調査事務所がどれくらい考慮してくれるのかはわかりません。

しかし、事前認定だと、こういった陳述書を出すことはできません。

だって、任意保険会社が自賠責保険会社にお伺いを立てるわけですから、どの書類を出すかどうかは任意保険会社の判断です。

必要書類を揃えればお伺いを立てることはできるわけですから、それ以上に、書類を追加する義務が任意保険会社にあるわけではありません。

被害者請求であれば、自分で書類を揃えるからこそ、創意工夫を凝らすことができます。ここが、大きな魅力だと思います。

おそらく、交通事故を専門に扱う弁護士だと、後遺症等級認定の結果がめちゃくちゃ大切であることを熟知しているので、その弁護士独自のノウハウに基づいて、後遺症等級認定を勝ち取る手法を身に着けていると思います。

ここで、設定の話に戻りますが、今回の事故の場合、正直なところ、等級を認定してもらうことはかなり難しいです。

首と腰に痛みが残っているとはいえ、その根拠は自覚症状しかありませんし、それなりに大きな衝撃が加わったとはいうものの、バンパーと右テールランプを交換しただけで修理が完了する程度の事故です。

僕が現在31歳であることも踏まえると、首と腰の痛みが、「後遺症」、つまり、「一生改善が見込めない症状」と判断される可能性は低いでしょう。

そうであるなら、僕は、後遺症の等級認定を勝ち取るためには、かなり創意工夫が必要と考えて、最初から事前認定はやりません。

被害者請求の必要書類を揃えた上で、事故の状況や治療の経過を詳細に説明した「陳述書」を作成し、それも一緒に提出します。

それでもダメな場合があるでしょう。

ダメなら「異議申し立て」といって、自賠責調査事務所の本部に再調査を依頼することができるんですが、そこで判断が覆ることはまれです。

僕なら、異議申し立てはせずに、訴訟を提起すると思います。

訴訟を提起したとしても、裁判官が判断を変える可能性も低いですが、異議申し立てを経て、その後に訴訟を提起すると、どんどん解決が遅れてしまいます。

それよりも、被害者請求で最善を尽くし、良い結果が出ればそれでいいし、結果が出なければ、訴訟を提起して、被害者請求と同じように、事故の状況や治療経過を説明します。

それでダメなら、諦めます。

今日はこの辺にします。

それではまた明日!・・・↓

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