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小学生からの軽いトラウマについて

 この間、家の近くのマックに行った。マックの入り口に入ろうとした時、横から2人組の男の子たちが来た。

 そこで一瞬、足が止まった。なぜなら、1人の男の子が、ある同級生と似ていたからだ。

 結局全然違う人だった。よく見たら、背もその人より小さいし、多分年下だ。

 その男の子に似た、同級生のY君が私はとても苦手だった。

 Y君と私は幼稚園から一緒だった。特に接点は無いのだが、ある時、幼稚園の行事の係に来た私の母にちょっかいを出したのだ。

 係の仕事をする母に、Y君と別の2人が母のおしりをつついたのである。

 私はその現場にいなかった。後で母が「こんなことされたのよ〜」と言っていた。別に怒ってはいなかった。
 私は子供ながらに、「信じられないことをしてくれたな」と思った。接点もろくにない同級生の母親の尻をつつくだと?という感じだ。ありえない。

 私の幼稚園では、確か年長の時、男の子が女の子のスカートをめくることが流行っていた。今思えばかなりの悪ガキだと思う。

 私はずっとアンダーパンツと呼ばれるものを履いていたので、めくられたとしてもパンツは見られない。

 帰りの会の時、先生が別の子の対応をしているなどの目を離している時、男子たちはスカートをめくるのだ。

 私は幼稚園児ながら、気持ち悪く思っていて、絶対にめくられないぞ!と思った。仮にめくられても、彼らの思うような結果にはならないが。

 きゃあ!とかやめて!とか言う反応を楽しんでいたのか、よく分からない。

 幼稚園の時から、Y君はグループの中心にいるという感じだった。接点は無いものの、私は小さい頃から人間観察をしていたので、なんとなく感じていた。

 Y君は「〜しろ」という命令口調をよく使った。それは小学生になっても同じだった。

 幼稚園の同級生たちは約半分になって、地域にある2つの小学校に入学した。Y君は家が私と同じ方向だったため、同じ小学校だった。

 同じ地域にある小学校とはいえ、隣の小学校と私の通う小学校の治安は別物だった。

 よく隣の小学校にはいじめがあるとか、きかない児童が多いだとか、保護者にヤンキーが多いとか色々噂されていた。

 一方私の通う小学校は逆だった。見た目からして派手な人は少なかったと思う。

 そんな学校の中でも、Y君だけはやはり違った。「王様」という言葉がふさわしいと感じる。彼の一言で友達が動くというところからそう思う。

 クラスメイトに真面目で控えめな男の子がいた。彼も同じ幼稚園だった。私はそのK君とは接点があったし、母親同士も交流があった。

 しかし小学生になってからは、クラスで男女がハッキリ分かれたので話すことは少なかった。

 K君はかなり静かな子で、頭もいいから、よく先生に褒められていた。賞もとっていた。

 そんなK君を、きっとY君は好きではなかったのかもしれない。

 ある学年の朝の会では、日直が毎日決められたトピックを話すということが行われていた。自分の興味のあること、ニュースなど先生が日によって変える。

 ある日の日直はK君で、どんな内容の話をさせられたかは忘れたが、とにかく賢そうな内容だった。

 私なら思いつかないようなことだったと思う。多分、他の子も。

 話し終えたあと、先生はK君を褒めた。「よく調べたね〜」とか何とか言った気がする。

 どんな話でも、日直が話し終えたあとは拍手をすることが決められていたので、当たり前に拍手したのだが、明らかに音が小さかった。

 Y君はリーダーである。仲間が常に数人いる。なのでY君の一言は効力がある。

 私は何度か、K君と他の児童への拍手の音に差があると感じていた。

 その時から、軽いいじめが始まっていたのだと今は思う。

 結局、K君への嫌がらせは強まった。

 Y君というのは、一言で言えば姑息な人間である。先生は授業が終わると教室を出ていくのだが、それを見送るといじめが始まる。

 私がよく見たのは、3~4人でK君を囲み、蹴るという場面だ。

 先生が戻ってきたり、先生が休み時間中もいるときはやらなかった。

 また、何か賞をとったとかでK君が褒められた時。K君は嬉しそうに褒められてる間ニコニコしていた。先生が「こんな賞をとったのよ」と話している間。

 そうするとY君は周りの友達に「ニコニコしてて気持ち悪」とか言うのだ。

 K君は優秀なので、同じようなことが他にも何度かあったのだが、K君がそうやってニコニコするとYを先頭に男子たちがつまんなそうな顔や無表情をした。

 K君が高学年になる頃には、褒められてもK君は絶対ニコニコせず、無反応だった。私は完全に「アイツらのせいだ」と思った。

 しかしそうすると今度はYやその友達がわざと聞こえる声で「褒められてるんだから嬉しそうにしろよ」とか「なんで笑わないの?」とか言うのだ。

 私はとにかく性格の悪い奴らだと思った。K君をここまで変えたくせに今度は真逆のことを言うのかと。

 ある学年の時、K君の親は離婚した。人数の少ない学校ということで、すぐその話は広まった。

 するとまた、K君の苗字が変わった。お母さんが再婚したらしい。その苗字は、変わった苗字であった。

 読み方も、その漢字でそう読むのかというような。それから、よりK君への風当たりが強くなった気がする。

 男子(特にYのグループ)がK君の苗字を本当の読み方ではなく、間違えた読み方(字をそのまま読んだ)をしてからかった。

 先生がK君の名前を呼ぶとわざわざ「よっ、K」と苗字を連呼した。

 私からしたら、自分の苗字が別のものに変わることが結婚以外であったら、かなり戸惑うと思う。
 
 K君が何度も、わざとと言ってもいいくらい、新しい苗字を連呼されることを、どう感じていたのだろう。

 私は当時、なんでK君の苗字を連呼するんだろうと不思議だった。

 しかし、何か理由があって、わざとやってるというのは想像できた。

 Y君がK君を嫌うのは、単なる嫉妬だと思う。
 だからこそ、そんなY君が苦手なのである。


 時は変わり、中学生になった。K君とは中学校は別だった。しかし、Y君とは一緒だった。

 Y君はいつの時代も乱暴だ。いじわるだ。

 中学でもいじめがあった。とある子が、クラスで誰からも口を訊かれなくなったのだ。

 私は別のクラスで、そんなことが起きていたことは、後になって知った。

 友達が、「噂だと、Yがクラスメイトたちに、「アイツとは今後話したらダメだからな」って言ってたって」と言った。

 そのクラスでは、Yが中心人物だったらしい。

 私はバカバカしいと思った。何がみんなを惹き付けて、指示に従わせられるのか疑問に感じた。

 私は幼稚園の時から、なんだかYが苦手で、小学生の時の蹴るところなどを見て、完全に苦手だ。

 それなのに、なぜ周りの子は惹かれるのか。さっぱり分からない。

 なぜそんな暴力性のある人間が?

 従うクラスメイトにも飽き飽きした。

 ある時、同級生の男女が付き合い始めた。女の子はみんなに優しい可愛い子という印象だった。

 男の子の方は意外な人物だった。正直、考えたことも無い組み合わせだった。

 ある日、ある噂がされた。

 「この間、AちゃんとY君が2人きりで遊んでたんだって〜」と。そして「実はAちゃん、Y君が好きらしいよ」と。

 なぜじゃああの子と付き合ってるんだ?と私は思ったのだが、その彼とYは友達だからという理由だった。

 私は彼らのグループについては知らないので、Aちゃんが彼氏の友達達と遊んでいたかは知らない。しかし周りのクラスメイトは、彼氏とつるむことで、本命のYと付き合えるきっかけができるからだ、と話していた。

 私はその時も、どうしてこういう人がモテるの?と思った。

 Aちゃんは、幼稚園も小学校も私たちとは違うから、彼の暴力性に気付かないんだ。K君のことを率先していじめていたことも。 

 そんなY君も高校生になった。高校も一緒だったが、彼は高校生になると急に大人しくなった。

 彼はこれまで、言葉の圧や蹴るなどの行為によって、多分周りを黙らせていたのだと思う。

 しかし高校は色んな地域から来てる子が沢山いて、面白いことを言って周りから慕われる子が何人もいた。

 Y君は常に一番が好きそうな人だった。同じ塾に通っていた時も、周りの同級生たちと点数や進み具合を比べていた。

 問題やテストを解き終わるスピードをなぜか1人で競っていた。そして先生に「間違ってるよ」と言われていた。

 彼はきっと一番にこだわっていた。だから何かできるとすぐ大きい声で自慢した。

 小学校の高学年の時、彼を若干贔屓していた女の先生がいたので、自慢はエスカレートした。

 しかし高校は違う。同じクラスに学年一番の成績をとり、スポーツ万能である男の子がいたし、お調子者で笑わせる子もいた。若干オタク気質だけど、とても物知りで博士だとみんなに慕われる子もいた。

彼は完全に大人しくなった。高校では、暴力で黙らせたりする問題児もいなかった。

 私はその様子を日々見ていて、「案外簡単に静かになるんだな」と思った。

 同じ学校を出てきた友達同士で集まっても、それぞれが高校の友達もつれている為、昔みたいに仲間のリーダーであるようでもなかった。

 また、彼はコンプレックスがあって、常にマスクをしていたので、女子の中でよく「なんでいっつもマスク付けてるの?」と言われていた。同じ学校出身の同級生がコンプレックスがあるからだよと言ったら色んな意味で笑われていた。

 私は高校生の彼を見ていたら、なんとも虚しくなった。

 つい先月まで、Yが小馬鹿にして笑いものにしていたある男の子は、高校のクラスでクラス中の人気者になった。なんなら先生からも人気だった。

 じゃあYは?
 その男の子がギャグをした時、なぜか解説したり、つっこんでいた。

 その様子を見ていたが、芸人のように笑われるツッコミではなさそうだし、解説されなくても十分分かるし面白かった。彼のそのような行動が注目を浴びている感じはしなかった。

 私は彼を見て、無理してるなぁと思っていた。

 人気者になったあの子に嫉妬したんだろうか、また。流石に前みたいにいじめられないから、その子の隣に常にいるんだろうか。

 真偽は分からないが、高校生の彼は虚しさを感じさせた。偉そうな態度はもうしなくなった。

 しかし私は未だに苦手である。あのような人間は苦手だ。

 彼のような、いわゆるウェイ系?みたいな人間が苦手だ。

 決してそういう人たちが暴力を振るうとか、そんな話ではなく、そういう人が苦手なだけである。

 やはりそう思わせたのは、Yの存在が大きすぎる。なにせ、幼稚園から見てきたのだから。

 そして未だに、何度考えても、彼が他を魅了する力がどこにあるのか、なぜみんなを従えさせられるのか、分からない。


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