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千億祥也 詩集『不思議な手紙』より 第2部 ❝妖精の詩❞(抜粋)

 初めに読むこと【noteに投稿する私の記事等の著作物の閲覧・引用及び利用・実践等の注意事項】(2023年5月25日更新) 


 
雨が降れば
甘橙orangeいろベレー帽béretを被った 妖精がリーダーになって
シダ植物の茂みの葉陰で 生態会議が始まる

エオリアが主催する 二五〇〇年に一度の『大自然復活祭』で
聖なる羽翼うよくふるうために 
世界中の名だたる妖精たちが 日本に集まっていた

こんにちは

シダ植物の葉陰を覗いて 私が挨拶すると
仏蘭西フランスから来ていた
淡黄蘗うすきはだに身を包んだ妖精が
私の突然の語り掛けに驚いて
恐る恐る 日本語でささやいた。

… あなたに 私たちが見えるのですか?

私は 応えた

はじめまして
私は あなたたちの仲間を知っています
この地上の時間にして
今から 凡そ 二〇年くらい前になります
私の妻がこの世界を去る時に
あなたたちの仲間は 姿をあらわして
意識を失った 妻を喜ばせてくれました

ところで あなた方の世界は
浄化された世界の一つに数えられていますが
こんな泥だらけの茂みの中で
一体 何をしているのですか?

ちょっと待って!
人間milieuが妄りに 我々へ語り掛けることは ゆるされていない。

甘橙色のベレー帽が
私と 淡黄蘗の妖精との会話を遮った

つまり、大英博物館 の ❝あれ❞ ですか?

私が 甘橙色のベレー帽に おどけて言うと
彼は りんとして主張した

秘密を守らなければ
我々の世界に 立ち入ることを許さない
昔から そう云う仕来しきたりで
連綿と成り立ってきた世界なのだ

通行手形ならありますよ

私はそう云って
聖別された 水星の 最後のペンタクル を示した
すると 妖精のリーダーの表情が 微妙に 優しく好意的になった

こんなものを視るのは 三〇〇年振りだ。C.R.C の再来か!

私は 甘橙色のベレー帽の言葉に
❝歓迎❞ の合図を聴いた
どうやら出身は 仏蘭西ではなく 独逸ドイツらしい。

解かり合えたところで
あなた方に gift があります
これは 亡き妻が ピアニストとして
この世界に遺して逝った演奏です

国民楽派の巨匠 Edvard Hagerup Grieg が 作曲した 
抒情小曲集 ❝Lyriske stykker❞ の 最初の曲「アリエッタ」です

美しい作品なので
あなた方にとっては
丁度良い 開幕の Ceremony になるでしょう。


                 


ありがとう

甘橙色のベレー帽が言った

この リーダーの感謝の気持ちを説明するように
仏蘭西から来ていた 淡黄蘗に身を包んだ妖精が言葉を繋いだ

あなたの 水の 幻視表象diorama二度目にどめ悪戯いたずら
私たちを呼び起こしたのです
一月ひとつき … いいえ、十日とうかの間だけ
私たちのために 祈って下さい
私たちが 尊い使命を果たせるように ……
そして 今日まで 
決して おおやけ
人間へ 知らされることの無かった 私たちの存在が
『大自然復活祭』によって 伝えられる 時が来たことを 

祈って下さい
私たちのために
私たち妖精は 人々の平和のために
永いあいだ 力を尽くして来たのです
教えてあげて下さい
私たちが ここにることを ──

私は 淡黄蘗の妖精に応えて云った

あなた方の姿は 人には見えないし
この 水の幻視表象 の悪戯が
だれの心に映るだろうか?

妖精たちは みな 口を揃えて云った

神の 御心みこころによって それが される筈です
 
私は返す言葉を失って しばらを置いていたが
生態会議の 幕引きを告げる鐘が響いたので
聖者たちの 福音ふくいんを伝えた


一つの愛を 得るために
多くの愛を
犠牲にしなければならないような 世界は
やがて 崩壊していく運命を辿たど

神があなたがた すべてを愛しているように
あなた方も すべてを愛する心を持つなら
永遠に 崩壊しない世界が地上に実現する

自らが すべてを欲しがるのではなく
自らが すべてを愛するのだ
まことに 神は 何も欲することなく
あなた方 すべてを愛している

他の人に 心を傷付けられたり
理不尽な 暴力や権力に 苦しめられたり
自らの運命が 呪われているように 思える時
あなた方は
人の ego の 愚かさによって
虚しく 踊らされている現実に 気付かねばならない

そこには
人の ざまに対して
神からの 慈悲深い 問い掛けがある

自ら 愛を与えられていない と云うなら
他に 愛を与えれば 良い
自らが 愛を与えられるほど
他に 愛を与えていない 浅ましさを
まさじなければならない



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