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令和の歳時記 ササユリ

ササユリ

人間にとって、いや日本人にとって梅雨の季節は「洗濯が出来ない」とか「ジメジメして気持ち悪い」などの言葉が口から溢れてくる。これらの言葉は一見、不平不満に聞こえるかもしれないが、毎年の風物詩と考えれば悪口ではないだろう。

家族、友人、近所の人と話すコミュニケーションツールである「挨拶」と思えば楽しい気持ちになる。健全なる「不平不満」と言えるだろう。
ましてや、この時節が「快適だ」と心身から言うようになったら逆に危険なサインなのかもしれない。



自然散策が好きな人にとって、梅雨は結構楽しめることはご存知だろうか。新しい「生命」さらに先に生まれた生き物たちが思いの丈「成長」する季節だからだ。改めて正確に訪れる地球のサイクルに敬意の念を評したい。



梅雨の時節の森へ行くとこのササユリに出会える。背丈は大抵50センチ位。淡いピンク色の花びらと真っ赤な花粉、それと緑色の葉っぱのコントラストが絶妙な雰囲気を醸し出とても美しい。更に森の中から運ばれてくる柔らかな風にゆったりと揺れている姿は上品でしかも堂々としている。




正にこの季節の森の『女王様』と言えるだろう。そして、ササユリが何本も咲いている森はとても甘い豊潤な香りに満ちあふれている。芳醇な理由は天からの恵みの雨が地中染み込み、木々の枝葉にも行き渡り、そして空気中にも霧散しているからだろう。

吸い込んだ空気の香りは、疲れた心身を慰めてくれるようだ。言うなれば天然のリラクぜ−ションを体験できるのである。



もともとササユリという名前の由来は葉っぱの形が笹の葉に似ているから名付けられたものだ。花びらを横から見るとラッパ状で15センチ程あり、ユリ科の中では大きい方である。

私がササユリの前に座りうっとりしていると、マルハナバチが何度も訪れ、花粉を運んで行く。マルハナバチがあまりにも一生懸命なのでどんな味がするのか興味を持った。そしてササユリの花粉へ舌を近付けぺロッと舐めてみた。とても甘い味がする。



花自体はどんな味か?ちょっと悪い気がしたが、少しだけちぎって食べてみた。ウーン、何となく苦い気がする。

やはりササユリは見て楽しむ花であり食べる花ではない。

この『女王様』は6月~7月までしか咲かない。

気のせいか梅雨の時節のササユリの方が潤いを感じる。私は、小雨を狙って毎年とっておきの森へ行ってこのササユリとの対話を楽しむことにしている。


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