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【ネタバレ感想】映画『イン・ザ・ハイツ』「アメリカの人種差別・偏見に終わりはあるのか?」「若者の夢を打ち砕く現実」

「気分を明るくさせてくれる映画」です。特にこのコロナ禍の中で、公開されるということで、映画を観ている時、そして観終わった後も、高揚感が残ります。映画を観ることにおいて、損得勘定をお持ちの方なら、尚更「元とったあ」と叫ぶこと間違いましでしょう。


映画『イン・ザ・ハイツ』の楽しみ方は、映画で展開されるラップミュージックに身を任せて143分を過ごすことが良いと思います。頭を一切、空っぽにして鑑賞してください。

一応、映画の内容について書きます。「差別・偏見だらけのアメリカ社会で、成功できるのは白人だけ」という強烈なメッセージが込められていることを忘れてはいけません。

登場する四人の若者はスペイン語を母語とするラテン系男女三人と黒人青年です。彼らは夢を持っていますが、人種的な差別に遭遇します。大きな夢を諦めざるを得ない結末にがっかりしますが、劇中に流れるラップミュージックとダンスによって掻き消されてしまいます。

一見、「ハッピーエンド」的な終わり方ですが、実は「絶望的なアメリカ」を表しています。ラテン系を主軸に製作された映画で思い出すのは『ウエスト・サイド物語』です。1961年製作ですから、ちょうど60年経ちます。

でも実際、アメリカ社会のラテン系の人たちの境遇ってまったく変わっていないことが如実にわかります。

ただ本映画『イン・ザ・ハイツ』の出演俳優たちは全員がドミニカ、プエルトルコ、キューバ系出身の人たちが演技しているのは救われます。『ウエスト・サイド物語』では白人が茶色いメイクをして演じていました。

さて、本映画『イン・ザ・ハイツ』のヒットをさせたのは間違いなく監督のジョン・M・チュウと原作者のリン=マニュエル・ミランダと言えます。

アジア系とドミニカ系です。特にチュウ監督は全員がアジア系の映画『クレイジー・リッチ』で大成功を収めています。

世界の映画ビジネスにおいて、非白人系の映画製作を目指すパイオニアとして期待されています。「多様性」を大事にしています。

原作者のミランダは自身の差別された生い立ちを物語として紡いでいます。彼は作詞、作曲、脚本、演技まで行うマルチアーチストです。


さて、わたしたち日本人にとって、アメリカ社会で生きる非白人系の人たちの辛い境遇など知る由もありませんし、興味もないと思います。同様にアメリカ人、インド人、フランス人なども日本の格差社会に興味を持たないでしょう。

本映画『イン・ザ・ハイツ』の鑑賞方法は「思いっきりバカになる」のが、第一条件ですが、若者が夢を目指せる社会とは「なんぞや?」について、深く考えさせられる物語です。

繰り返しますが、アメリカ社会は根強い人種差別と偏見があります。わたしたちの日本は肌の色で差別されることはほとんどありません。「日本って案外良いかも」と再認識すること間違いなしです。


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