【小説】生かされているということvol.8
待合室に戻ってきた私は、家族や親族に妻の様子を伝える。
もう待つしかない。
その後入れ替わり立ち替わりに人が来てくれた。
ただ、ここにコロナの影響が影を落とす。
ECUに入れるのは、家族のみという制限。
コロナ禍でなければ、全員入ることができたのに……
ちはるも、みんなから元気をもらえるのに……
もし目が覚めない場合は、会えないまま……
目が覚める確率は50% ……
また、悪い考えが思い浮かぶが、すぐに「絶対に目を覚ますから!」と言い聞かす。そんなことを繰り返していた。
気がついたら10時を過ぎていた。
緊急搬送されてからの1分が恐ろしくながく感じだが、家族や親族が来てくれてからは、時間が早く過ぎていった。
妻は、現在低温治療中である。私が、病院にいてもできることはない。
子ども小さいため、家に帰ることにした。
妻がいない家に。
子どもをお風呂にいれて、ごはんを食べて……
いつものルーティンをこなす。
娘は、妻がいないが、元気に過ごしてくれている。
それがせめてもの救いだった。
いつもは横にいる妻がいない。
そんな無味乾燥な夜を過ごした。
恐ろしく長い1日が終わった。
5時前から起きているので、眠れると思ったが、まぶたを閉じると妻の苦しそうな顔が思い浮かぶ。心臓がけいれんして苦しそうに息をしようとしている妻の顔がどうしても思い浮かんでしまい、どうしても目が覚めてしまう。
ほとんど眠れないまま、朝を迎えた。
会社には1週間の休みをもらえた。また、私の母も1週間いてくれたので、朝7時には妻の見舞いに行けた。
見舞いの時間は、朝と昼と夕方だったため、朝7時には病院にいた。
少しでも近くにいて力になれたら、そんな思いだった。
朝7時、ECUに入り、妻の顔を見る。
昨日、切れた唇は少し治っていた。また、顔も穏やかだった。
いい兆しか?顔色もいい感じする。
看護師さんに様子を聞く。
「昨日と様子は変わらないです。低温治療中なので、治療が終わらないと何とも言えません。旦那さんは、眠れましたか?」
看護師さんのやさしさが、うれしい。
「待合室にいますので、なにかあれば教えてください」
と伝えた。
待合室で待つことにした。
その時はまだ知らなかった。そこから長い日々がはじまることを。
6月9日(火)、時刻は、7時半を過ぎていた。
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