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【小説】生かされているということvol.6

時刻は6時50分を過ぎた。

場所は緊急搬送された治療室前の待合室からHCU・ICU前の待合室に移った。



間もなく看護師さんから入院の説明を受け、書類にサインをした。

受け取ることなく、足早に去っていった。治療で忙しいのだろう。






しばらくすると、仕事前にも関わらず妻の兄・親族が来てくれた。

事の成り行きを説明すると、自分の気持ちも落ち着いてきた。



皆、口々に「助かってよかった。命だけでもあればありがたい」と。


そうこうしているうちに、時刻は7時半になった。



コンコンというノックの音。


「ドクターからの説明があります。こちらにお願いします。」





家族だけという話だったがそこにいた親族も含めて全員で話を聞いた。


ドクターは、淡々と話を始めた。

冷たくも感じたが、一方で、信頼をおける話し方でもあった。


「心臓が止まった原因は、心房細動です。心臓が痙攣して、ポンプとしての役割を果たせていない状態でした。そして、心房細動はAEDがなければ助かっていません。


今回、発見が早く、心臓マッサージがされていたこと、AEDができたことで一命はとりとめました。ただ、どのくらい脳に酸素がいっていなかったのかわからない状態です」


次に、緊急搬送されてから受けた検査について説明を受けた。


「カテーテル検査では、心筋梗塞は見られず、また、心臓の動きが悪い所見はなかったです。


血液検査についてですが、異常にカリウム値が低いです。2.5mEq/Lしかないです。通常は3.5以上から5.0が正常範囲です。


カリウム値が低いと、心房細動になるリスクが上がります。


今回は、カリウム値が低いことで心房細動が起きたと思われますが、どうして低いのかは現時点ではわかりません」


そして、衝撃なことを言われた。なにやら血液検査?の項目の内、いくつかの値を示しながら、








「目が覚めるかは、50%です」




「……」






沈黙の時が流れた。


覚悟はしていたが、ドクターから言われると一気に現実化した。


時刻は、7時半を過ぎていた。

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