ロックフェラーセンター

外資系で始まり日系企業に行きついたあるビジネスマンの半生 ~3

今海外のMBAに留学すると、日本企業についてのケーススタディーはどれくらい取り上げられるのであろうか? 80年代世界最強のビジネスモデルを作り上げたと賞賛された日本企業はMBAでも研究の対象であった。 円高を背景にトヨタのカンバン方式、アメリカの象徴となる企業・資産を買収してしまった日本(アメリカの魂と言われたロックフェラーセンターを買収した三菱地所、ファイヤーストーンを買収したブリジストン、コロンビアピクチャーを買収したソニー)。 事実私の留学時代前半には1ドル80円を切ってしまい、そのレートでドルを買っていれば留学費用もかなり安くなっていたであろう(留学前に110円前後で全額ドルに交換してしまった私はその恩恵にはあずかることはなかったが。。) 当時海外出張や海外旅行をすると、どこへ行っても食事・買い物がとても安く感じられた。今サンフランシスコのダウンタウンで1杯のスープを買うと、$10もする事実は当時はあり得なかった。  

今思い返せば、その頃のアメリカは必至で世界の企業の分析をしていたのではないか。授業で取り上げられたアメリカ企業に関するケーススタディーを当然多く議論したが、80年代から90年代前半のアメリカ企業のビジネスモデル論に際立った成功例が多かったわけではなかったと思う。ウオルマートの地域独占的小売論、アムウエイの宗教的企業文化論、アメリカン航空のデータベース・マーケティング。。 スウォッチの新規事業開発論。 GAFAをはじめとする現代の最先端の経営手法と比べるとかなり初歩的な議論が多かったように思う。 

しかし当時のアメリカのビジネス界・アカデミアは貪欲に学ぶ姿勢があったし、今もそれは続いているのものと推察する。なぜトヨタはモノつくりで成功したのか。日本企業の競争の源泉は優秀な労働力なのか。終身雇用制度の強みをいかにアメリカの社会で取り入れるべきか。 日本企業の資本コストを低く抑えているメインバンクシステムはなぜできあがったのか。半導体技術で最先端を行く日本は世界のIT業界を牛耳ってしまうのではないか、等々。 

ビジネスが学問の対象であるということは、当時日本でどれだけの人が理解していたのであろうか? マクロ・ミクロ経済学、会計学、法律学等の実学は日本の大学でも教えていたが、生産管理、企業文化・組織論、マーケティング・リーダーシップ論等の企業経営に関する考え方の基礎となる分野を学問の対象として、グローバルに成功しているケースを分析し、発展させようとしていた経営学論の背景にある思想を今の日本のビジネス界も学ばなければいけないと思う。 一部の国立・私立大学や学校法人としてビジネスを教える講座を持ち始めているが、まだそのレベルは世界のMBAに比べられるものではないと評価されてしまう危惧を感じる。 人にやさしく、長期的な人事制度が日本企業の強みと言われていた当時と今の日本企業を比べた場合、日本企業の人事制度のデメリットがメリットを凌駕してしまっている。

100年以上続く伝統的な企業に中途入社した私は、この失われた30年をいかに取り戻すことができるのかをこのノートの中で考えていきたいと思っている。      

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?