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4.暮らす意味のある町(下川レポート)

こんにちは、慶應義塾大学4年・SMOUT編集部下川町支局レポーターの小川功毅です。(企画の概要:https://smout.jp/plans/7329#project-report-8332

私は下川町で、“暮らす意味のある町”が存在するということを実感しました。わざわざその町を選んで暮らす“意味”がある、ということです。

私はこれまで、学校や職場への距離や大きな駅に近いこと、生活に必要な施設が充実していること、家賃帯などの“スペック”で住む場所を選んでいました。
こうした基準から眺めると、下川町は低スペックでしょう。最寄りの駅までバスで40分、そもそも都市部からは大きく離れていますし、24時間営業のコンビニはなく、大手銀行のATMもありません。さらに言えば、首都圏でしか暮らしたことのない私から見ると、「下川町」という名前すら知りませんでしたし、田舎の小さなの町など日本には数え切れないほどあります。

しかし、この下川町をわざわざ選んで暮らしている人たちと接するなかで、人それぞれに“この町に暮らす意味“があり、それは他でもない下川町でなくてはならない、ということを感じました。また、私自身もお試し暮らしの滞在をするなかで、移住というのはこうした“暮らす意味のある町”を実感することによって決断されるのだろう、ということを腑に落ちて理解することができました。

今回はこの“暮らす意味のある町”について考えていきます。

・私の“下川町に暮らす意味”

私が感じた、私自身が下川町に暮らす意味についてメタ認知してみると、最も大きな要素はやはり「人」です。過去のレポートにおいて何度も言及しているように、下川町の人々やその繋がりは大変魅力的です。

私は下川町で、「つながりが、つながっていく」ということを感じました。どういうことかと言うと、知り合いからまた新しい人を紹介していただき、さらにその新しい知り合いからまた紹介していただき、という紹介の連鎖が止まらないのです。一度つながりが生まれてしまえば、水面にひと粒の水滴が垂れたように、人とのつながりが同心円状に広がっていきます。

こうした地域の人とのつながりというものは、私にとって非常に新鮮でした。職場や学校が同じわけでもなく、何かの活動やサークルで知り合ったわけでもない人たちとの接点など、ほとんどありません。隣に住む人の顔も名前もよくわかりませんし、近所の人との繋がりは皆無です。東京で人との繋がりを持つためには、職場や学校、趣味、活動といった明確な共通項がなければなりません。そして、人を紹介するという行為のハードルも高く、仕事や恋愛などにおける明確な目的がない場合には、ほとんど人を紹介することはありません。

しかし、下川町においては「下川に住んでいる」というだけで共通項になってしまいます。職場も学校も趣味も活動も、何一つ重なっていないけれど、この土地に住んでいるというだけで、それがれっきとした共通点になってくれるのです。

「東京に住んでいる」というのは人口1000万人のうちの1人ですが、「下川に住んでいる」というのは人口3000人のうちの1人であり、その規模に比例して心理的距離も3000倍以上に近づくのかもしれません。そして、人を紹介するときにも、この「下川に住んでいる」という共通点が担保となって、気軽に集まれるのでしょう。紹介する人もされる人も、どうせ下川町に住んでいるのです。

次に、このようにして出会ってきた下川町の人たちは、温かくて、おおらかで、面白くて、芯があり、尊敬できる、そんな人ばかりでした。上記のような盛んな交流により、常に多様なバックグラウンドを持つ人たちと関わっているからなのか、どなたも懐が深く、素敵な方ばかりです。なぜなのかは私にはよくわかりませんが、確かにそうなのです。こればっかりはどうにも言葉で表現できませんので、ぜひ一度地域に足を運んでみてください。

・家を出て、町に行こう。

こうした「人とのつながり」があるのは、私にとって下川町だけです。同じような規模の、同じような特徴を持った、他の地域では代替できません。私は、あの人たちがいる下川町だからこそ、そこに暮らしたいと思えるのです。

“暮らす意味のある町”というのは、いろいろ調べて見つけるものではありません。その地域に暮らし、たくさん遊び、いろいろな出会いのなかで、育まれるものです。

移住や引越しを検討しているものの、どこにしようかイマイチ踏ん切りがつかないと言う人こそ、その地域にとにかく行ってみるべきです。私たち自身が、その地を歩いて、食べて、話して、遊ぶことで、ふつふつと“この町でしか味わえない意味”が湧き上がってくるはずです。

家を出て、町に行こう。その土地でなければならないという“暮らす意味”を育んで、その理由を味わいながら、今この町に暮らしましょう。

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