キラークライアント10　「再転居」

性懲りもなく　彼は再転居してきた


正確には　彼の故郷の隣町に

この時点で　

カウンセラーとクライアントという関係は

こちらからの申し出により解消した

何かあれば　下町の千ベロで　呑み代払え　っつーことで

理由は色々あったが　正直に言えば　カウンセリングが成立していないと認めてしまったからだ

それなら　縁切りで構わないはずなんだが

骨は拾ってやる　と　約束した以上　この喜劇を見届ける義務があると思った

こちらは愉快であるはずもない

犯人が解っている推理小説を　無理矢理読まされているような感覚

そもそも　旦那居るんだぜ

もうあの頃のように　お互い独身者じゃねーんだよ

それでも君は　ジェットコースターのような人生を　選択したわけだ

若くも無いのに

毎日　一喜一憂しながら　

まずは

君が用意するであろう

「不倫」という　ドツボに　獲物が入ってくれるのか？

また昔のように

「エサ取り」ばかりの素人漁になるんじゃねーか



こうして　カウンセラーとクライアントではない関係が　始まった

もう　何でも有りだ

気に入らなきゃぁ　説教もする　殴りもする　

それが嫌なら　さっさと縁切りしろ

そんな捨て鉢な気分満載で

毎週のように

千ベロに　呼び出される日常が

始まった