貧乏と貧乏臭いは全く違う 神仏は貧乏臭い人間を救わない
まだ若かりし頃
ザギンのクラブに通った
勿論 接待だったが
こんな個人事業に毛が生えた程度の会社じゃ
会社の金=個人の財布だからねぇ
随分と無理して 通ったよ
ここのママさんが 妙に若造を気に入ってくれて
何かと 恥かかないように 気を回してくれた
何せ 何も解っていない小僧だったしなぁ
それでも限度はあった
段々と 通う頻度が 遠のいてくる
ある時
ママさんに 「ちょっと来て」と店内で呼び出されたんだ
「あなた 何? その恰好は!」
仕事にかまけて 背広はクシャクシャ ズボンはもう 折り目が見えない程
ワイシャツは ヨレヨレ
ネクタイも 見慣れたお気に入り数本の使いまわし
靴も磨いていない
ヤリ手ババアは こういう感覚は すこぶる 鋭い
「貧乏はしょうがないの でも貧乏臭いのは あなたの責任!」
「そんな恰好で この店に 来ないで!」
「毎月3回を1回にしても良いから きちんとした身なりで来店しなさい」
恥ずかしかった
思いあがった ガキだった
商売人なら 浮き沈みは 常
ダメなときもある
でもこのお説教で 目が覚めた
「貧乏なら 耐えよう でも貧乏くさい身なりは二度とするまい!」
と決心した
っと決めたって 突然 金が降ってくる訳も無し
開運の女神様が 微笑んでくれる 保証も無し
まず 手近で 出来ることから 始めた
シャツはきちんと クリーニングに出す
靴は 少し無理してでも 5足 徐々に買い直した
無理したと言っても せいぜい 5桁の真ん中程度
念願の「5日間違う靴を履く」は実現した
そして日曜日の晩は 靴を磨きまくった
そしたら 玄関の汚れが気になりだした
靴が綺麗でも 玄関がこれじゃぁなぁ・・・
ついでに 玄関の掃除も習慣化した
玄関脇の トイレも そのころから掃除を始めた
今まで 全く 頓着しなかったから
そりゃぁ 酷ぇ 汚れ具合だった
一通り掃除が終わると 何だか気持ちが引き締まった
芳香剤が嫌いだったんで 単身赴任先の金沢で学んだ 御香を 毎日焚いた
自画自賛だが 綺麗な玄関になった
そうすると 不思議に他人様の人柄も 良く見えるようになった
若造がアルマーニを着てても 着たきり雀
シャツはノリが効いてない
靴は 一目で安っぽい 光ってない
こりゃぁもう チンドン屋だ
こういうガキを 接待しても 金を捨てるだけだ
こういう輩に限って ただ酒にタカる
「社長 シャンパンでも 開けましょうよ!」
(内心 あんたの自腹なら いくらでも?)と思う
ホステスのオネエチャンも ノルマがあるから 大助かりだ
喜んで奥に 引っ込む
ところが
持ってくるのは 見慣れない ワインだ
「すいません シャンパンが さっき切れてしまって・・・」
こちらは ホッと胸をなでおろす
お会計時に ママが そっと呟く
「あんな決定権の無いガキに出すシャンパンなんか 無いのよ!」
「勝負はあの本部長さんだから 解ってるわね?」
「ポチ袋は ちゃんと 持ってるわよね?」
はぁ? ポチ袋だぁ? 「持ってないけど・・」
「駄目ねぇ お会計に付けとくから 3万くらいで良いでしょうね」
帰り間際に ポケットに スゥ~っと ポチ袋を入れられる
「お車代ですって バレないように あの本部長さんに 渡すのよ!」
お蔭で この商談は成立した
貧乏臭いのはダメって こういうことも 含む! なんだ
一流のママさんは こんなことまで 教えてくれたなぁ
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