7/13：パーティーとコンビニ

昼過ぎに髪を切り、夜は姉の働いているバーに彼氏と行った。

その日は身内の集まるパーティーのような日で、良いシャンパンが出るしせっかくだから、ということで招待してもらったのだ。
画像はそこで出た牛タンのローストビーフ。
店長お手製のビーフストロガノフもいただいた。

今日シャンパンを開けてくれたどこぞの社長さんはたしか42〜3歳で、その人が連れてきた彼女は私と同じ21歳だった。大きな目がキラキラしている声の高い女の子で、可愛さや存在感、溢れ出る自信、場慣れしている感じなどがあまりにも自分と違いすぎて、同い年とするにはなんだか恐れ多かった。
挨拶としてほんの少し話した時、メイクや全体の雰囲気から高校のダンス部にいた子たちが思い出されて、現代の一般的な「可愛い」を詰め込んだら皆こういう顔になっていくんだなぁ、と思った。多分、年々現実逃避が上手くなってきている。

私と彼氏が同い年だと知った社長が
「僕たちこんなに歳が離れてるんですけど、大丈夫ですかね？笑」
と言うので、
「自分たちが幸せならそれで全部OKですよ！」
と返した。
二人の交際の目的が何なのか知らないけど、まあ今が楽しいならいいんじゃないですか。
同い年だから大丈夫なんて保証は無いし、そもそもこの問いに正しい答えなんて無いだろうし。

カウンターの2つ隣にいた男性に、
「君たちを見ててね、なんかいいなぁって思ったんですよ。初々しくて。2人ともずっと仲良くしていてくださいね。」
と言われた。
おもしろ、私たち初々しいんですって。
実は私たち付き合って3年になるんですよ、お兄さん！しかもよりを戻してから3年なので累計ならもっとあるんです。
私がずっと初心なままだからそう見えるのも仕方がないけれど、悔しさに似た何かを感じた。

店を出る時、店長に挨拶をした。
店長は強面だけどとても気さくな人で、たった2回しか会っていない私のことを娘と呼んで可愛がってくれた。社交としてハグをしたのも嫌ではなかった。けれど、「彼氏の前で男の人とハグをする」ということにどこか心がざわめいていた。気にしたって仕方がないことはわかっているのに。

家に向かうタクシーの途中で、新しくできているコンビニを見かけた。そこから歩いて5分もしない所にコンビニはあるのに、こんな所にどうして新しくできたんだろう？と車内で盛り上がり、家の前でタクシーを降りたけれどそのコンビニまで歩いて行くことにした。デートの延長のようで気分がよかった。

商品のラインナップは他と変わらないのに、新しいコンビニというだけでもうそこは宇宙船の中のようだった。前日村田沙耶香の『コンビニ人間』を読んだせいか、産まれたばかりの大きな無機物の生き物のようにも思えた。
彼氏はガリガリ君を、私はクーリッシュを買い、コンビニの軒先で食べた。

「ガリガリ君のサビって、少し溶けかけた底の部分をかじる時じゃない？」

「クーリッシュは盛り上がりはあるけどサビがないからアイス界のクラシックかもね」

彼氏はこういう話をするのが好きで、私にも友達にもよく振る。この会話をしている時は、ユーモアのセンスに欠けている私でも面白い人になっているような錯覚が得られて嬉しくなる。感覚のすり合わせをしているのに近いのかも。

せっかくタクシーで帰ったのに遅くまでうろついているとあまり意味がなくなってしまうので、早々に宇宙船を離れる。
一緒にいる時間自体はいつも会う時とそう変わらないし、別れ際はいつだって寂しい。でも今日は、家に近づいていくごとに得体の知れないもやがどんどん増して、曖昧な笑みしかできなくなっていった。
帰り道で新しい髪型をたくさん褒めてくれたのに、なぜかそれをうまく受け取ることができない。髪を眺める視線が落ち着かない。隣にいるのに寂しくて仕方がない。まだ一緒にいて、この空虚な心を埋めてほしい。

いつも通り、別れ際にハグをする。
背中に回された手が解かれても、私はまだひしとしがみつく。少しだけ抱きしめ返してもらえるけれど、ゆるく肩を掴まれて離される。帰らなければいけないのは親が厳しい私の方だけれど、この瞬間はいつでも切ない。

店長が前日から煮込んだというビーフストロガノフはおかわりしたし、わざわざ姉が作ってくれたグラスホッパーは飲み干すのが惜しかったし、1本20万円のシャンパンはシャンパンの基準が大きく変わってしまうほど飲みやすくて美味しかったけれど、正直なところ、ガリガリ君のソーダの香りとクーリッシュの後味の方がより深く記憶に残っている。
少し姉に申し訳ない。パーティーが騒がしくてリラックスできず、二人の時間を過ごした感触が弱かったせいだと思うが、やはり私はまだ初心な小娘のままらしい。

でも、もうしばらくはこのままでいいかな。
まだこのままでいたいな。


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napori / Vaundy - strobo