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【詩】侵蝕汚染

私は蝕まれている。
それは果実の内側から崩れる様に似て、
溢れ出る血が絨毯の繊維を満たす様に似て、
月の満ち欠けする様にも、
肉が腐れ果てて逝く様にも似ている。
私の魂は汚染されている。
私の意識は、それとは知らず毒されている。
私は心を、蝕まれている。
故に私は焦らなければいけない。
自らが侵蝕され汚染されている事に。
その私の意識が汚染を更に拡げてゆく。
まるで波にでも乗る様に心の深くへ。
私は考える、病んだ思考を巡らせる。
この侵蝕を何処かで止めなければいけないと。
しかし更に思う。答えが出た時には、多分もう遅いのだ。
この様子は私にしか観る事は出来ない。
何処からとも無く私を蝕み続けるこの何かに対し、
私は如何しようも無く無力な事この上無い。
自らの奥深くで自分を煮溶かす脅異きょういに対して、
如何なるモノも救済の術を持たない。
また、こんな私に道を指し示すモノも何処にも無い。
全てが符合したように表すのは、
まさしく無意味そのものの意味だ。
この途方も無い状況の中で、
私に只一つだけ知り得た事がある。
それは、今現在の所、
何もかもが役に立たず、何一つ成し得無いという事だけだ。

<了>

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