【連載小説】見える二人①-1

プロローグ

 
 伊月耕太は小さいころから人と話すことが苦手で、あがり症で、緊張したりみんなから注目されていると思うと汗が止まらなくなってしまう。
そんな性格のせいもあってか人に関心を持つこともしなくなっていった。そんな彼を両親は特に心配することもなかった、両親からはこう見えていたんだと思う。

友達と遊んだりはしていなかったが、一人でいる方が楽しそうに遊んでいた。

 今年で25歳になった彼は現在人生の岐路というものに直面している。生きていても死んでいてもどっちでもいいと思うようになってきていた。誰にも関心を持たずに友人と呼べるような人間もほとんどいない人生を送ってきた。

そんな彼の唯一ほかの人と違うところは”霊が見える”ということ。両親からは一人で楽しそうにと見えていたかもしれないが、一人で遊んでいたのではなく霊が遊び相手になっていた。
そんな人間だから誰にも関心を持たなくても生きてこれた。でもこの先のことを考えると、生きていて楽しいと思えることはあるのかと考えてしまう。彼は人生の中で知り合いや身近な人の死に触れることが今までなかった。だが、今まで関わっていた人たちは死んでいる人の方が多い。だからこそ実感しにくい。そう考えた彼は人生で初めて自分自身の気持ちに正直な決断をした。

「本日からこちらの会社で働くことになりました。伊月耕太です。よろしくお願いします。」

彼が思った最も死を実感できる仕事、遺品整理の仕事を今日からすることになった。

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