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遺言5

暦は夏ではないが
「抱き合いし恋人」

何通りの接吻があっただろう。

夏の終わりがまだ続いてるのはうれしい。

夏の歌かもしれない。

夏の終わりに聴くのも良い。

私だけのために。

死ぬ間際にこの麗しいメロディーと詩に包まれたい。

「世は移れど君恋し」

あの人から去って4年。

涼しい部屋で夏の夜空を見た。
海風と共に波音までも。

贅沢と共に美しい時間であった。

どうせいつの日か死ぬのだから思い出など必要ない。

しかし、あの人と見た夏の空と海は死んでも記憶しておきたい。
あの人を看取ると約束したのに去ってしまった。

でも、やはり人間は死ぬのだ。
見目麗しく
麗しい刻
麗しい呼吸の音
麗しい腕の中で死に絶えたいものだ。

どうせ死ぬのだから好きな言葉を並べても良い。

歌詞ある音楽は普段は聴かないが
この曲だけは別格である。

何度も何度も聴きたくなる

何度も聴いているうちに
曲が私の頭上からふわりと何かを纏わせてくれる。

「曲」という一言で片付けたくない芸術作品だ。

包まれていくこの感覚はなんだろう。
何を纏わせたのだろう。

蒼月のようだ。

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