顎関節症という歯科医療被害 3-4 画像診断について(2)
(45P)
顎関節症の画像診断
「顎関節症の病態分類で、保存療法
(薬物療法、理学療法など)が
奏功しない場合に手術が選択される
可能性があるものは、顎関節円板障害、
(中略)変形性顎関節症である。」
保存療法とはそもそも何だろうか。患者の身体に不可逆的な外科処置で無駄な手を加えることなく症状が改善されて生活上の苦痛を和らげることだと私は思うのだが、奴ら顎関節症専門医の保存療法は違う。
患者の主訴である痛みがなぜ生じるのか、顎関節に機械的不具合が生じた原因状況も把握できないまま消炎鎮痛剤を処方し、その場しのぎに痛みだけを取り除いて症状を和らげてしまうと患者は治ったものと錯覚して身体を使い続ける。私自身も下顎前突の外科矯正で受けた顎離断手術後に鎮痛剤を使用したが、消炎鎮痛剤は骨折時の激痛でさえ和らげるほどである。顎関節骨格が傷ついて変形していく過程で生じる本来であれば耐え難いはずの激痛も消炎鎮痛剤の服用できっと鈍くなることだろう。
痛みが和らぐことは良いように思うかもしれないが、痛みを感じることには意味がある。痛みが発生する意味を考えず担当医が処方した消炎鎮痛剤で患者がその場しのぎを続けるほど、機械的不具合が改善されないまま異常な顎関節動作を繰り返すことで顎関節骨格損傷は確実に悪化していくのである。
そして、重症化してしまえば占めたもので、彼らがデタラメな外科処置を披露する大儀が出来る訳である。奴らの保存療法は治癒させることなど目的ではなく、異常を訴える患者の原因状況を放置して鎮痛剤や顎の運動を勧めて顎関節の損傷を促進し、不要な外科処置を売りつけるその前準備として患者の状況を悪化させることに目的があるのだ。
理学療法も患者が自分自身の状況を理解出来なければ、専門家のあやふやな説明で生活指導されても効果に実感が湧くこともないことだろう。目標も示されないままただ我慢しろと言われても、何も分からない状態で日常を不自由に生活することは患者にとって苦痛でしかない。でも残念ながら患者へ理解を促す説明力が知ったかぶりの専門医達には全く無いのである。
顎関節の不調を主訴とする患者に対して歯科医師が顎の運動をするように勧めることがよくある。だが、彼らに言われるがまま、患者が大きく口を開く練習をしたとしても、顎関節に機械的異常が生じていては顎の運動など無駄な努力である。無駄どころか拉致の開かない開口運動や前突運動では円板軟骨の前方転位を誘発し、顎関節を無意味に損傷するだけである。
「よく噛むことは身体にいいので、ガムを噛んだり硬いものを食べましょう。」などと啓蒙するネット記事や健康番組をよく見かけるが、噛むことで身体によい作用をもたらすのは顎関節と歯が健康であればこそである。運動は健康に良いからといって腕や脚を骨折したり関節を損傷している人間に運動を推し勧める馬鹿はいないだろう。
しっかり強く噛むことが健康に良く作用するのはあくまでも歯と顎の機械仕掛けに不具合がなく、機能を最低限維持できていればこそである。顎関節を損傷している患者に状況もわからぬまま目的も不明確に顎の運動を勧めるなど理学療法として不適切である。
患者がどのような状態にあるのかを把握して伝え、自分の身体と上手く付き合っていく方法を共に模索するのが医療人の努めである。そもそも手術は方法であってそれ自体が目的ではなく、口腔外科医師の努めは患者を救うことである。だが、自分の手柄を立てたいという中途半端なエリート達が利己的な承認欲求や功名心に駆り立てられ、不合理極まりないキチガイな外科処置で患者の身体を不可逆的に破壊し、医療倫理からはみ出しているのが顎関節症に係る歯科医療の悲惨な現実である。
ここでは顎関節円板障害が次の2つに分類されていることを示している。
「顎関節円板障害(a:復位性〔以後、復位性顎関節円板転位〕、b:非復位性〔以後、非復位性顎関節円板転位〕)」
実は関節円板軟骨は悪条件がそろうと下顎頭の後方へ転位することもあり、関節円板が転位するのは前方だけではないことが顎関節学会の診断ガイドラインにもはっきりと表記されている。だが、この著者は関節円板が前方に転位することを当たり前であるように記していて前方という言葉が省略されているようだ。
彼らが示す「復位性・非復位性」とされる関節円板転位は、下顎頭を真横から観察して関節円板が下顎頭よりも前方に位置している前方転位の状態にあり、開口動作途中に円板軟骨が下顎頭の上に被さって瞬間的に下顎頭と円板軟骨の位置関係が元に戻る(復位する)場合を復位性、元に戻らな場合を非復位性として2つを区別している・・・ようである。
だが、現実には前方転位に復位性も非復位性も存在などしない。何故ならば円板軟骨には下顎頭が収まる窪みとその周囲に縁があり、一瞬でも下顎頭の上に円板軟骨が被さることがあれば円板軟骨の窪みに下顎頭がはまり込み、閉口して下顎頭が後方へ戻ると円板軟骨も下顎頭と一緒に元通り後方の下顎窩まで押し戻されるはずだからである。
私自身、前方転位した円板軟骨を自分で整復した状態でもう6年以上は生活していることになるのだが、開口動作の度に下顎頭と円板軟骨の位置関係がコロコロ入れ替わるなど到底あり得ないことなのだ。条件を揃えなければ円板軟骨はそう簡単に転位も復位もしないのである。
そして、そもそも開口動作の途中で一瞬だけ復位する復位性の前方転位など無いのだから、それと区別する為に創られた非復位性の前方転位など現実にはあってないようなものであり、非復位性などと新たに名付けるまでもなくただの前方転位と示せばよいのだ。
実のところ顎関節症専門医達が復位性前方転位の存在で論拠としているのはMR像で下顎頭周辺に映る黒い影(本当は関節液で満たされた何もない空間)であり、復位性も非復位性もそれを円板軟骨であると見間違えた画像診断誤診に基づく超常現象専門家達の妄想に過ぎない。復位性と非復位性の判別も顎関節症専門医が原因不明な病態を捏造することで自らの権威付けにでっち上げた茶番なのである。
また後で別に解説することになるが、この著者ら顎関節症専門医は関節円板が前方に転位するものだと決めつけてかかり、それが珍しい医関節円板の「後方転位」であることにも気づかぬまま、前方転位した円板軟骨だと言い張って全く別の組織を円板軟骨のあるはずもない下顎頭の前方から切除している。
間抜けにも画像診断誤診の決定的な証拠を自ら歯学書として高値をつけて出版しているのだ。 ただ誤診しただけならばともかく、デタラメな画像診断をもとにして不必要な外科処置を行い、治療の意味もなく身体を切り取られるというのは、患者にとってただ事では済まされない歯科医療被害である。
ここでは名前を挙げて関節円板前方転位の種類を2つ示しているだけで、それぞれの状態と違いを説明する内容が全くない。次の文でその説明になっているだろうか。ここでも「非復位性」に関しての記述は全く無い。
「復位性顎関節円板転位は、
無痛性だが可聴性のクリックがあり・・・」
「クリック」とは何なのか後にも先にもこの歯学書には何の説明も無いのだが、あえて私が説明するならば、ここでいうクリック音はおそらく関節円板が前方転位して下顎頭との位置関係が前方にズレたことで、関節隆起斜面を滑走する時に、下顎頭が関節円板後方肥厚帯に後ろから乗り上げる際に生じる顎関節動作の異音を示しているのであろう。
顎関節骨格がずれて円板軟骨が顎関節の上下から押さえつけられなくなると、円板軟骨と下顎頭の動く方向が異なるので顎関節動作の途中で円板軟骨の縁を下顎頭が乗り越えることになる。その際に円板軟骨が下顎頭によって弾かれることで小さくコリコリと異音が生じたり、衝撃が強い場合にはパキッと大きな破裂音が鳴る訳である。
また、顎関節は耳に隣接している臓器であり、クリック音が生じれば患者に音が聞こえないはずがない。そもそも可聴性ではないクリックなどあるはずもなく、「可聴性のクリック」とは実に妙な言葉である。
私は3枚の図で顎関節異音の発生原理を示したが、この歯学書には顎関節に異音が生じる原理の解説は何一つ無い。怪奇現象をでっち上げることが仕事である超常現象専門家のように、ありふれた顎関節異音に対してカタカナ文字で名前を付けたところで、その音がどのような条件によって生じるのか専門医が分かっていなければ患者の状況を正しく診断できるわけも無い。
[図6]では、MRI撮影された患者の顎関節周辺の画像が提示されている。一般に解剖学で「矢状断」といえばヒトが直立した際の真横から眺めて観察した状態であり、「前頭断」はそれに対して垂直でヒトを真正面から観察したものである。
彼らがどのようにMR像を修正しているのかというと、矢状断・前頭断ともに右か左の下顎頭を基準にして下顎枝全体を通るように観察断面を傾けて修正したものであり、上下の歯列は修正されたMR像に映らない。 ここで注意したいのは彼ら顎関節症専門家は右か左か片方ずつでしか顎関節を観察せず、上下歯列と顎関節の位置関係が全く考慮されないことである。
顎関節は硬い下顎骨という一塊の骨の左右両端にある下顎頭が対をなし、腕や脚とは異なり必ず左右が同時に動く関節である。そのため患者が顎関節に異常を自覚する状況であれば、既にどちらか片方だけの顎関節が悪いという問題ではないのだ。 歯科治療を繰り返したり不正歯列で歯が動いて歯のか見合う高さが低くなるほど下顎は深く閉じることになるので、歯に問題が生じれば顎関節骨格の位置関係が変化するし、逆もまた然りである。 それ故に常日頃から歯を無視して変態的に顎関節ばかりを左右片側だけで観察することが習性となっている顎関節症専門医達には患者が抱える顎関節と歯の機械的不具合の全体像を把握出来る訳が無いのだ。
イタズラな外科処置で患者の顎関節を切り開いて骨や軟骨を行き当たりばったり削ったり切除したところで、左右の顎関節と歯の帳尻合わせをすることなど顎関節症専門医には初めから不可能であり、顎関節を人工関節に置き換える顎関節全置換術のような大それた外科手術などはもってのほかである。
また、彼らが画像修正の基準とする下顎頭の形状は病期の進行に伴って変形してしまうし、生活によって上下歯の咬合関係が変わってしまえば、撮影ごとに患者の下顎と上顎の位置関係が変化してしまう。同じ患者であっても比較基準が撮影時によってバラバラなのでは、状況変化を精査する事など出来る訳が無い。その欠点を踏まえないで画像を修手前勝手に修正するから顎関節症専門医は自分でもその診断画像の状況把握すら出来ないのである。
また、[図6]の解説では功名心旺盛なこの著者らは外側翼突筋が付着する下顎頭前縁の窪みに対して新しく自分達で名前を付けようとしている。
「前下顎頭稜(ACR)は、
下顎頭関節面の前方限界として
筆者ら(小林、五十嵐)が提唱した。」 わざわざここで新しく言葉を作らずとも「下顎頭前縁」と表記すれば同じ5文字であるし、文字からしても意味が明瞭である。下顎頭前縁ではなくて、「下顎頭関節面の前方限界」とは何を意味するのだろうか。
関節円板が前方転位してしまえば、やがて下顎頭は擦り減ってしてしまうし、円板軟骨の弾性が噛む力を和らげる反発力として働かなくなると下顎頭関節面は押し潰れてしまい、下顎頭前縁も下へずれてしまう。そうなれば著者らが新たに提唱している「下顎頭関節面の前方限界」とやらも推移してしまい、画像診断時の判断基準として客観性に乏しくなる。
健康な状態から逸脱して変形する下顎頭関節面前縁の形状に新しく解剖学名称を与えることの意味と必要性はいったい何処にあるのか、自身の功名心を満たす以外になんの意味もない本当に無駄な専門用語である。
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